二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと忘却の彼方 ( No.16 )
- 日時: 2013/04/15 22:33
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第1章の続き(バン視点)
ハルのことだから、悩み事があってもおかしくない。やっぱり、誰でも分かること…何かあったのは間違いない。
今日は母親がいないので、せっかくだから2人でゆっくり過ごしながら話すのもありだ。
「なぁ、ハル…午後、俺んちに来る?」
『えっ……でも、良いの? 真理恵さんに咎められちゃうよ』
「別にいいって…母さんは友達と一緒に同窓会に行って、泊まりに行くらしいから」
『そっか…何時頃に行けばいい?』
「昼飯食ってからでいいよ。昼から酒を飲んで話すのもありじゃね?」
『いや、それは…夜になってからの方がいいと思う』
酒を飲むのは夜になってからがいい…それは確かだけど、何か言い難いことでもあるのではないか。
昼間から飲んで寝るのもありだと思ったので、ハルを誘うには都合がいい。
ただ、その悩み事が気になる…少しだけでも力になればいいと思っていたからだ。
「夜になってからじゃ遅いと思うぞ…。たまには、昼間から飲んで話そうぜ」
『そうだね…。じゃあ、午後1時に行くよ!』
「おう、じゃあな…」
そう言って、電話を切った。彼女のことだから、悩みが出ているのは間違いなかった。
ただ、人事じゃないと言えるのは確かで…。飲み過ぎはしない方がいいけど、話を聞いてやらないと気がすまない。
「ったく、しょうがねぇ…」
ベッドに横たわったまま、溜息をついた。幼馴染である彼女のことを気遣うわけにはいかない。
何かと問題を起こしてしまうハルのことだから、悩まされても仕方がない。
(気持ちは何となく分かるけどな…)
幼馴染だけど、いつも素直じゃない…そんな彼女を見てきて、いろいろ思ったことがある。
中3の時に起きた事件で氷介を亡くし、学校に行く意欲すら無くなりかけていた…それはハルにとっても辛い出来事だった。
寂しさを紛らわせたくて、気分転換に教室を抜け出そうとすることが何度もあって、その様子を見ていた俺たちは心配していた。
(大学生になってからは、そういうのが無くなった…けど、今もまだ癒えないでいるんだろうな…)
心を閉ざしているハルは何らかの理由を抱えていた…決して、誰にも話そうとしなかった。
孤独を紛らわせたくない…それが悩みを増やす原因になってしまう。だから、それで話すことができない。
ハルは俺のことを信頼しているように見えるが、本当は誰にも話したくなかったのではないか。
「…まったく、しょうがねぇな……」
だるそうに顔を向け、カーテンの隙間から差し込まれた太陽の光を見つめる。
仕方がないことは分かっていたつもりだ…ハルが言いにくいことは電話で聞いたときに察することができた。
午後になって、1時ちょうどにハルがやってきた。俺の部屋に入って、ベッドの上に座り込んだ。
「バン、やっぱり来て良かったのかな…?」
「良かったんじゃね? まぁ、そんなことよりさぁ…」
冷蔵庫から缶ビールを2本取り出して、そのうちの1本を渡す。ハルは素直に受け取った。
ハルの隣に座って、プルトップを開けて飲む。何か言えないで居たことは分かっている。
「…母さんから聞いたんだけどさ、何か寝てないんだって?」
「うん…なんていうか、眠れない。まぁ、あの頃のことが忘れられないのかなぁ…」
ハルは俺を見て、顔を顰めながら飲んだ。酒を飲むことで気を紛らわせておけば大丈夫かもしれない。
あの頃のことが忘れられない…という言葉が引っかかって、気になった。
「なぁ、ハル…さっき言ってた、あの頃って…?」
「バンたちにはまだ言えないけどね、ちょっとしたトラウマ…かな」
「トラウマ? お前、そんなもの持ってたのかよォー」
ハルがトラウマを抱えていることを聞いて知ったのは、この時が初めてだった。
眠れてないのは、トラウマを抱えていたからなのか…それとも、何か辛い記憶を思い出したくなかったから?
「最近、ちゃんと寝てないのは…トラウマを抱えていたから?」
「うん…それもあるけど、トラウマより少し複雑なんだけどね」
「複雑って…お前、そんなことで何も言いたくなかったのかぁー?」
「バンに言っても分かるはずがないと思ってね…」
何も言いたくないのは察していた…でも、トラウマより少し複雑というのが気になる。
ハルが言いにくいのは、俺たちの存在を認めたくなかったからなのか…それとも言わないで、黙っておいた方がいい。
「バーカ、俺はそんなこと思ってねぇよ」
「えっ…?」
「ハル…お前、そんなことで悩みを抱えたままじゃ辛くなるぞ」
「でもォ…」
「俺を頼ってくれれば、話くらい聞いてやるよ…お互いに助け合うのが幼馴染だろォ?」
缶ビールを煽りながら飲んで、ハルを見て話す。目を丸くして驚いたハルは何も言えずに居た。
まぁ、俺が居てやらないと気が済まない…っていうか、そういうことがある時は話くらい聞いてやるつもりだ。
何度も寝てたわけじゃない…ハルのことは幼い頃からずっと見てきて、分かったようなもんだ。
「バン…」
「うん、やっぱり話さないと…俺も相談に乗れないしさぁー」
缶ビールを煽って飲んだ後、空になったのを確認したのと同時に立ち上がる。
フラフラしながら、ゴミ箱に捨てた。冷蔵庫から缶ビールを1本取り出して戻った。
ベッドの上に座り、隣に居るハルを見た。ハルは心配そうに俺を見て、溜息をつく。
「バン、飲み過ぎだよ」
「大丈夫だって、2本くらいで済めばいいだろ」
「それどころか、また飲むでしょ…」
「まぁ、しょうがねえよ。母さんがいないから、ゆっくり飲めるし…」
「いや、飲めるどころか…酔い潰れちゃうよ?」
「ほっといてくれよ、それが俺のやり方だしさー。さっきの続きだけど、何かあったのかぁ?」
2本目の缶ビールを飲みながら、ハルから話を聞く体勢に入った。
ハルは溜息をついた後、服の裾を捲って見せる。左腕に何か傷跡が入っていた。
「…この傷跡はどうした?」
「7年前のこと覚えてる?」
7年前といえば、中2の時にディテクター事件とミゼルによるゴーストジャック事件が起きた。
その事と関係しているのかは分からないが…ハルの話を聞いてみる価値がありそうだ。
「あぁ、覚えてる…それがどうかしたのかぁ?」
「ルークのこと覚えてる?」
ハルの幼馴染だったルーク・タイロンという青年…今はアメリカの大学に進学して頑張っているようだ。
中2の時、ハルを通じて仲良くなった友達で話しやすいところもあったから親しい方だ。
「…ルークが怪我したことは聞いた?」
…怪我?
そんな話は聞いてないはず…そういえば、話したことなかったのを思い出す。
7年前、ルークに何かあったのか知りたい。その話を聞くのも、ちょうど良い機会だ。
「聞いてない…そんな話なんてあるのかぁ?」
「だよね…。まぁ良いわ、今から話すことは…コウたちに言わないでほしいの」
「何でコウたちに言わなきゃダメなんだ?」
「どうしても話しづらいことだから…バンだけは分かってくれると思って、お願い!」
ハルは両手で缶ビールを握ったまま、顔を伏せた。コウたちに言わない方が良さそうだ。
何も言い難いのが辛くて、俺だけ話すことしかできない…そう思ったからなのか、話す時がついに来たようだと察する。