二次創作小説(紙ほか)
- 第26話 divorce ( No.88 )
- 日時: 2013/04/29 20:40
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: 激闘を広げるフィアとフロル。戦いを制するのはどちらか……!
ブースターとリーフィアの攻撃は激しくぶつかり合い、互いに身を退いた。
「火炎放射!」
その後すぐに切り返したのはブースターだ。口から燃え盛る炎を噴射し、リーフィアを攻撃する。
「リーフィア、かわして燕返し!」
リーフィアは襲い掛かる炎を横に跳んで回避し、そのままブースターへと突っ込み、尻尾で切り裂いた。剣の舞で攻撃力が上がっているため、ダメージは大きい。
「アイアンテールだ!」
「もう一度、燕返し!」
ブースターは反撃に鋼鉄のように硬化させた尻尾を振るい、リーフィアも鋭い尻尾で斬りかかる。
双方の攻撃がまたしてもぶつかり合うが、今度の結果はブースターの勝ちだ。剣の舞で攻撃力を上げても、まだブースターには届かなかない。
「ブースター、攻めるよ。ニトロチャージ!」
大きく後退するリーフィアに、ブースターは炎を纏って追いかけるように駆け出す。
「かわして!」
リーフィアはまた横に跳んでニトロチャージを回避するが、
「まだまだ! 火炎放射!」
すぐさまブースターは火炎放射で追撃。
リーフィアはなんとか身を捻って躱そうとするが、避けきれず炎を少し掠めてしまう。
「リーフィア、こっちも負けてられないよ。ポイズンリーフ!」
リーフィアは一度態勢を整えると、尻尾や耳を振るって無数の葉っぱを射出する。葉っぱは紫色を帯びており、危険な香りが感じられた。
「ブースター、火炎放射だ!」
咄嗟にブースターは火炎放射を放ち、迫り来る葉っぱを燃やし尽くしてしまう。しかし、
「リーフブレード!」
火炎放射でブースターの視界が塞がった瞬間、リーフィアはブースターとの距離を一気に詰め、葉っぱのような尻尾で切り裂いた。効果はいまひとつだが、剣の舞があるので実質的に等倍でダメージが通る。
「燕返し!」
「アイアンテールで弾き返すんだ!」
リーフィアは返す刀で追撃を試みるが、ブースターも鋼鉄の尻尾で素早く切り返し、リーフィアを弾き飛ばす。
「ニトロチャージ!」
そして炎を纏って突進。リーフィアが地面に着地した瞬間に攻撃が当たる、絶妙なタイミングだが、
「リーフブレードだよ!」
リーフィアは空中で身を捻って態勢を変え、尻尾を振り下ろすようにしながら落下。そのままブースターとぶつかり合う。
しばし競り合っていた二体は互いに飛び退き、睨み合う。
(フロル、こんなに強かったんだ……これならシュンセイジムでも普通に勝てると思うけど……)
そんなことを思うフィアだったが、今はバトル中だ。雑念を振り払い、頭を切り替えてバトルに集中する。
「ブースター、アイアンテール!」
「リーフィア、ポイズンリーフ!」
ブースターは尻尾を鋼鉄のように硬化させてリーフィアへと突っ込み、リーフィアは毒素を含んだ葉っぱを飛ばしてブースターを切り裂く。
ブースターはポイズンリーフに切り裂かれながらも足を止めず、リーフィアに接近して尻尾を振るい、大きく吹っ飛ばした。リーフィアは地面に叩きつけられ、砂煙に包まれる。
「よしっ」
手応えのある一撃。まともに入ったので、リーフィアには大ダメージだと思いきや、
「燕返し!」
砂煙の中からリーフィアが飛び出し、ブースターを切り裂いた。その動きは、あまり大ダメージを受けたようには見えない。
「リーフィアは防御力が高いポケモンだよ。そうは見えないかもしれないけど……だからブースターの物理技でも、やられたりはしない」
攻撃特化のブースターに防御特化のリーフィア。相性ではブースターが有利だが、リーフィアには剣の舞がある。
この勝負、いよいよどちらが勝つのか分からなくなってきた……が、その危うく保たれていた均衡が、崩れた。
「リーフィア、ポイズンリーフだよ!」
一旦下がってブースターから距離を取ったリーフィアは、毒素を含んだ葉っぱを連射する。ブースターはその葉っぱに切り裂かれ、傷口から葉っぱに含まれた毒素が入り込んでしまった。
即ち、ブースターは毒状態となった。
「やった、毒の追加効果」
観客たちが沸き上がる。状態異状でフロルが優勢となった、観客の多くはそう思っていたが、それはAブロックのバトルを見ていない者たちだ。
Aブロック二回戦の試合を見ていた観客は、そんな者たちとは違う意味で沸き上がっていた。
ブースターが毒状態になるということは——
「来た……!」
——ブースターの特性、根性が発動するということなのだから。
『来ました! ブースターの特性、根性が発動だ——! これで攻撃力が超アップ! ブースターはリーフィアの防御を突破できるのか——!?』
『毒で長期戦ならリーフィアが有利、根性で短期決戦ならブースターが有利ですね。ですが——』
ウルシはあえてこの先を言わなかった。もう勝負は決したようなものだなんて、流石にこのような場所では言えるはずもない。
「起死回生だ!」
ブースターは鬼気迫る勢いでリーフィアに接近し、尻尾で払い飛ばした。根性と威力最大の起死回生、その破壊力は凄まじいもので、流石のリーフィアもかなりのダメージを負ったようだ。
「うぅ、でも、まだ……!」
リーフィアは立ち上がり、尻尾を構えて駆け出す。ブースターもそれに合わせ、走り出した。
「リーフィア、リーフブレード!」
「ブースター、ニトロチャージ!」
バトル開始の交錯と全く同じ技でのぶつかり合い。しかしもう既に、勝敗は決していた。
根性で攻撃力が底上げされたブースターのニトロチャージは、葉っぱの刃を突き破り、そのままリーフィアを突き飛ばした。
「リーフィア!」
壁まで吹き飛ばされたリーフィアは、そのまま地面に伏し、ぐったりとして動かない。完全に戦闘不能となっている。
つまり、
『決まった——! フィア選手のブースター、一進一退の攻防を特性、根性で打破! フロル選手のリーフィアを倒し、サミダレ大会ビギナーカップ、優勝です!』
アナウンサーの叫びと同調するかのように、ワァッと観客たちの歓声が今まで以上に大きくなる。
『……駆け出しトレーナーとは思えない、ハイレベルなバトルを見せて頂きました。もし彼や彼女と戦う機会があるなら、是非とも手合せしたいところですね』
ウルシもそう言ってまとめる。
なにはともあれ、乱戦混戦、波乱もあったサミダレタウンバトル大会ビギナーカップは、フィアの優勝で幕を降ろした。
フィアは優勝賞品であるポケモンの卵を受け取った後、一番ポートまで来ていた。
なぜ、船も停泊していないこんなところにわざわざ来るのかというと、話は簡単。フロルに呼び出されたからだ。
ポケモンにも卵ってあるんだ、などと思いながら船着き場まで来ると、夕日をバックにフロルが待ち構えていた。
「フロル……どうしたの、こんなところに呼び出して。話なら、ポケモンセンターでも——」
「フィア」
フィアの言葉を遮って、フロルは少し俯きながらも、はっきりと言葉を口にする。
「お願いがあるの」
「……なに」
前髪でよく見えないが、雰囲気で察せるフロルの真面目な空気に、フィアも真剣に取り合う。
そして、
「わたしたち……別れよう」
「っ……?」
あまりにも唐突で、フィアはすぐに意味を理解しきれなかったが、フロルは続けた。
「わたし、今日ポケモンを盗まれてから気付いたんだ。もっと一人でいろいろできるようにならなきゃダメだって。たぶんこのまま一緒に旅してても、わたしはフィアに頼っちゃう。でも、それじゃダメだと思うの。だから」
「ここで、別れるの?」
「……うん」
フロルの目を見る。真剣で、覚悟を決めたような眼差しだ。
この世界ではフィアの方が経験が浅い、いわば後輩のようなもの。しかし年齢だけで見れば、フィアはフロルよりも三つも年上なのだ。
はっきり言って、フィアはフロルが一緒にいてくれる方が嬉しいし、安心できる。フィアにとってこの世界はまだまだ分からないことだらけで、そんな場所を一人で旅するのは不安だ。
だけどよく考えれば、それはフロルも同じかもしれない。フロルもハルビタウンから出たことはなかったという。なら、それはこの世界をよく知らない、フィアとほとんど同じではないのか。
そう考え、フィアは自分にとっても、相手にとっても、最良の言葉を紡ぎ出す。
そして、
「……分かった。僕たちはここで、一旦お別れだ」
フィアはそう告げた。
だが、言葉にしなくても分かる。ここで別れることは、永遠に別れることではないということを。
また、会える日が来るということを。
「ばいばい、フロル。また会おう」
「うん……次会う時はわたし、もっと強くなるよ」
「当然、僕もだよ」
そして翌日、二人はサミダレタウンを後にした。しかし、二人の進む道は、違っていた——
今回はフィア対フロルが決着しました。そしてここで、二人は別れます。一人旅はこの世界だと普通ですが、フィアにとってはさぞ心細いでしょうね。しかしここは年長者として大人な対応をしました。まあそんな茶化すようなことは置いておいて。次回は次なる街に行きます。その前に新キャラも出るかもしれません。それではお楽しみに。