二次創作小説(紙ほか)
- 第27話 ライカシティ ( No.91 )
- 日時: 2013/04/30 00:52
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: H6B.1Ttr)
- プロフ: ライカシティを目指すフィア、その道中で……?
フィアはフロルと一旦別れ、次なる街、ライカシティへと向かっていた。
サミダレタウンからライカシティへは歩いていける距離。新戦力のことも頭に置きつつ、野生のポケモンを眺めながら道を歩いていると、異変に気付く。
「……? 海が……」
フィアが歩いている道路は沿岸の道なので、すぐ横に海がある。ふとそちらに目を向けると、水面が揺れているのだ。
何が出て来るのかと期待半分、不安半分で水面を見つめていると、次の瞬間、巨大な物体が水面から飛び出した。
「……!?」
水飛沫を浴びながら唖然とするフィア。水面から——正確には海中から——浮上してきたのは、巨大な黒い潜水艦だ。
言葉が出ずフィアがその潜水艦を見つめていると、上部のハッチが開き、中から誰かが出て来る。太陽光を背にしているので一瞬目が眩んだが、フィアはすぐにその人物を認識した。
若い男だ。迷彩柄の軍服を着ており、髪色もグリーンカラーで迷彩にしている。森に入れば溶け込んでしまいそうな保護色だらけの男だが、両手に嵌めたグローブだけは赤く、白い円模様が散りばめられている。
男はフィアの姿を視認すると、
「貴殿は、フィア殿でありますか?」
まず、そう尋ねてきた。
「え? えーっと、はい、そうですけど……」
聞き慣れない、貴殿などという代名詞、殿などという敬称に戸惑いを覚えるフィアだったが、素性を聞かれては答えるしかない。
すると男は、爽やかな表情を見せ、右手を額にかざすように添えた。いわゆる敬礼という動作だ。
「お初お目にかかります! 自分は僭越ながらムゲツシティのジムリーダーを勤めさせて頂いている、トクサと申すものであります! 以後、お見知りおきください」
『Information
ジムリーダー トクサ
専門:虫タイプ
異名:蠱軍師
階級:大佐』
威勢がよく爽やかに名乗りを上げるトクサ。フィアはまた、違う意味で呆然としていた。
(この人が、イチジクさんの言ってたトクサさん……予想と全然違うよ……)
ホッポウ地方最大の軍隊を率いている男というものだから、もっと鬼教官のような性格だと思い込んでいた。だから、その漠然とした予想とは180°違うトクサの性格に、少し怯んでしまう。
トクサはハッチからフィアの目の前まで飛び降りてきた。そこそこの高さがあって危険だと思うが、その辺りは流石軍人、ということなのだろうか。
「此度は博士殿からこれを渡すよう依頼され、貴殿に会いに来た次第であります。どうぞ、お受け取りください」
「は、はぁ……」
丁寧かつ丁重に何かを手渡されるフィア。本来ならこちらが目下なのに、その礼儀正しい口調と態度。少しばかり調子を狂わされる。
フィアが渡されたのは、薄い長方形の箱だった。開けてみると、中には八つの小さな凹みがある。
「これは、なんですか?」
「バッジケースであります」
言われて思い出した。
フィアとフロルが旅に出る時、博士が二人に渡し忘れたもの。それが、ポケモンリーグ公認のジムバッジを収めるバッジケースだ。
一応、規定ではこのバッジケースがなければポケモンリーグには挑戦できないことになっているので、いつか必ず必要になるものなのだが、あの博士にしては案外早く届けたものだった。
「それでは、たったこれだけのことでお手を煩わせてしまい申し訳ない限りでありますが、自分はまだ、フロル殿という方にもバッジケースを届ける任がありますので、これで失礼させて頂きます」
トクサはそう言って頭を下げると、タッタッタとテンポよく潜水艦を上っていき、ハッチから中へと入っていく。それからしばらくすると、潜水艦は沈んでいった。
「トクサさん、か」
イメージとは違っていたが、イチジクが言うにはこの地方でも指折りの強者。戦うとしたら、一筋縄ではいかないだろう。
「……まあ、今の僕には関係ない。とりあえず次の街で、新しいジムバッジをゲットしよう」
彼と戦うことになるのは、フィアがもっと強くなってから。それは、ずっと先のことであろう。
そう思いながら、フィアはライカシティへと歩を進めた。
ライカシティはホッポウ地方有数の研究施設が存在する街だ。トレーナー研究機関、アシッド機関との結びつきも強く、日夜多くの研究者たちが頭を悩ませている。
なおこの街は研究だけでなく、発電所も存在し、この街だけ独立した電力供給体制を取っている。というのも、研究で使う電気が膨大なため、自家発電して足りない分を補っているそうだ。そうしているうちに自家発電量が上昇していき、やがて電気なら自給自足ができるようになった、というわけらしい。
しかしフィアにはそんなことはどうでもいい。フィアは街に着くなりポケモンセンターでポケモンを回復させ、軽くジムリーダーの情報を集めてから、ジムへと向かった。
しかし、
「えっ? ジムリーダーの人、いないんですか?」
話を聞けば、ジムリーダーは研究者と兼任しており、今日は研究所で研究者として働いているらしい。
つまり、ジム戦をするなら明日以降、ということになる。
フィアとしては多少日程が前後しても支障はないが、出鼻を挫かれた感はあった。
とりあえずフィアはポケモンセンターに戻り、今後の方針を決めていく。
「ジム戦が明日なら、どうしようか。地下で誰かとバトルして特訓するか、それとも新しいポケモンを見つけに行くか……うーん、流石にバトル出来るポケモンが二体じゃ、ちょっと心許ないよね」
と思い、どこかしらへ新しいポケモンをゲットしに行こうとするが、そこでフィアはまたしても出鼻を挫かれる。
ガクンッ
という音と共に、ポケモンセンター内は闇に包まれた。
「っ……停電?」
今の音と、状況から考えれば……というより日常生活で急に室内が暗くなる現象と言えば、それくらいしか思いつかない。
だが停電なら騒ぐこともない、そのうちブレーカーが上がって元に戻るはず。そう思っていたが、ポケモンセンターの中は一向に闇に閉ざされたままだ。
「……? 何で……?」
センターの奥では、ジョーイさんたちが慌ただしく走り、なにか話している。問題でも起こったのかもしれない。
と、フィアがそう思った時だった。
外から何かがポケモンセンターへと飛び込んできた。
「な、何……っ?」
それはポケモンだ。大きな猫のような姿をしており、青い体に黒い鬣が生えている。
『Information
ルクシオ 電光ポケモン
爪から高圧の電流を流すことが
できる。この電流は攻撃だけでなく
仲間内での意思表示にも用いられる。』
ルクシオはセンターの中に入るなり、電気を放って威嚇し始めた。かなり興奮しているようだ。
「これは、止めないとまずいよね。ブースター!」
フィアはブースターを出し、応戦する。
「ブースター、火炎放射!」
ブースターは口から灼熱の炎を吐き出すが、ルクシオも周囲に電撃を撒き散らし、炎を相殺する。放電だ。
「だったら、ニトロチャージ!」
今度は炎を纏って突撃するブースター。ルクシオも電気を纏って突っ込んで来る。今度はスパークか。
両者の攻撃が激しくぶつかり合うが、攻撃力ならブースターの方が断然高い。ルクシオは軽く突き飛ばされてしまった。
「アイアンテールだ!」
そこにブースターの鋼鉄の尻尾が追撃をかけ、さらに吹っ飛ばす。その一撃でルクシオは外に追いやられた。
「よし、いいぞブースター。外なら被害も少なく済む。火炎放射!」
室内では威力を控えていたが、屋外なら話は別。ブースターはフルパワーで燃え盛る火炎を噴射する。
ルクシオも放電で対抗するが、相殺しきれず突っ切られ、炎を浴びてしまう。しかも今の一撃でルクシオは火傷状態となった。
興奮が冷めたのか、ルクシオはこれ以上戦っても勝てないと判断したようで、踵を返してどこかへと走り去ってしまう。あれだけのダメージに火傷まで受ければ、もう暴れたりはしないだろう。
なんにせよ、停電のすぐ後にルクシオの襲来。偶然だと思いたいが、繋がっていると考えるのが人の性。それにこの二つが無関係だとも思えない。
フィアは決意を固め、発電所と隣接している研究所へと向かおうとする。
その時、声をかけられた。
今回はまず新キャラ、ムゲツシティのジムリーダー、トクサの登場です。彼は個人的には好きなキャラです、書きやすいですし。そしてライカシティに到着。ここには二つ目のジムがありますが、まだ挑戦は出来ません。というか今回、ペース遅いな……もうすぐ返信百なのにまだバッジ一つかよ。それはともかく、突如ポケセンは停電し、ルクシオが襲ってきました。まあ物語の展開的に無関係ではないですよね。そして研究所へと向かうフィアですが……というわけで次回、新キャラ登場。そして停電の異変を探るべく研究所にレッツゴーです。というか最近、新キャラが増えて来てるような……読者のみなさん、ついて来れてますかね……? その辺が不安ですが、次回をお楽しみに。