二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと忘却の彼方 ( No.100 )
- 日時: 2013/05/19 17:53
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第9章の続き(バン視点)
診断の結果、ハルの記憶喪失は逆行性健忘症というものだった。この病気は何らかの理由で心因性になりやすい。
ただし、ハルの場合は脳に損傷がないことが見られるということで記憶を全部忘れたわけではない。
「晴香ちゃんの記憶喪失は、心因性によるショックで記憶を失ったものだと思われます」
「そうですか…先生、ハルの記憶はいつ戻るようになりますか?」
「そうですね、記憶が戻るわけではないのですが…リラックスした時にフッと思い出すことが多いですな」
リラックスした時にフッと思い出すことが多い…それなら、アメリカにいた方がまだマシだ。
アメリカのことはルークやリーフ、ケイティの3人が知っているので連れて行ってもらうこともありだろう。
「俺のせいだ…」
「バンさん、気にしなくてもいいんじゃないですか?」
「記憶が戻らなければ、どうすんだよ…俺だって、あんなに辛い思いしたことないのに…」
ハルは俺の大事な幼馴染だ。何があっても守る…記憶が戻らなくたっていい。
でも、俺たちができることはハルを守りきるだけ…犯人に命を狙われかけてるんだから---------------
「バンさんのせいではないですよ。僕にも協力させてください」
「ヒロ…」
「僕だって、ハルさんには色々とお世話になっていたんですから…ナオもきっと、ハルさんのこと気にしてると思います」
ヒロは心気強く見つめながら、俺に向かって言い放つ。確かにヒロの言うとおりかもしれない。
記憶がなくたっていい…目の前に居るハルが無事でいてくれただけで何よりだ。
「そうだな、お前の言うとおりだ。ありがとな、ヒロ…」
「バンさん、僕たちでハルさんを守りましょうよ」
「そうだな、記憶がなくたって…話せるもんな、少しずつ思い出してくれればなぁ…」
ハルは記憶を失い、自分の名前さえも思い出せない状態だった。それが俺にとっても辛い出来事だ。
それでも、ゼロからの再出発…ということで、少しずつ記憶を取り戻してくれればいいと願うしかなかった。
2日間、大事をとって入院していたハル…ようやく、少しずつ落ち着きを取り戻していき、記憶が戻ってなくてもいいという状態で退院した。
「お世話になりました」
「何かあったら、遠慮なく言って下さいね」
「はい。じゃあ、そろそろ行くか…ハル」
ハルを促し、ルークの運転する車に乗って向かうことにした。ルークの家に行って、いつものように泊まるだけだった。
自宅に着き、到着した途端…通路に水溜りが溜まっていたのを見たハルはビクッと怯えた。
「…ハル?」
ハルの様子に異変を察した俺は首を傾げながら、肩に手をかける。ヒロが水溜りに気付いて、何かを察した。
もしかして、水溜りを見て…何かを思い出しかけたのではないか。よく考えてみれば、ハルが怯えだしたのも頷ける。
「バンさん、気になることがあるんだけど…ルークさんの家に行きましょう」
「あぁ、そうだな…おんぶするから、背中に乗れ」
ハルを促し、背中に乗せると…重く感じられたが、割と軽い方だ。珍しく怯えたハルを見たのは久しぶりだった。
ヒロと一緒に家の中に入り、ソファーにハルを寝かせた。ルークが用意してくれた毛布をかけ、ヒロの方に振り向いた。
「そういえば、何か気付いたことでもあったのか?」
「はい。水溜りを見てたんですよね…、何かおかしいなって思いませんか?」
「おかしい…それは一理あるな。何か思い出そうとしているのか?」
あの時、記憶を失った原因が水溜りではないとしたら…これは絶対に何かありそうだ。
ヒロの洞察力に関しては、信頼を置いているが…記憶が戻るまでの間、ゆっくり過ごすのも良さそうだ。
「そうみたいですね…記憶がいつ戻るか分からないし、僕ら2人で調査しに行きませんか?」
「調査って言われてもなぁ…記憶がないことに何か関連があるんだったらいいと思うけどさ」
ヒロの言うとおり、記憶が戻ったら…ハルの身体に影響を受けてしまうのも頷ける。
調査しに行くことも良さそうだが…どうすることもできないので、チラッとルークたちを見た。
楽しそうに話しこみながら、ハルの様子を見て気遣う様子が伺えた。記憶が戻らなくてもいいのか。
「…バンさん、どうしたんですか?」
「っ、何でもねぇよ…ちょっと飲みに行ってくらぁ」
ヒラヒラと手を振りながら、慌てて立ち去っていく俺を見て呆然とした。
ルークとリーフ、ケイティは俺の様子に異変を察したらしく…何も言うことができなかった。