二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと忘却の彼方 ( No.105 )
日時: 2013/05/29 14:33
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

第11章 もう1人の幼馴染・高橋輝美との再会(前編) ハルに対するテルの思いとは?

ハルが記憶喪失してから、数日経ったある日…1人の女性がダウンタウンにやってきた。
その女性は頭にカチューシャのようなものをつけ、肩にスポーツバックをかけている。服装はカジュアル系で、動きやすいタイプ。
下にはズボンも履いており、サングラスをかけていた。ロス市内の大学に進学している。

「くぅーっ、ルークの家に来たのはいいけど…」

背伸びしてから溜息をつく女性の名は高橋輝美。日本人だけど、バンとハルの幼馴染。
通称テル…もう1人の幼馴染といえば、分かるだろう。日本に居た頃の記憶は今でも思い出せるが、アメリカに留学したいと言った時の反応は意外だった。

(今、思えば…懐かしいねぇ、バンとハルはどうしているのかしら)

ふと思っていた矢先、インターホンを押そうとした。その時、玄関のドアが開く。
目の前に現れた青年はルーク・タイロン。ハルがアメリカにいたときの幼馴染で、大学進学したのを機に知り合った。

「ルーク、久しぶりね!」

日本語で喋りながら話すテルの様子を見たルークはコクリと頷く。とりあえず、中に入るように促す。
テルはルークに従い、家の中に入る。ソファに座りながら、テレビを見ている女性に気付く。

「ハル?」
「そうだよ…」

ルークが肩を落としているのを見て、何があったのかというようなしぐさを見せる。
ハルの記憶が戻らないようでは、話すべきこともできない…それを承知で分かりきろうとしていた。
テルは訝しげに首を傾げていたが、何かあったということだけは何となく察することができた。

「ハル、何か様子がおかしいけど…何かあった?」

テルの様子を見て、話すべきか迷っていたルークは溜息をつく。少し息を整え、話す体勢に入る。

「ハルは…記憶喪失になったんだ」
「…えっ、ハルが記憶…喪失!?」

ルークから告げられた瞬間、記憶喪失であることを知らずにいた。テルはマジかというような顔をして驚く。
まさか、あのハルが記憶喪失…そんなことは有り得ない。本当に夢であってほしいと思っていた。
何もかも信じたくない…ハルはいつだって、優しくしてくれた。親友であり、幼馴染でもあるハルのことは忘れることができない。

「あぁ、この前の事件がきっかけでな…記憶喪失になったのは、病院に運ばれた時さ」
「それで、ハルの様子がおかしかったのは…記憶喪失していたから、何も思い出せないで居た…ということ?」

勘が鋭いテルはハルのことで思い当たる節があった。両目に赤い瞳をした男の正体は未だ分からない。
記憶をなくしてしまうのも、事件が起きたことによるショック…それが原因で記憶を失ったことも有り得る。
ただし、少しずつ取り戻しかけているとも聞いていたが…ルークとは連絡を取り合っていたので、ハルに会うことも目的の1つだ。

「そういえば、バンは?」
「バンなら、上の4人部屋でゆっくり寛いでるぞ」
「あ、そう…バンに会ってもいいかな、あいつに言いたいこともあるしね」

幼い頃、保育園で一緒だった山野バンとは幼馴染の1人だった。基本的には仲が良い方だ。
今ではイケメンになり、酒を飲む機会が増えたとも聞いている。
大学留学するようになってから、しばらく会っていないというのが現状だ。日本に帰国する機会は何回かある。

「そうか…バンに会うなら、飲み過ぎないようにって言っとけ」

ルークの言っていることが分からなかったが、バンは酒を飲むことがよくあるとか聞いていたような気がする。
それは差し置いて、上に通じる階段を上って4人部屋のある階に向かった。

「へぇ…ここが4人部屋のある階かぁ…」

テルはそう言いながら、4人部屋の前まで来た。久しぶりの再会に胸を躍らせて、ドアに手をかける。
その時、タイミングよくドアが開かれる。目の前に現れたのは、アホ毛の青年だった。

「…ヒロ?」
「テルさん…?」

大空ヒロを見て、呆然とする…なぜ、ここにいるのかということを知らなかった。
突然の再会に驚いていたが、ヒロは苦笑しながら溜息をついて頷く。何でここやってきたのか。

「テルさん、久しぶりですね。何でここにいるんですか?」
「大学の授業が休講になってね、こっちに来たってわけよ」
「そうなんですかぁ…っていうか、バンさんに会いに来たんですか?」

バンに会いに来たのは言うまでもない。ヒロは苦笑しつつ、無言で顎をしゃくりながら見るように促す。
首を傾げつつ、ヒロの視線を追って見ると…ソファに横たわりながら、気持ち良さそうに寝ているバンの姿。
ソファの下には、缶ビールらしきものが8本くらい転がっていた。酒を飲み過ぎて寝ているということか?

「飲み過ぎでしょ…どんだけ飲んだのよ、もう!」
「まぁまぁ、怒らないであげてください。バンさん、かなり悩んでましたからねぇ…」
「あいつが悩んでた…それって、ハルのこと?」
「えぇ、それもあります。詳しいことは分かりませんが、本人に問い詰めた方がいいと思います」

バンに何かあることは気付いていた…記憶喪失になったことが原因で、未だショックを受けているのか。
仕方ないので、ヒロと別れたテルは4人部屋のドアを閉めて、中に入る。

(ったく…どれだけ飲んだのよ、ハルの苦労も分かりなさい!)

ソファに寝転がって、気持ち良さそうに寝ていたバンの肩を揺り起こして、声をかける。

「バン起きて、ちょっと聞きたいことがあるんだけど!」

肩を揺さぶりかけて起こそうと試みるも、気持ち良さそうに爆睡していた。
かなり飲んだのか、ベロベロになりかけているようだ…仕方がなく、もう1度強く起こす。

「いい加減に起きてよ、バンってば------------------」

右手で拳を握って、思いっきり殴ろうとしたその時…ギュッと右手を掴まれる音がした。

「…っ!?」

気付けば、バンの左手に掴まれていた…眠そうに目を開けているバンを見て驚く。
だるそうに握ったまま、上半身を起こして姿勢を正すようにして座る。隣が空いたので、そこに座った。

「久しぶりだなぁ、テル…俺に突っかかって殴るとは良い度胸じゃないかぁー」
「久しぶり、バン…だって、飲みすぎるのもいい加減にしないとダメでしょうが!」

幼馴染のだらしない姿を見て呆れた。アメリカに来たらしいことは聞いていた。
ハルが記憶喪失していたとは…信じたくないが、バンに聞くのもありではないか。

「うっせ、飲み過ぎて何が悪い…っく、ハルのヤツが記憶喪失になったこと知ってた?」
「さっき、ルークから聞いたわ。どういうことなの、その事件が原因で?」
「あぁ、そうみたいだな…記憶を失ったのは間違いないさ。あの日、俺はヒロと一緒に酒を飲んでた」

事件があったその日は、女子と男子に別れて行動することになっていた。
その時、バンとヒロは居酒屋で酒を飲みながら語り合っていたという…結局、夜遅くまで続いたらしい。
一方、ハルたち女子は思いっきり遊びまくっていたらしい。
深夜1時ちょうど、飲んだ帰りに酔いを覚ましていた矢先…ルークから緊急連絡が入り、ハルとナオが病院に運び込まれたとのことだった。

「えっ…ナオも運び込まれたって---------------」
「その時に起きた事件で、赤い瞳の男に拳銃で撃たれてやられたらしい」
「そんな…じゃあ、ナオは助かるかどうか分からないってこと?」
「ああ…記憶を失ったのなら、俺が責任とるべきだったかな…」

バンは顔を顰めながらうなだれたまま、ハルの記憶喪失について考えられなくなっていた。
その気持ちは、テルも分かっていた…幼馴染だからこそ、自分が何をするべきか-------------------

(できることは、私もバンの推理を手伝うことしかない)

その事件の謎を解き明かすしかない…しかし、その謎が深まりつつあることが分かった。
ただ、それだけは言える…バンなら、事件の謎を解き明かしてくれるのだということを-----------------

「バン、私も事件の謎を解きたい!」
「…え、何言って…」
「いつものバンらしくないよ、事件の謎を解き明かすとか考えたことないの?」

テルの言葉に揺さぶりかけられ、黙りこくっていたバンは溜息をついた。
相手は、赤い瞳の男…カラコンしている可能性もあるので、それも含めて考えられる。
そろそろ、謎解きをしてやるしかない。テルの思いも入れて、事件の謎を解き明かしてやらなければ気が済まない。

「そうだな…やってやるか!」

事件の謎を解き明かすべく、いつまでも落ち込んでいられない。テルとバンは力を合わせて、事件解決に向けた。