二次創作小説(紙ほか)

第19話 サミダレタウン ( No.63 )
日時: 2013/04/26 17:03
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
プロフ: 新たな島、新たな街

 クナシル島は、ホッポウ地方で二番目に大きな島。そして、シンオウ地方に最も近い……というより、クナシル島の最南部はシンオウ地方に分類されるそうだ。
 そしてクナシル島で最も大きな港町、サミダレタウン。規模も活気もハルサメタウンとは大違いで、人込みの喧騒がいたるところから聞こえてくる。
 サミダレタウンはクナシル島でも一位二位を争うほど大きな港町で、ドーム状の巨大な建物と、様々な島や他の地方からの船も受け入れるための複数のポートが特徴だ。
 このサミダレタウンは、言わばホッポウ地方の玄関の様相を呈しているのである。
「わぁ……おっきい街だねぇ」
「うん。サミダレタウンというより、サミダレシティって感じだよ」
 ルゥナと別れ、フロルと共に船から降りたフィアは、軽く街を散策していたのだが、思った以上に人込みが激しく、しかも街も広いので、とても回れるような状態ではなかった。
 そのため、二人は街のポケモンセンターで休憩することにした。
「へぇ……この街でも、バトル大会が開かれてるんだ」
 それもハルサメタウンのような小さな大会一つではなく、トレーナーの実力——具体的には所有しているジムバッジの数に応じて、参加できる大会が複数存在する。中には使用ポケモンに制限を加えたユニークなものまであった。
「フロル、どうする? 折角だし、僕らもこの大会に参加してみようか?」
 フィアはターミナルに表示された、ジムバッジの所有数が二個以下の、言ってしまえば新米トレーナー向けの大会を指差して、フロルにそう尋ねる。
「うん、出たい。前の大会だと一回戦で負けちゃったけど、今度はもっと勝ち進みたい」
 フロルは二つ返事でOK。
 大会の開催日は明日。フィアとフロルはターミナルで受け付けができるらしいので、それで参加の旨を伝え、その日はもう休むことにした。



 そして翌日。
 フィアとフロルは大会が催されるドーム、ポケモンバトル専用の特設フィールドが設置されているらしいスタジアムに来ていた。
「……凄いな」
 フィアは心の底から驚いていた。新米トレーナー向けの大会なのでそこまで活気があるとは思っていなかったのだが、観客席はほぼ満席。相当数の人が観戦に来ている。
「こんな中でバトルするのは流石に緊張するなぁ……フロルは大丈夫?」
「え? なにが?」
 フィアはフロルにそう振ったのだが、フロルはきょとんと首を傾げているだけだった。どうやら、まったく問題ないようだ。
 とその時、二人のターミナルにメールが送信された。
「トーナメント表だ……やっぱり大きな大会なだけ会って、参加人数も多いね」
 試合回数は、一回戦、二回戦を勝ち抜けば準決勝、そして決勝戦。優勝するためには四回勝たなければならないことになる。
「しかも、ハルサメ大会と違って一回一回対戦相手をシャッフルするわけじゃないんだ」
 そのため、二回戦以降に戦う相手をある程度分析することができるのだが、トーナメント表にある名前でフィアが分かるのは、フロルとルゥナだけだ。
「イオン君は今回は参加してないんだね。もしかしたら他の大会に出てるのかな?」
 イオンほどの実力があれば、シュンセイジムだけでなく他のジムを制覇することも可能だろう。なら、現在持っているバッジの数がフィアたちより多くても不思議ではない。他のバッジ所持数三つ以上のトレーナーが参加できる大会に出場することも不可能ではないはず。
 そんなことを思いながら、フィアはトーナメント表で当たりそうな相手をチェックしていく。
「準決勝まで勝ち進めば、ルゥ先輩とは当たりそうだな……フロルは、逆ブロックか」
「決勝まで行かないと当たらないね」
 フィアは左側、フロルは右側のブロックにいるので、毎回対戦相手をシャッフルしない今大会のルールでは決勝戦まで戦うことはない。
 サミダレタウンは大きな街で、そこで開かれる大会も大きい。勝ち抜くのはそう簡単なことではないはずだが、
「フィア、がんばろう。がんばって勝ち抜いて、決勝で戦おうよ」
 フロルは小さな拳を握り、自身を鼓舞するようにそう言った。
「……そうだね」
 そのフロルの発言が気を紛らわせるためなのか、それとも本気で言っているのかフィアには判断つかなかったが、フィアはこの大会を勝ち抜くのは簡単でないと分かる。だがそれでも、そんなことを言われてしまえば、決勝に行こうと思わざるを得ない。

『間もなく、サミダレタウン大会一日目、ビギナーカップ一回戦が開始されます。出場選手は、所定の対戦フィールドに移動してください』

「……もう時間だね。それじゃあフィア、がんばって」
「うん、フロルも」
 アナウンスが流れ、フィアとフロルは一旦別れる。そして、各々指定された対戦フィールドへと向かうのだった。



 サミダレタウン大会の会場、巨大なドーム内の放送室では、二人の男女が一つのモニターに向かっていた。
「さぁっ! いよいよサミダレタウンバトル大会初日、ビギナーカップの開幕です! 今大会の出場者は所持バッジの数が二個以下の若いトレーナーたち。未来を担うことになるであろう彼らのための一歩となるのです!」
 女の方は、やたらと高いテンションでマイクを握り締め、モニターにがっつくように叫んでいる。この場所と発言の内容から、今大会のために派遣されたアナウンサーだろう。とにかくテンションが高かった。
 片や男の方はそんなアナウンサーを冷ややかな目で見つつ、静かに落ち着き払っていた。
「なお、今大会の解説は、オボロシティジムのジムリーダーにして、ポケモントレーナーズスクールオボロ学園の教師、ウルシさんに来てもらいました! 皆さん、盛大なる拍手を!」

『Information
 ジムリーダー ウルシ
 専門:鋼タイプ
 異名:導きの学徒コメットティーチャー
 担当科目:ポケモン学 歴史』

「いや、そんな持ち上げられても困るのですが……」
 男——ウルシは困り気に返すが、場内は拍手というか、歓声で満ちていた。やはりジムリーダーというだけで、注目を浴びるのだろう。
「ではウルシさん、今大会の見どころはなんでしょうか?」
「見どころですか……そうですね。やはり今回の大会は、ポケモントレーナーになったばかりの人が多く集う大会ですから、初心者ならではの初々しいバトルが多く見られるのではないでしょうか? あとは、今までにない斬新な戦術を披露するトレーナーが現れることへの期待ですか。教師という立場から言わせてもらうなら、将来有望なトレーナーの公式でのバトルを先駆けて見られるので、こちらとしても解説のし甲斐がありそうです」
 丁寧な言葉遣いでそういうウルシだったが、アナウンサーはさして利いた風もなくマイクを握り締め、
「はい、長々とありがとうございました! それでは早速、サミダレ大会の一回戦が開始されます!」
 さっさと話を進めてしまう。
 ウルシは呆れたように溜息を吐くが、すぐに表情を引き締める。
 そして遂に、サミダレ大会の一回戦が、開始された——



今回はサミダレタウンの説明でほとんど使っちゃいましたね。それと、何気に新キャラ、オボロシティジムのジムリーダー、ウルシの登場です。作中でも言われていたように、オボロ学園というトレーナーズスクールの拡大版みたいな、言ってしまえば学校の教師をしています。教師なので、解説も得意なことでしょう。ちなみに今後もこんな感じで、新キャラを解説として出すことが多くなるやもしれません。それと、そろそろお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、今作の街の名前は気象から取っています。正確には、気象の季語から、ですね。そして港町の名前は全て雨関係です。言うことは、それくらいですかね。それでは次回、サミダレタウン大会、一回戦と二回戦をまとめてやるか、さらにすっ飛ばして準決勝まで行くか、といった感じです。お楽しみに。