二次創作小説(紙ほか)

第18話 defense ( No.43 )
日時: 2013/04/25 00:31
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: 最近あまりキーが乗らない……どうしたものか。

「ブースター、アイアンテールだ!」
 ブースターは場に出るなり、尻尾を鋼のように硬化させ、マグマラシへと飛びかかる。
「意外と速いね……マグマラシ、躱してっ」
 ブースターの振り下ろすようなアイアンテールを躱そうとするマグマラシだが、完全に回避することは出来ず、掠めるようにして攻撃を受けてしまった。
「もう一度!」
 攻撃を躱し切れなかったことでマグマラシは態勢を少し崩してしまい、その隙にブースターは追撃の尻尾を放つ。
 今度のアイアンテールはマグマラシのしなやかな体に綺麗に決まり、マグマラシは勢いよく吹っ飛ばされていった。
「っ、マグマラシ……!」
 効果はいまひとつだが、マグマラシもミズゴロウとのバトルで消耗していたため、今のアイアンテールで戦闘不能となってしまった。
「やられちゃったか、戻ってマグマラシ」
 ブースターのフィジカルが思いのほか高かったのか、ルゥナは少々驚きながらマグマラシをボールに戻す。
 これで、ルゥナのポケモンも残り一体。一応イーブンに持ち込めた。
「それじゃ次、行こうか」
 ルゥナは最後のボールを構え、ポケモンを繰り出す。
「出て来てっ、ブラッキー!」
 繰り出されたのは、黒豹のような体型のポケモン。漆黒の体の各所には黄色い輪っか模様がある。

『Information
 ブラッキー 月光ポケモン
 月の波動を受けると力が増大し
 全身の輪っか模様が光る。その
 輝きは闇を明るく照らす標となる。』

「ブラッキー……このポケモンも、イーブイの進化系なのか」
 電気タイプのサンダース、炎タイプのブースターときて、今度は悪タイプのブラッキー。イーブイは本当に様々な進化をするようだ。
 それと、フィアは三体目のイーブイの進化系を見て、とあるパターンに気付いていた。
(イオン君のサンダースはスピードに優れてた。僕のブースターは攻撃力が高い。なら、ルゥナ先輩のブラッキーは……?)
 イオンのサンダースがスピード、フィアのブースターがパワーに秀でているように、イーブイの進化系は進化先によって何かしら一つの能力が特化されるのではないかと、フィアは思っている。
 とすれば、ルゥナのブラッキーも何か一つの能力が飛び抜けていて、それが分かれば有利にバトルが進められる、と思いついたわけだ。
(えーっと、ポケモンの能力は、体力、攻撃、防御、特攻、特防、素早さの六つに分けられるんだっけ。素早さがサンダース、攻撃がブースターだとすれば、ブラッキーは……図鑑の説明から考えると、特攻か、特防辺りかな?)
 とにかく特殊能力に優れていそうだと考え、フィアは物理攻撃を主軸に据えて戦うことにする。
「ブースター、ニトロチャージ!」
 ブースターは全身に炎を纏い、ブラッキーへと駆け出す。だがブラッキーはその攻撃を避けようとせず、地に足をしっかり着けて攻撃を受ける姿勢を取った。
 そしてブースターのニトロチャージがブラッキーに炸裂する。しかし、
「っ、踏みとどまった……!?」
 普通のポケモンなら軽々と吹っ飛ばすほどのパワーを持つブースター。そのブースターのニトロチャージの直撃を受けてもなお、ブラッキーは地面に足を着け、しっかりと踏みとどまっている。
 さらに、
「今度はこっちから行くよっ。ブラッキー、しっぺ返し!」
 ブラッキーはくるりと体を回転させ、細いラグビーボール状の尻尾をブースターに叩き付けた。
「! ブースター!」
 先ほどとは逆に、ブースターはブラッキーの攻撃を耐え切れずに吹っ飛ばされてしまった。ブースターは地面を転がっていき、勢いが止まるとゆっくりと立ち上がる。
「しっぺ返しはね、相手の攻撃を受けた後に使うと威力が倍増する技なんだ。ブラッキーは元々そんなに素早くないし、攻撃力も高くないけど、こうしてその弱い部分を補うこともできるんだ」
 ルゥナの言葉を聞き、フィアは納得する。攻撃が高くないということは、やはり耐久面で優れているということだろう。ならば先ほどブースターのニトロチャージを真正面から喰らっても耐え切ったのは必然だ。
「防御が高いなら、とにかく攻める。ブースター、火炎放射!」
 立ち上がったブースターは、今度は炎を放射する。激しい炎をブラッキーに噴きつけ、そのしなやかな体を焼き焦がそうとするが、
「効いてない……?」
 炎が晴れた時、ブラッキーは悠然と佇んでいた。今の火炎放射でまともなダメージを受けた様子は一切ない。やはりフィアの予想通り、ブラッキーは防御面に優れているようだ。
「根性があるから毒々が使いづらいけど……これならどうかなっ。穴を掘る!」
 ブラッキーは次の瞬間、素早く穴を掘って地中へと身を潜ませてしまった。
「穴を掘る……!? まずい……」
 穴を掘るは地面タイプの技なので、ブースターには効果抜群。攻撃力が低いと言っても、弱点を突けばそれなりのダメージは期待できるはずだ。さらにブースターはミズゴロウのように地中の相手の居場所を探ることが出来ないので、回避も難しい。そして、
「っ、ブースター!」
 ブースターは地中から飛び出したブラッキーに後ろから体当たりされる。効果抜群なので、ダメージは大きい。
「くっ、アイアンテール!」
「踏みとどまって! しっぺ返し!」
 ブースターは反撃に鋼鉄の尻尾をブラッキーへと叩き付けるが、やはりブラッキーは踏ん張って攻撃を耐え、反撃に対する反撃としてこちらも尻尾を振るってブースターに叩き付ける。
 ブースターはブラッキーと違って防御は低い。威力が倍増した攻撃を喰らい、体力も限界を迎えつつある。
「うぅ、だったらこれ……ブースター、起死回生!」
 ブースターは残った力を振り絞り、ブラッキーへと飛びかかる。
 起死回生は残り体力が少ないほど威力を増大させる技。今のブースターの体力は残り僅か、加えて起死回生は格闘技なので悪タイプのブラッキーには効果抜群。上手く行けば、この一撃で戦闘不能まで持ち込めるとフィアは踏んでいたが、
「月の光」
 刹那、ブラッキーの体の輪っかが淡く発光する。それほど強い光ではないが、その光を受け、ブラッキーが今まで受けてきた傷がすべて癒えていく。
 そして次の瞬間、ブースターの起死回生の一撃がブラッキーに叩き込まれる。だが事前に月の光で体力を回復していたブラッキーの体力を削りきることは出来ず、後ずさったもののブラッキーはまだ戦闘不能ではない。
 そして、
「ブラッキー、しっぺ返し!」
 直後、ブラッキーの反撃の尻尾がブースターに直撃。ブースターは大きく吹っ飛ばされ、地面に叩きつけられた。
「ブースター!」
 その一撃で遂にブースターの体力は限界を迎え、戦闘不能。即ち、フィアとルゥナのバトルは、ルゥナの勝利となった。



 バトル後、フィアとルゥナはポケモンを回復させつつ、軽く歓談していた。
「ルゥ先輩、やっぱり強いですね……ブラッキーなんて、技合成すらされずに負けちゃいました」
 結局ルゥナが技合成を見せたのはマグマラシが戦闘不能間際の時の一回だけ。それだけ、ルゥナのトレーナーとしての技術が高いのだろうと思ってフィアはそう言ったのだが、ルゥナは少し戸惑ったようなそぶりを見せた。
「ん、あー……うん。まあ、ね」
「? どうしました?」
「いや、なんでもないよ。それより、フィア君も思ったより強かったよ? 今はまだ未熟かもしれないけど、ぐんぐん伸びそうな感じ。私もうかうかしてたらすぐに抜かされちゃうかも」
 と言われて、フィアはイオンにも似たようなことを言われたなあ、と思い返していた。自分では分からないが、フィアには何かしら潜在的な資質のようなものがあるらしい。
「それとフィア君、お願いなんだけど……私の能力、技合成については、あんまり人に言わないでね」
「……? はあ、まあ先輩がそう言うならそうしますが、何でですか?」
 言ってフィアは、自分の戦術を隠すためだとか、そういうことを思ったが、どうやら違うらしい。
「んーとねー、能力っていうのは今のところわりと世間に浸透してはいるんだけど、否定的な人も結構いるんだよ。中には能力持ってる人の挑戦を受けつけないジムもあるくらいだし……そういう人と諍いを起こしたくないから、私は基本的に自分の力を見せないようにしてるんだ。機関からもそう言われてるし」
「……機関?」
 首を傾げ、ルゥナの言葉を復唱するフィア。どこかで聞いた響きだと思いつつ、ルゥナがする説明に耳を傾ける。
「えーっと、まずアシッド機関って知ってるよね?」
「ええ、まあ……」
 知ってると言っても、名前程度だが。確か、ポケモントレーナーについて研究している組織だと、博士か誰かが言っていた気がする。
「私はそのアシッド機関に所属してて、定期的に私の能力についてのレポートを出してるんだ。能力は視覚では分かりにくいものが多いから、私の技合成みたいにはっきりと能力が発動している様子が確認できるのは珍しいんだって。だからちゃんと研究されるまで、あんまり公の場に晒しちゃいけないんだよ」
「そう、ですか……」
 フィアにはやはりよく分からないが、とりあえず他言無用ということだけは理解したので、このことは胸の内にとどめておくことにする。
「ちなみに、能力を発見した第一人者は、アシッド機関の所長さんなんだよ。ちょっと捻くれた人なんだけど、すっごく頭がいいんだ」
「へぇ、そうなんですか」
 研究者や発明家、過去の偉人で俗に天才と呼ばれる人間は変人が多いとフィアは知っているので、反応は淡泊なものだ。そもそもフィアにとってその人物は限りなく無関係の人物なので、特に何も思わない。
 とその時、船内にピーッ! という警笛のような音が鳴り響いた。そして同時に、アナウンスが流れる。

『サミダレタウンに入港しました。船内にいるお客様は、下船の準備をしてください。繰り返します——』

「着いたみたいだね」
「みたいですね」
 フィアとルゥナはそれぞれボールをセットし、船から降りる準備に取り掛かる。

 遂に、ホッポウ地方で最もシンオウ地方に近い島、クナシル島へと、到着したのであった。



ルゥナ戦、決着です。そして国後島……もといクナシル島へと到着しました。ここがシンオウのポケモンリーグらへんと被っていて気に喰わないのですが、この際しょうがないので目を瞑ります。ところで知っている方は知っていると思いますが、白黒はブイズではブラッキーが一番好きです。なのでルゥナが今作で一番のお気に入りかというと……まだ分かりません。というか、今作は全てが白黒オリジナルのキャラなので、全員がお気に入りみたいなもんです。それでは次回、サミダレタウンでバトル大会です。またかよ! とツッコミを入れてくださった方、今回はちょっと一波乱起きるので、ご安心を。では、次回もお楽しみに。