二次創作小説(紙ほか)

第14話 ハルサメタウン ( No.37 )
日時: 2013/04/21 17:43
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: ハルサメタウンバトル大会、開幕!

 ホッポウ地方は三つの島と一つの諸島からなる地方。そのため各島には多くの港町が存在し、そこではバトル大会が開かれるなどして賑わっている。
 そして今日もまた、シコタン島の北端に位置する港町、ハルサメタウンにてバトル大会が行われていた。
「使用ポケモンは各試合一体ずつで、三回勝てば優勝か……思ったより小さい大会なんだね」
 フィアはターミナルに送信された大会の要項を読み上げる。
 フィアとフロルは今しがたエントリーしてきたところで、今は組み合わせの発表待ちだ。
「わたし、こういう大会に出たの初めてだよ。緊張するなぁ」
「それを行ったら僕もそうだよ。なんというか、こういうのの勝手がよく分からない……」
 などと初心者トークをしているうちに、ターミナルにトーナメント表が送られてきた。
「僕は……キクって人が相手か。フロルは——」
 表を指でなぞっていき、フロルの対戦相手の名前を見て、フィアは息を飲む。
「イオン君……イオン君も、この大会に出てたんだ」
 フロルの一回戦の相手は、なんとイオンだった。
 イオンは強い。最初に戦った時はフィアがタイプ相性も知らなかったから惨敗したのだが、今から戦ったとしても勝てるかどうかは分からない。フィアはフロルの強さも知らないのだが、ジム戦二回目でようやく辛勝したフロルと、一回目で楽勝と言い放つイオン。その差はがどうなのかは、想像に難くなかった。
「フロル、イオン君は強いけど、頑張ってね」
 フィアはアドバイスもなにも出来ない。フロルにかけられる言葉もこの程度だ。
「うん、フィアも頑張ってね」
 フロルはそんなフィアに対し、笑って言葉を返した。
 そして、ホッポウ地方港町恒例のバトル大会、ハルサメタウン大会が開始される。



『さあ、いよいよ始まりました、ハルサメタウンバトル大会。今回は特別に、解説としてシュンセイシティのジムリーダー、イチジクさんに来ていただきました。イチジクさん、今日はよろしくお願いします』
『うん、よろしくねぇ』
 放送席では、アナウンサーと解説役として呼ばれたらしいイチジクが軽く挨拶を交わしていた。
『それでは今大会の一回戦、第一試合、フィア選手とキク選手の出場です』
『フィアくんかぁ……今日はどんなバトルを見せてくれるんだろうねぇ』
 小さな町にしては立派なフィールドに立つフィア。観客も少なからずいるので、かなり緊張する。
 相手は同い年くらいの少年だ。ムスッとした顔で口をつぐんでボールを構えている。
 フィアも同じように、ボールを取り出し、構えた。
『それでは第一試合、スタートです!』
 試合開始の合図が鳴り、フィアとキクは同時にポケモンを繰り出す。
「よし、頼んだよ、ブースター!」
「出て来い、バジルス!」
 フィアのポケモンは先日進化したばかりのブースター。そしてキクが繰り出すのは、両手に葉っぱを持ち、凛々しい表情をしたポケモンだ。

『Information
 バジルス 薬草ポケモン
 オゾンを発生させて周りの空気を
 綺麗にするポケモン。病人の近くに
 バジルスがいると、早く病気が治る。』

『フィア選手はブースター、キク選手はバジルスを繰り出しました!』
『へぇ、あのイーブイ進化したんだぁ……それはさておき、タイプの相性ならブースターが有利、火力でもブースターの方が上だねぇ』
『つまり、この勝負はブースターが圧倒的に有利ということでしょうか?』
『普通に見ればねぇ。草タイプは補助技が充実してるから、それを活用すれば勝機も見えるんじゃないかなぁ?』
 机に突っ伏しているが、きっちり解説をこなすイチジク。見た目に反し、意外と真面目なのかもしれない。
(バジルス、バジールの進化系か……そういえば、部長はバジールを連れてたっけ)
 自分がこの世界を訪れる切っ掛けを与えた彼女。今どこで何をしてるのだろうかと、フィアは思ったが、
「いけない……今はバトル中だった。行こう、ブースター。火炎放射!」
 まず先に動いたのはブースターだ。ブースターは大きく息を吸い、灼熱の火炎を発射する。
「バジール、躱して宿木の種」
 バジールは俊敏な動きでブースターの炎を躱すと、いくつかの種子を飛ばし、ブースターに植え付けた。
『おおっと! バジルス、ブースターに宿木の種を植え付けました!』
『宿木の種は草タイプの常套手段だねぇ。あとはブースターの体力が尽きるのが先か、バジルスが押し切られるのが先か、競争だぁ』
 宿木の種は、種を植え付けた相手の体力を少しずつ吸い取っていく技。イチジクの言う通り、ブースターが体力を吸い尽くされるか、バジルスがブースターの攻撃に押し切られるか、競争の様を呈する。
「ブースター、ニトロチャージ!」
 ブースターは炎を纏い、バジルスへと突進。バジルスを吹っ飛ばした。
「続けて行くよ、火炎放射!」
「っ、電撃波だ!」
 ブースターは火炎放射で追撃し、バジルスも電撃波で迎え撃つ。だがバジルスの電撃はブースターの炎に押し切られ、バジルスは炎に焼かれてしまう。
「くっ、バジルス、草結び」
 バジルスは声を上げ、地面からシュルシュルと草を伸ばしてブースターに絡ませるが、
「ニトロチャージだ!」
 ブースターの纏った炎で草は焼け落ち、ブースターはそのままバジルスへと突っ込む。
「迎え撃て、バジルス。切り裂く攻撃!」
 バジルスは両手の葉っぱを振るい、ブースターとぶつかり合うが、攻撃力ではまったく敵わず、バジルスは吹っ飛ばされた。
「ブースター、アイアンテール!」
「躱せバジルス!」
 ブースターは尻尾を鋼鉄のように硬化させてバジルスに特攻。バジルスはその攻撃を躱そうとするが、ニトロチャージで素早さの上がったブースターからは逃げ切れず、バジルスは尻尾の一撃を喰らって吹っ飛ばされた。
「これで終わりだよ! ブースター、火炎放射!」
 吹っ飛ぶバジルスに向けてブースターは激しい炎を噴射。炎に身を焼かれ、バジルスはそのままあえなく戦闘不能となった。
『決着です! 一回戦、第一試合の勝者はフィア選手! キク選手のバジルスを圧倒し、二回戦進出です!』
『相手の子はちょっと真正面から行き過ぎたかなぁ。もう少し草タイプらしく搦め手を活用できれば、もっといいバトル出来たかもしれないけどねぇ』
 フィアとキクは互いにポケモンをボールに戻し、フィールドから去っていく。



「ふぅ……」
 会場ロビーまで戻ると、フィアは息を吐く。かなり緊張したが、なんとか一回戦は突破できた。
 次の二回戦の組み合わせが発表されるまで、少し時間がある。フロルを待つついでに少し休んでいると、フィールドの方からフロルが歩いて来た。
「フロル! どうだった……?」
 結果は予想できるのだが、それでもあえてフィアは尋ねるすると、帰ってきたのは予想通りの言葉だった。
「負けちゃった……強いね、イオくん。全然敵わなかったよ」
「イオくんって……まあ、確かにイオン君は強いよ。僕も最初、あっと言う間に負けちゃったし」
 フロルのイオンに対する呼称はともかくとして、やはりイオンも二回戦に勝ち上がってきたようだ。
 とその時、フィアのターミナルに二回戦の組み合わせが送られてきた。この大会は試合ごとに対戦相手がシャッフルされるため、普通のトーナメント戦のように次の相手が分かる、ということはない。
 そしてフィアの二回戦の相手は、
「イオン君……!」
 ついさっき話題に上がっていた、イオンだった。



ハルサメタウン大会、遂に開幕です! ……とか言ってみましたが、サブイベント的な小さな大会なので、さほど気にすることはないです。ただ、白黒はこういう大会形式のバトルがやってみたかったんですよ。あと、途中で解説を挟んだりするのもやってみたかったです。どうですかね、こういうのは。それはともかく、フィアは一回戦を勝ち抜け、フロルはイオンに負けては脱落。続く二回戦ではフィアとイオンのバトルです。ちなみに今回名前が出たキクという選手は、今後一切出ない……と思います。なので覚える必要はありません。それでは次回、ハルサメ大会二回戦、フィア対イオンです。お楽しみに。