二次創作小説(紙ほか)
- 第12話 organized crime ( No.30 )
- 日時: 2013/04/21 13:27
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: グリモワールを追うフィアとイオン。奪われたポケモンを取り返せるか……?
「なぁ、さっきここを走ってった二人、なんだったんだ?」
「さーな。なんかモンスターボール持ってたし、どっかで戦力補給でもしてたんじゃねーの?」
「え? でも確か強奪しての戦力補給って、非推奨行為じゃ……」
「バーカ、そんなの律儀に守ってる奴なんざいるわけねーだろ。その辺で捕まえた野生のポケモンより、トレーナーが育てたポケモンの方が強いんだから、他のトレーナーからぶんどるのが効率いいに決まってんだろ。推奨はされてないが、禁止にもされてないしな」
「はぁん、そんなもんか」
下っ端と思しき二人組の会話。その内容から、この奥にポケモンを奪ったというグリモワールがいることはほぼ当確だ。
「イオン君、あれがグリモワール?」
「たぶんねー。オレが見た二人組と同じ格好だし、シンボルマークもそれっぽい。あの二人は門番かな?」
ボールを取り出し、イオンはフィアに目配せする。このまま進んでもあの二人に止められるので、無理やり突破するつもりのようだ。
フィアもボールを握り、イオンと共に飛び出した。
「っ、誰だ!」
「止まれ!」
こちらの存在に気付いた下っ端たちは、慌ててボールを取り出しながらこちらに向かって叫ぶ。
「行くよ、サンダース!」
「出て来て、イーブイ!」
イオンとフィアは同時にサンダースとイーブイを繰り出した。それに合わせて、下っ端もボールを放り投げた。
「よく分からんが、ここは通すなと言われているんだ! 行け、メグロコ!」
「出て来い、ツチニン!」
下っ端が繰り出したのは、黒い縞模様のあるの鰐のようなポケモンと、蝉の幼虫のようなポケモンだ。
『Information
メグロコ 砂漠鰐ポケモン
砂漠に生息するポケモン。
体温を低下させないために
日中は砂の中に潜って生活する。』
『Information
ツチニン 雷ポケモン
長い年月を地中で暮らすうちに
目が退化した。木の根っこを吸収し、
進化の時まで耐え忍ぶ。』
どちらも地面タイプを持っており、サンダースは不利。しかもメグロコはこちらを威嚇し、攻撃力を下げてきた。
だがイオンの表情に焦りは見えない。むしろ余裕の笑みを浮かべている。
「フィア君、援護をお願い」
「え? うん、分かった。イーブイ、手助け」
イオンの言葉で彼の言わんとしてることを察し、フィアはイーブイに指示を出す。
イーブイは淡い光を発し、それをサンダースに纏わせる。やがて光は消えていったが、サンダースは見るからに力に満ちていた。
「よし、じゃあ速攻で決めようか。サンダース、二度蹴り!」
サンダースは持ち前のスピードでメグロコに急接近し、一撃目の前蹴りで空中に蹴り上げ、二撃目で跳び上がりメグロコを蹴り落とした。
威嚇で攻撃力が下がったとはいえ、手助けで強化し、弱点を突く攻撃でメグロコは戦闘不能になってしまう。
「イーブイ、僕らもやろう。目覚めるパワー!」
イーブイも赤く燃える球体を発射し、ツチニンを燃やす。炎タイプの目覚めるパワーは虫タイプのツチニンには効果抜群。しかも特殊技なので威嚇の影響を受けない。
「とどめっ、サンダース、電光石火!」
大きく削られたツチニンにサンダースの電光石火が直撃。ツチニンは吹っ飛ばされ、戦闘不能となった。
「なっ、俺のメグロコが……!」
「まさか、こんなに早く……!」
下っ端たちはあまりに早く倒されたためか、目を見開いて驚愕している。
「んじゃ、さっさと先に行こうか」
「あ、イオン君! 待って!」
その隙に、イオンとフィアは下っ端の脇を通り過ぎて砂礫の穴の奥へと進んでいった。
砂礫の穴の奥には、下っ端と思われるグリモワールの団員が二人いた。二人とも走って来たために息を切らしているが、脇に抱えたモンスターボールの入った檻はしっかりと持っている。
「なぁ、今更ながら聞くが、誰か追って来てなかったか?」
「さあな。でも流石にここまで来れば大丈夫だろ」
「そうか、そうだな。いざとなればサタン様もいるし、大丈夫か」
「そうそう、大丈夫大丈夫、追っ手なんかここまで来たりは——」
と下っ端の一人が今さっき走ってきた穴を見ると、奥から二つの人影が飛び出した。
「見つけたっ、グリモワール!」
「本当にいたよ、イオン君の言う通りだ……」
飛び出したのはフィアとイオンだ。足元にはイーブイとサンダースもいる。
「……おい、なにが大丈夫だ! いるじゃねぇか追っ手!」
二人の姿を確認するや否や、下っ端の一人がもう一人に向かって叫ぶ。もう片方の下っ端は冷や汗を垂らし、焦ったような表情を見せたが、すぐに気を取り直し、
「だ、大丈夫だ! 所詮は子供のトレーナー、二人がかりでやれば返り討ちにできるはずだ!」
と言い返す。
些か甘い考えだと言わざるを得ないが、それで下っ端二人は納得してしまい、共にボールを構える。
「よし、じゃあ行くぞ! コゴボー!」
「こんなガキども、蹴散らしてしまえ! モグリュー!」
下っ端が繰り出したのは、根っこのような体を持つポケモンと、もぐらのような姿をしたポケモンだ。
『Information
コゴボー 根っこポケモン
根っこを張って住処に体を
固定する。気が変わると根っこ
を切って別の住家を探す。』
『Information
モグリュー 土竜ポケモン
スクリューのように回転しながら
地中を掘り進む。そのスピードは
地上を走る自動車並み。』
「連戦で相性も悪いけど、時間が惜しい。さっさと決めちゃうか。フィア君!」
「うん、分かった。イーブイ、サンダースに手助けだ」
イーブイは淡い光を発し、サンダースに力を与える。そしてサンダースは一気にモグリューへと接近し、
「先手必勝! 二度蹴り!」
勢いよく足を突き出し、強烈な前蹴りを繰り出したが、
「モグリュー、鉄壁だ!」
ガキィンッ!
と、甲高い金属音のような音が鳴り響く。
「い……っ?」
爪を交差させて防御の姿勢を取ったモグリューにサンダースの蹴りが炸裂したのだが、モグリューは全く動じず、爪には傷一つ付いていない。
「鉄壁……参ったな……」
鉄壁とは、ポケモンの防御力を大きく上げる技。硬くなるや丸くなる以上に防御力を急上昇させるため、生半可な物理技ではまともなダメージは与えられない。
「マッハボルトは効かないし、オレのポケモン、覚えてる技は全部物理技なんだよね……」
今まで余裕の表情だったイオンの顔に冷や汗が浮かぶ。
それを見て、下っ端たちは調子づく。
「これは、行けるんじゃねぇのか?」
「そうだな。モグリュー、穴を掘る!」
モグリューは硬い爪で穴を掘り、瞬く間に地中に身を潜ませてしまった。
「しかも穴を掘る。とりあえず戻れ、サンダース」
相性が悪いと見て、イオンはサンダースをボールに戻そうとするが、
「させるか! コゴボー、砂地獄!」
次の瞬間、サンダースの足元に流砂が発生し、サンダースの動きを止めてしまう。さらにボールから発せられた光も、砂地獄は打ち消してしまった。
砂地獄は威力は低いが、相手に継続してダメージを与え、なおかつ交代を封じる技。今のサンダースには非常に厄介な技だ。
「イーブイ、サンダースを助けよう。コゴボーに目覚めるパワー!」
ここでイーブイも動き出す。炎タイプの技で草タイプと複合しているコゴボーを攻撃し、大ダメージを与えようとするが、
「今だ、モグリュー!」
直後、地中からモグリューが飛び出し、イーブイを吹っ飛ばす。
「そうだった、そういえば穴を掘るがあったんだった。なら……戻って、イーブイ」
フィアはイーブイをボールに戻し、ポケモンを交代させる。
「出て来て、ミズゴロウ!」
繰り出すのはミズゴロウだ。モグリューに相性が良いだけでなく、イチジク戦で見せたように相手が穴を掘ってもヒレで位置を特定できる。
「コゴボー、成長だ!」
「サンダース、ミサイル針!」
コゴボーはサンダースを拘束しながら、自身の体を成長させる。サンダースも砂地獄に嵌って動けないが、それでも硬化させた体毛を針のように飛ばす。しかし、
「モグリュー、鉄壁!」
コゴボーとサンダースの間にモグリューが割って入り、体を鋼鉄のように硬化させ、ミサイル針を弾き返した。
「穴を掘る!」
そしてすぐさま地中に潜る。もしサンダースがこの攻撃を喰らえば、致命傷は免れないだろう。
「フィア君、悪いけどサンダースはしばらく動けない。その間、頼んだよ」
「分かった。ミズゴロウ、モグリューの位置を探るんだ」
ミズゴロウは目を閉じ、意識を集中させる。モグリューが今どこにいるかのか、その位置を探っているのだ。
だが、
「コゴボー、蔓の鞭だ!」
モグリューの位置を探っているミズゴロウは隙だらけ。そこにコゴボーの蔓の鞭が炸裂し、ミズゴロウは吹っ飛ばされてしまう。
「ミズゴロウ!」
成長で攻撃力を上げた蔓の鞭はかなりの威力で、一撃でミズゴロウの体力が大きく削られてしまう。さらに、
「モグリュー!」
地中からモグリューが飛び出し、爪でミズゴロウを吹っ飛ばす。この連撃で、ミズゴロウは戦闘不能となってしまった。
「ミ、ミズゴロウが……」
「これは、本格的にやばいかも……」
グリモワール二人の強さに、フィアとイオンは焦りを感じ始めるのだった……
はい、今回でやっとグリモワールが登場です。最初の門番二人は楽勝でしたが、次の二人は意外にもフィアとイオンを追い詰めます。今回は特に書くこともないので、あとがきもこの辺で。では次回、グリモワール(下っ端)戦、決着です。遂にあのポケモンが……そしてもしかしたら、ある人物が登場するかもしれません。ではでは、次回もお楽しみに。