二次創作小説(紙ほか)
- 第17話 Ability ( No.42 )
- 日時: 2013/04/24 19:36
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 未知なる力。
「マグマラシ、火炎車!」
先手を取ったのはルゥナのマグマラシ。マグマラシは炎を身に纏い、縦方向に回転しながらミズゴロウへと突っ込む。
「ミズゴロウ、岩砕き!」
ミズゴロウも岩を砕くような勢いでマグマラシへと突進するが、火炎車の方が威力が高く、ミズゴロウは弾き飛ばされてしまった。しかも、
「煙幕!」
マグマラシは口から大量の黒い煤を吐き出し、ミズゴロウの視界を塞いでしまう。
(うぅ、水鉄砲で反撃しようと思ったのに、これじゃあマグマラシがどこにいるのか分からない……いや)
視界を遮られて反撃を諦めかけるフィアだったがすぐに首を振る。
目が見えなくても、ミズゴロウにはレーダーの役割を担うヒレがある。これがあれば、マグマラシが今どこにいるのか把握できるはずだ。
「ミズゴロウ、神経を集中するんだ。マグマラシの居場所を突き止めて」
ミズゴロウは目を瞑り、ジッと動かずマグマラシの居場所を探る。そして、
「マグマラシ、電光石火!」
煤の中から猛スピードでマグマラシが飛び出した。だが既にそこからマグマラシが飛び出すことをミズゴロウは知っている。マグマラシが突っ込んでいく先には、マグマラシと向かい合った状態のミズゴロウがおり、
「水鉄砲だ!」
口から勢いよく水を噴射する。
マグマラシは自分から水鉄砲に突っ込む形となり、吹っ飛ばされてしまった。
「マグマラシ! 大丈夫?」
効果抜群の攻撃を間近で喰らったはずだが、マグマラシは力強く炎を燃やし、まだまだやる気十分だ。
「よーし、だったら次はこれだよっ。煙幕」
マグマラシは再び煤を吐き出してミズゴロウの視界を遮ってしまう。
しかしミズゴロウは視界を塞がれた程度では動けなくなることはない。頭のヒレを揺らしてマグマラシの居場所を探り、その方向を向くが、
「スピードスター!」
「えっ?」
煙の中から飛び出したのは、無数の星だった。五芒星の星型に圧縮されたエネルギー波が無数に放たれ、ミズゴロウを切り刻んだ。
「ミ、ミズゴロウ!」
そこまで高威力の技ではなかったようだが、不意打ちのような攻撃を喰らい、ミズゴロウは思った以上のダメージを受けてしまった。
「畳み掛けるよっ、電光石火!」
マグマラシはさらに高速でミズゴロウに突撃し、吹っ飛ばす。
煙幕を張って視界を遮り、その隙に攻撃する。煙などを使う戦術としては初歩の初歩みたいなものだが、それでも有用な戦術だ。だが一度それが破られてしまえば、普通は先ほどルゥナが近接攻撃から遠距離攻撃に切り替えたように違う方向性で攻めてくる。
しかしフィアはまだトレーナーとしての経験が浅い。なので、その手の対応がまだ不得手なのだ。
「くっ、体当たり!」
「スピードスター!」
ミズゴロウはなんとか態勢を立て直してマグマラシへと突っ込むが、マグマラシは星型のエネルギー波を無数に飛ばして動きを止め、
「火炎車だよ!」
炎を纏って回転しながらミズゴロウに激突し、またも吹っ飛ばす。効果はいまひとつだが、それでもミズゴロウはかなりダメージが蓄積している。そう長くはもたないだろう。
「もう一度、火炎車!」
「み、水鉄砲!」
マグマラシは再び火炎を纏って車輪のように回転しながらミズゴロウへと突貫。ミズゴロウも口から水を噴射して迎え撃つが、水鉄砲は火炎車の炎を多少削ぎ落すだけで、攻撃を止めることもできずミズゴロウは火炎車の直撃を受けてしまう。
「ミズゴロウ!」
ミズゴロウは地面を転がりながら吹っ飛ばされていく。それから気力でなんとか立ち上がるが、もう戦闘不能寸前であることは火を見るより明らかだった。
しかし、その時ミズゴロウに異変が起こる。
「っ、これは……?」
目には見えないが、フィアは感じた。ミズゴロウからオーラのような、強い気配が漂っていることを。
そんなフィアとミズゴロウを見て、ルゥナは、
「やっと発動したんだね。それが特性、激流だよ」
「激流……これが」
ピンチになると水タイプの技の威力が上がる特性、激流。どのくらい上がるものかと思っていたが、フィアが感じる気配から察するに、相当威力が増すものだと思われる。
「さて、それじゃあその特性がどのくらいのものあ、試してみなよ。マグマラシ、火炎車!」
マグマラシは炎を身に纏い、車輪のように縦方向に回転しながらミズゴロウへと突撃する。
普段なら水鉄砲でも押し返せないマグマラシの火炎車。しかし、激流が発動している今ならそれも不可能ではない。
「ミズゴロウ、水鉄砲だ!」
ミズゴロウは口から勢いよく水を噴射する。その量が通常の水鉄砲の比でなく、大量の水がミズゴロウから放たれ、マグマラシを押し返した。
「凄い……!」
先ほどまではまったく敵わなかった火炎車だが、それをいとも容易く押し返してしまった。この激流という特性は、かなり強力なものであるようだ。
「へぇ、思った以上に強力だね……じゃあこっちも、ちょっと本気出しちゃおっかな」
「……?」
含みのある怪しい笑みを浮かべるルゥナ。
「マグマラシ、火炎車!」
何事かと身構えてしまったフィアだが、ルゥナは普通にマグマラシに指示を出し、少々肩透かしを食らってしまう。
だがマグマラシの火炎車は奇妙なものだった。素直にミズゴロウへと突っ込むことはせず、炎を纏いながら真上へと飛び上がっていったのだ。しかも、ルゥナの指示はそこでは止まらなかった。
「+(プラス)!」
そして、
「スピードスター!」
次の瞬間、マグマラシは回転しながら炎を纏った星を無数に撃ち出した。
「っ!?」
空から降り注ぐ炎の星。フィアは驚きを隠せず、驚愕の顔でその様子を呆然と見つめていた。
その間にも炎の星は全てミズゴロウへと吸い込まれるように向かっていき、切り刻みながらその身を焼いていく。その攻撃にタイプをつけるのなら炎タイプのようだが、威力は圧倒的に火炎車よりも高い。激流が発動するほど体力が減っていたミズゴロウは、その攻撃で戦闘不能となってしまう。
「…………」
それでもまだ、フィアは唖然としている。何が起こったのか分からない、と言うかのように。
そんなフィアを見てか、ルゥナは自慢げに胸を張る。
「どう? 驚いた? これが私の“能力”だよ」
「の、のう、りょく……?」
明らかに通常とは違うニュアンスを含むルゥナの言葉に、フィアは首を傾げる。
「そう。まあ仮称だけどね。暫定的にそう呼んでるだけで、まだちゃんとした名称はつけられていないんだ」
そしてルゥナは、彼女の言う“能力”について説明する。
「フィア君ももっとトレーナーとしての経験を積めば分かると思うんだけど、トレーナーは元々、ポケモンの力を引き出す力を持っているんだ。それの延長線上にあり、トレーナーによって異なる性質を現す力が能力」
フィアにはいまいちピンと来ない説明だが、要するにポケモンの力を引き出すだけでなく、直接ポケモンの働きかける力のことを言っているのだろうと、よく分からないなりに解釈した。
「そしてさっき見せた私の能力は“技合成”。技と技を合成することができる力だよ」
「技と技を合成する……? どういうことですか?」
そのままの意味で捉えれば、二つ以上の技を同時に放つことだろう。 フィアは知らないが、ある程度熟練したトレーナーならポケモンの技と技を掛け合わせることができたりするし、合体技というものも存在する。だが、ルゥナの言う技合成とは、それらとは一線を画すものだった。
「私も感覚でやってるからうまくは言えないけど……こう、二つの技の良いとこ取りをして、新しい技みたいに攻撃する、って感じかな? さっきの火炎車とスピードスターを見たなら分かると思うんだけど、技を合成すれば威力が足し算で高くなるし、効果ももとの技を受け継ぐんだ」
口で簡単に言うが、それは物凄いことではないのかとフィアは内心思う。
ポケモンが覚えられる技は最高で四つ。しかしルゥナの技合成とやらは、実質的にその枠を超え、さらには既存の技をパワーアップさせている。
まだしっくりこないフィアだったが、その能力というものが強力であることだけは理解した。
「さて、ちょっと話が長くなっちゃったね。バトルを再開しようか」
「あ……はい」
フィアは戦闘不能になったミズゴロウをボールに戻し、最後のボールを手に取った。
「出て来て、ブースター!」
フィアが繰り出すのは、当然ながらブースターだ。
(能力、か……この世界は、本当に不思議だな)
そしてフィアは、この世のトレーナーという人間に対し、さらなる不思議を抱くのだった。
今回はルゥナとのバトル、そして今作最大の目玉が、能力です。名前は結局それっぽいのが思いつかなかったのでまんまですが。>>0では超常現象と言い換えましたが、今作ではこのようなトレーナーごとの能力が存在しています。勿論、全員が能力を有しているわけじゃありませんけどね。今回のこれは、こういう設定はポケモンという世界に無理があるかどうかの実験も兼ねているので、否定的な意見でも筋が通っていれば受け入れます。ただ悪態つくだけなのは勘弁願いますが。それでは次回、ルゥナ戦その二です。お楽しみに。