二次創作小説(紙ほか)
- 20話 avoidance ( No.73 )
- 日時: 2013/04/28 10:09
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 勝ち進むフィアたち、次なる相手は……?
「ミズゴロウ、水鉄砲だ!」
ミズゴロウは口から大量の水を噴射し、熊のぬいぐるみのような姿のポケモンを吹っ飛ばした。
『Information
テディ 小熊ポケモン
ぬいぐるみのような質感と
手触りをしているが、体が
破れたり痛んだりすることはない。』
テディは派手に吹っ飛ばされると、そのまま地面に叩きつけられ、目を回して戦闘不能となった。
『Aブロック一回戦決着ぅ! 最初は追い詰められたフィア選手のミズゴロウ、土壇場で特性、激流を発動して逆転勝利だ——!』
アナウンサーの高らかな叫び声が響き渡り、場内は一気に沸き上がる。
「なんとか勝てた……」
フィアは汗を拭いつつ、フィールドを後にする。
「あ、フィア!」
「フロル……」
ロビーに戻って来たフィアを迎えたのは、笑顔のフロルだった。表情と雰囲気から察するに大丈夫だろうが、フィアは念のため尋ねてみる。
「どうだった、試合……?」
「勝ったよ。フィアも勝ったんでしょ?」
「うん……」
どうやら、フィアの考えは杞憂だったようだ。
なんにせよ、フィアとフロルは無事に二回戦へと駒を進めることができた。
「十分休憩の後に二回戦か……あ、ルゥ先輩もやっぱり勝ち上がって来てる」
更新されたトーナメント表を確認し、フィアは呟く。やはりルゥナも初戦は突破したようだ。
「それで、僕の次の相手は……」
トーナメント表を確認する限り、フィアの次の相手はテイルと言うらしい。
それを確認し、フィアが何気なくその名前をタッチすると、突如として画面が切り替わり、映像が流れた。聞こえてくる音声からして、テイルの一回戦でのバトルの動画のようだ。
「へぇ、対戦相手の動画も見れるんだ。凄いな、ターミナルって……」
実際に凄いのはターミナルではなく、録画した映像をすぐさま編集して流すことのできる編集者たちなのだが、それはさておき。
フィアとて勝つつもりで次のバトルに挑むつもりだ。そのため、次に戦う相手のバトルはしっかりと見ておかなければならない。
フィアは真剣な面持ちで、ターミナルに映し出された小さな画面を凝視する。
結局、バトル前の前口上が長かったため、バトルの中身はあまり見れなかった。しかし相手が電気タイプのポケモンを所有していることだけは分かったので、こちらも繰り出すポケモンをそれに合わせる。今回はタイプ上不利なミズゴロウではなく、相性の影響を受けにくいブースターにするつもりだ。
そして、サミダレタウンバトル大会ビギナーカップの二回戦、フィアとテイルのバトルが開始される。
『さあ、ビギナーカップの二回戦、最初の試合が始まります! 対戦するのは、現在バッジ一つ。眠れる王子』の異名を取るホッポウ十戦兵の一人、イチジクさんを退けてバッジを手に入れた、フィア選手!』
アナウンサーの高らかな叫び声と共に、会場が一気に沸き上がる。
『風の噂では、シュンセイジム戦でも奇跡のような逆転勝利を収めたとかなんとか。一回戦でも同じように見事な逆転劇を見せています。今回のバトルも逆境を引っくり返すことができるのか——ッ!?』
(そんな大袈裟な……ていうか、イチジクさんってそんなに凄い人だったんだ)
十戦兵などというのは知らないが、まだ若いし、本人が他の島の強いジムリーダーのことを語っていたので、まさかその挙がった名前と同列だとは思わなかった。いや、その十戦兵とイチジクが挙げた強いジムリーダーが同列とは限らないが。
『そしてそのフィア選手の対戦相手、現在バッジ二つ、テイル選手! 最も最近手に入れたのはライカシティのジムバッジのようです』
『ライカシティと言えば……クリさんですか。まだどのようなバトルをするのかは分かりませんが、あの人は単調なバトル展開ではまず倒せない。選手を贔屓するつもりはありませんが、僕個人としてはテイル選手のバトルに注目したいですね』
さらに沸き上がる歓声に乗っかるように、アナウンサーはウルシの言葉を拾って先へと続ける。
『ウルシさんの発言で期待の高まるテイル選手! さあ、遂に両選手の入場です!』
入場の合図を受け、フィアは控室からゆっくりと歩き出す。そして、バトルフィールドへと出た。
相手はテイルという名前の、少年だ。歳はフィアと同じか少し上くらいだろうか。茶髪と黄金の瞳、フードの付いたトレーナーと青い半ズボンを着用しており、動きやすそうな格好だ。
フィアが試合開始までの僅かな時間、緊張からテイルをジッと見つめていると、その視線に気付いたのかテイルの方から声をかけてきた。
「よっ。お前、フィアだっけ? 一回戦のバトルの動画見たぜ、すげーなあの大逆転。俺も思わずがっついちまった」
「え、あ、ありがとう、ございます……」
急に褒められた戸惑いから、言い淀んでしまうフィア。しかし思いのほか相手が気さくだったためか、緊張も少しほぐれた。
前口上も終わり、審判の準備も整った。いよいよ、バトルが開始される時だ。
『ビギナーカップAブロック二回戦、試合——スタートです!』
アナウンサーの声と共に、フィアとテイルは同時にポケモンを繰り出す。
「頼んだよ、ブースター!」
「行っけぇ、シビシラス!」
フィアのポケモンはブースター。そしてフィアの予想通り、テイルが繰り出すのは電気タイプだった。
白い小魚のような姿のポケモン。体の側面には心電図のような黄色いラインが走っている。
『Information
シビシラス 電気魚ポケモン
稀にとても素早いシビシラスが
生まれ、体当たりで数々の相手
を突き飛ばしたという記録がある。』
ちなみに、フィアがシビシラスを電気タイプだと判断したのは、シビシラスの体からパチパチと電気が弾けていたからだ。
「一回戦の時とはポケモンが違うけど、あのモモンガみたいなポケモンよりは素早くなさそうだし、ブースターなら大丈夫かな」
そう呟き、フィアは小さく息を吐く。そして、ブースターへと指示を出した。
「ブースター、ニトロチャージ!」
最初に動いたのはブースター。ブースターは全身に炎を纏い、シビシラスへと突っ込んでいくが、
「かわしてスパークだ!」
シビシラスはブースターのニトロチャージを体を捻って回避すると、電気を纏い、後ろから追突するようにして反撃してくる。
ニトロチャージは素早さを上げる技でもあるのだが、それは攻撃がヒットした時のみ。攻撃を避けられては意味がない。
「だったら、火炎放射!」
「かわすんだ!」
ブースターは態勢を立て直すと、今度は燃え盛る火炎を発射するが、またしてもシビシラスには躱されてしまう。
「シビシラス、チャージビーム!」
そしてそのまま、電気を圧縮した光線が発射される。元々それほど素早くないブースターはその光線を避けられず、攻撃を受けてしまう。
(チャージビームはイチジクさんのノコッチも使ってたっけ。確か、ポケモンの特攻を上げるんだよね)
必ず上昇するわけではないが、つまりシビシラスは高い確率でチャージビームを撃つごとの威力が増していくことになる。あまり特攻を上げられても困るので、早めに決めなければならない。
「ニトロチャージだ!」
「かわしてチャージビーム!」
ブースターは炎を纏って突進するも、シビシラスに回避され、そのままチャージビームを受けてしまう。
『シビシラス、またしてもブースターの攻撃を躱しました!』
『一回戦の動画を軽く見させてもらいましたが、テイル選手は基本的に攻撃技でとにかく攻めて行く初心者にありがちな戦法を取っていました。ただ、相手が自分にとって不利だったり、真っ向勝負じゃ敵わないと見ると、補助技や回避行動を織り交ぜる傾向がありますね。それ自体はトレーナーとして高みを目指すために必須な技術ですが、駆け出しのトレーナーとしては上手い部類に入るでしょう。逆にフィア選手は、動きが単調ですね。ポケモン自体のポテンシャルは非常に高いのですが、まだトレーナーとしての実力がついていけてないと言いますか、ポケモンの能力に引っ張られている感が否めません』
つまり、トレーナーとしての実力はフィアの方が劣っているとウルシは言う。だが実際にはその通りだった。
二回戦に来て苦戦を強いられるフィア。今の彼にできることは、ブースターに指示を出しながらも考えること。
考えに考え、活路を見出す。それがトレーナーのあるべき姿だと実感しながらも、フィアは勝利のための道を模索するのだった。
サミダレ大会二回戦、開始されました。そして今回はタクさんからのテイルの登場です。まだ台詞は少ないですが、こういう熱血少年的なキャラを書いたのは初めてで、少し違和感を覚えるかもしれません。その時はごめんなさい。それと、今回も新キャラというかジムリーダーの名前が明かされました。ライカシティのジムリーダー、クリです。このキャラは他の名前が挙がったジムリーダーより早く登場すると思います。さて、それでは次回、フィア対テイル戦、決着です。お楽しみに。