二次創作小説(紙ほか)

第10話 ジムバトルⅠ シュンセイジム2 ( No.24 )
日時: 2013/04/20 13:24
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: 山場を迎えたシュンセイジム戦、イチジクのエースの力は如何に……!

「ベロリンガ、頼んだよぅ」
 イチジクが次に繰り出したのは、ピンク色の大きな山椒魚のようなポケモン。非常に大きく長い舌が特徴的だ。

『Information
 ベロリンガ 舐め回しポケモン
 とても器用で敏感な舌を持つ。
 狩りや戦う時も舌を使って
 舐めた相手を痺れさせる。』

「ベロリンガか……ノコッチと違って鈍そうだし、もう少し頑張って、ミズゴロウ。岩砕き!」
 体力も残り僅かなミズゴロウは、岩を砕く勢いでベロリンガへと走り出すが、
「ベロリンガ、舌で舐める」
 ベロリンガは長い舌をさらに伸ばし、ミズゴロウを舐め回した。するとミズゴロウは嫌悪感を露わにし、その場に蹲ってしまう。
「え……ミ、ミズゴロウ!?」
 ミズゴロウはピクピクと痙攣しており、上手く体が動かせないでいる。戦闘不能ではないようだが、ならばどういうことだと、フィアが困惑していると、
「舌で舐めるはねぇ、相手を麻痺状態にすることがある技なんだぁ。麻痺しちゃうと動きが鈍ってぇ、動くこともままならなくなるから気をつけてねぇ。それじゃぁ決めるよぉ、ベロリンガ、舌で舐めるだぁ」
 ベロリンガは再び長い舌を伸ばし、今度は跳ね上げるようにミズゴロウを舐め、吹っ飛ばした。
 地面に落ちたミズゴロウは目を回しており、戦闘不能だ。
「あ、う、戻って、ミズゴロウ」
 結局攻撃できずにミズゴロウはやられてしまった。しかしフィアにはまだポケモンが残っている。
「最後は頼んだよ、イーブイ!」
 フィアの最後のポケモンはイーブイ。ベロリンガと同じノーマルタイプだ。
 イーブイはベロリンガを見ると、何かを察知したかのようにブルッと身を震わせる。
「おぉ? ノーマルタイプだねぇ。イーブイかぁ、いろんな進化を秘めた面白いポケモンだよぅ。きみも自分に合った進化をさせてねぇ」
「? はぁ……」
 フィアはこの時まだ、イチジクの言っていることが分からなかった。イオンとのバトルで、イーブイはサンダースに進化するものとばかり思っているからだ。
「ノーマルタイプ相手じゃぁ舌で舐めるは使えないからぁ……岩砕きだよぅ」
 ベロリンガは拳を握ると、思ったより速いスピードでイーブイに殴り掛かってくる。
「格闘技……! イーブイ、躱すんだ!」
 しかしその速さも、ベロリンガにしてはだ。イーブイの方がずっと速い。
 イーブイはサッと後退ベロリンガの拳を回避する。
「電光石火!」
 そして地面を蹴り、勢いよく飛び出してベロリンガに激突するが、
「あ、あれ……?」
 ベロリンガはヌボーっとした表情のまま動かない。電光石火の直撃を受けても、まったく怯んだ様子がない。
「ごめんねぇ、ベロリンガはノコッチと違って打たれ強さに重点を置いたポケモンなんだぁ。そのくらいじゃぁ倒せないよぅ。岩砕き」
 ベロリンガは再び拳を握り振り下ろす。イーブイは素早く身を退いて拳を回避した。
「まだ終わらないよぉ。凍える風」
 ベロリンガは大きく息を吸い込むと、直後、凍えてしまいそうな冷たい風を吐き出した。イーブイもこの風は避けられず、攻撃を受けてしまう。
「岩砕きだよぅ」
 そしてまたも拳を振り下ろすベロリンガ。イーブイは先と同じように横に跳んで躱すが、その動きもどこか鈍い。
「目覚めるパワー!」
 そしてイーブイは赤く燃える球体を発射し、ベロリンガの体を焼いていく。
「炎タイプの目覚めるパワーかぁ。でもやっぱり決定力不足かなぁ。ベロリンガ、凍える風」
 ベロリンガは凍える風を放ちイーブイを攻撃。
「うぅ、イーブイ、電光石火!」
 凍える風を耐え、イーブイは高速で駆けてベロリンガに体当たりする。
「噛みつく!」
 そしてベロリンガの腕に噛みついた。だがベロリンガはまったく動じず、
「岩砕き」
 腕ごとイーブイを地面に叩きつけた。効果抜群の攻撃に、イーブイは大きなダメージを受けてしまう。
「しまった……イーブイ、ベロリンガから離れるんだ!」
 イーブイは追撃を避けるため、大きく後退してベロリンガと距離を取った。
「追いかけるよぉ、岩砕き」
 だがベロリンガは拳を構えてイーブイに接近して来る。
 しかしイーブイのスピードにベロリンガはついて来れないはずなのでフィアは、
「躱して目覚めるパワーだ!」
 と指示した。しかしイーブイはベロリンガの拳を避けきれず、弾き飛ばされた。
「イーブイ!」
 直撃ではないが、効果抜群に加え防御力低下。イーブイには十分な痛手だ。
 そしてこの時フィアは、急に動きの鈍ったイーブイに困惑していた。
「それはねぇ、凍える風の効果だよぉ。凍える風を受けると素早さが低下しちゃうからぁ、そのイーブイの動きも鈍ったんだぁ」
 イチジクはそう説明する。恐らく、鈍重なベロリンガはスピード勝負に弱いから、それを補うためだろう。
 しかしこうなって来るとイーブイが不利だ。ベロリンガに対するイーブイのアドバンテージはスピード。それが失われたとなれば、相当な苦戦を強いられることになる。
「でも……やらなきゃ。イーブイ、電光石火!」
 イーブイは身を起こすと、高速でベロリンガに突っ込み、激突する。しかし、ベロリンガは身じろき一つしない。
「うぅん、でもまだそんなに体力あるんだねぇ。だったらもう、決めちゃおうかなぁ」
 と言って、イチジクはベロリンガに一つの技を指示する。

「ベロリンガ、搾り取るだよぅ」

「っ!?」
 突如ベロリンガの舌が蠢き、イーブイを束縛する。太く長い舌に巻きつかれ、しかも粘性の高い唾液もあり、脱出できない。
「やっちゃってぇ、ベロリンガ」
 そして、ベロリンガはイーブイを締め上げる。イーブイの体力をすべて搾り取るかのように、舌で小さな体躯を強く締め付ける。
「イーブイ!」
 しばらくするとイーブイは解放されたが、かなり体力を削られている。もう体力も僅かしか残っていないだろう。
「搾り取るは相手の体力が多いほど威力が増す技なんだぁ。やっぱりいっぱい体力残ってたんだねぇ」
 イーブイはなんとか体を起こすも、搾り取るのダメージが大きすぎて足元がおぼつかない。
「そろそろ終わりかなぁ。ベロリンガ、岩砕き」
 拳を構え、ベロリンガは拳を突き出す。ふらつく体を必死で動かし、ギリギリ掠めるようにイーブイは拳を躱した。
 しかし、
「凍える風だよぅ」
 ベロリンガは凍える風を放ち、イーブイを吹っ飛ばす。だがこれでもイーブイはまだ倒れておらず、持ち堪えた。
「でも、あと一回でも攻撃されたら……なにか、ベロリンガの弱点とかはないの……?」
 ノーマルタイプの弱点は格闘だけなので、どうしたってイーブイでは弱点を突けない。となると、身体的な弱点になるが、
「ベロリンガの弱点、弱点……あ」
 一つフィアは思い出した。弱点かどうかは分からないが、今はそれしか道はない。その作戦に賭けるしかない。
「イーブイ、電光石火だ!」
 イーブイは高速で走り、ベロリンガに体をぶつける。だがやはりベロリンガは動じない。
「振り払ってぇ、岩砕き」
 ぶんっと腕を振ってイーブイを振り払うと、ベロリンガは岩を砕く拳を突き出す。この一撃を受ければ、イーブイはほぼ確実にやられるが、
「イーブイ、躱すんだ!」
 最後の力を振り絞り、イーブイは身をよじってギリギリ凍える風を回避した。そして、

「今だ! ベロリンガの舌に噛みつく!」

 口を大きく開いた状態のベロリンガに接近し、大きな舌に噛みついた。するとベロリンガは、初めて痛みを感じたようにのた打ち回る。
 しかも、イーブイの攻撃はまだ終わらなかった。
「イーブイ、口の中に目覚めるパワー!」
 舌から離れ、イーブイはのた打ち回るベロリンガの口の中に炎の球体を発射する。見事球体は口の中に吸い込まれ、直後、ベロリンガは絶叫をあげて動かなくなった。
「あぅ……ベロリンガ」
 ベロリンガは戦闘不能。つまり、イーブイの勝利だ。



「負けちゃったぁ、というかきみ、結構えげつない攻撃するねぇ。ベロリンガの舌に噛みついた挙句、口の中に炎を放つなんてさぁ」
「ご、ごめんなさい……でも、ベロリンガの舌は敏感だって図鑑にあったので、大ダメージを与えるならこれしかないと思って……」
 妙な目の付け所だが、実際その手で勝利したので、フィアのポケモンを見る目は意外とあるのかもしれない。そう思いつつ、イチジクは小さな箱を取り出す。
「はい、じゃぁこれぇ。ぼくに勝ってシュンセイジムを制覇した証、ポケモンリーグ公認のジムバッジだよぅ」
 箱の中から出て来たのは、金色でアルファベットのAと十字架が組み合わさったような形状のバッジだ。
「アドベントバッジ、受け取ってねぇ」
「はいっ、ありがとうございます!」
 フィアの最初のジム戦は、見事勝利という形で、幕を閉じるのだった。



というわけで、イチジク戦決着です。ベロリンガの倒し方は図鑑の説明と、どれくらい知っている人がいるか分かりませんが、ポケモンスタジアム2のミニゲームから取ってます。あれはお茶やわさびでしたが、今回は炎です……フィア、マジでえげつない攻撃させますね。それとジムバッジですが、普通のネーミングか恒星の名称にするか悩みましたが、普通のネーミングにしました。アドベントとは待降節や重要な人物の到来という意味です。それでは次回、敵対勢力登場です。お楽しみに。