二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと忘却の彼方 ( No.20 )
日時: 2013/04/16 09:00
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

第2章 7年前の事件に隠された謎とは?

(バン視点)

ハルが何を言おうとしているか分からなかった。それは誰でも有り得ることだ…それは何かあったことを示唆している。

「ハル、7年前に何かあった?」
「…言ったら信じてもらえないかもしれない…。でも、バンは聞いてくれるよね?」

ブルブルと震わせながら、身体を揺らす。その背中を見て、右手でソッと撫でる。
そして、左手で缶ビールを持ったまま溜息をつく。ここで聞いてやらないこともない。

「ああ、聞くよ。お前の愚痴はさんざん聞いたから、今度は俺が力になるよ」
「バン、ありがとう…」
「うん、何かあったか話してみろ」

ハルを促して、話を聞かないといけない。それは誰でも有り得ることだった。
どうしようもなかったが、俺は誰にも言わないでおくことを決めた…それが俺にできることだ。

「うん、ルークは腹を刺されたの…」
「…は? 腹を刺されたって…どういうことだ?」

いきなり告げられた言葉を聞いて驚く。ようやく、ハルが言いたいことを察した。
ルークは腹を刺され、重傷を負ったらしい…そこで何が起きたのか。

「そこからは2人だけの秘密…でも、バンは私の話を聞いて思った事とか言ってみてくれる?」
「…分かった。話を聞いた後に感想を述べれば良い…それで良いのか?」
「もちろんよ、ただ…この事件はちょっとした謎が残っているの」

ちょっとした謎?
それが引っかかって、気になりだした。ハルが言おうとしているのは、7年前の事件。
いったい、そこで何が起きたか…想像以上に思ったよりも難しいのだろうか。

「謎?」
「まぁ、かいつまんで話すよ。実はね-------------------」

ハルはポツリポツリと話し始めた。
7年前に遡る、その出来事はルークとハルに関係する事件だった。
いつものように、学校から帰る途中でルークと一緒に歩きながら話していた時のこと。

「でも、事件が解決してよかったね。バンと再会できたのも、僕のおかげだろ?」
「それは…バンに会いたいって言うのもあったから…」

そう言い掛けたその時…ハルとルークに忍び寄る魔の手が迫ろうとしていた。
ふと、奇妙な気配を感じたルークは後ろを振り返りながら、何かに気付く。

「…?」
「どうしたの、ルーク?」
「いや、待て…ハル、何かが来るぞ」

ルークが気付いて、ハルもそれを見て振り返る。目の前には怪しげな男がいた。
その男は全身に黒の服を着ており、怪しげな格好を漂わせている。不審な様子に気付いたルークはハルを後ろにして守りに入った。

「いったい、何の用だ?」
「…クックックッ、俺のこと覚えちゃいねーだろうがよ」

顔全体につけていた黒いマスクをはずした男を見て、目を見張る。
ルークはその男が誰なのかも分かっていたので、見覚えがあった。

「もしかして、父さんの知り合いだった…」
「ああ、ラーク・ファインだ。しばらく見ないうちに大きくなったな」
「…なぜ、お前がここにいる? 父さんの目の前から行方をくらまして、何を企んでいるんだ?」

ルークがそう言った瞬間、ラークと呼ばれた男はあらかじめ用意してあった武器を取り出す。

「…!?」

ラークが出した武器はナイフだった…しかも鋭いが、死に至らしてしまうほどの威力を持っているとしか思えない。
ハルはすかさず、空手のポーズをしようとする…しかし、素早く翻弄させたのと同時にラークはハルの首に腕を巻きついて脅す。

「ハル!」

ルークは驚きを隠せない。いきなり行動を移して実行しようとした。
ハルはアメリカに来てから初めてできた友達だった…その幼馴染が死ぬ瞬間なんて見たくない。
そう思えたのか、ルークはラークを見て顰めながらも冷たく言い放つ。

「ハルに手を出すな…僕の大切な存在なんだ、幼馴染を失いたくない」

ルークの台詞を聞いて、目を見張ったハルは動揺を隠せない。その時、後ろから銃声が響いた。
その銃声によるダメージを食らったルークは左手で腹から伝う血を押さえながら、顔を顰める。

「ぐっ…僕を殺すつもりでいたのか…」
「そうさ…中2にしてはなかなか察せられるじゃねーか。ならば、この彼女を犠牲にしてもいいってのか?」

ラークの台詞を聞いて、必死で腹から出てくる血を押さえようとする。
…が、意識が途切れがちになりかけてしまう…その様子を見たハルはすぐに察したのか、動揺する。

「…っ、ルーク!」
「もう無駄だよ…こいつは生きる価値がないのさ」

ハルに向かって、冷たく言い放つラークの目はまるで残酷だ。その時、何かがラークの頭に当たった。
振り返ると、タイーザ・マックロンが立っていた。ルークとハルのもう1人の幼馴染である。

「タイーザ!?」
「ルークとハルに手ェ出すんじゃねぇ、俺が相手してやらぁ」

タイーザの目つきがケンカをする時のマジギレモードに突入している。
その様子を見かねたラークはすぐに振り切って、逃げ出していくが…それを見逃さなかった。
タイーザは咄嗟にその左腕を掴んで、背負い投げで叩きのめした。

「うらぁっ!」

その反転でラークは意識を失って、倒れこむ。ハルは動揺を隠せない。
タイーザはパンパンと手を振り払った後、そこに倒れているルークのところに駆け寄った。

「おい、ルーク!」

意識を失っていた…ふと、腹から大量に血が流れていることに気付き、タイーザは救急車を呼び出す。
ハルは顔を青ざめながら、うなだれるようにして俯く。こうなってしまったのは、自分のせいだと言い切るしかない。

「…ハル、大丈夫か?」

顔色が悪いぞ、というタイーザの気遣いを受け取ったハルは素直に頷く。
救急車と警察が駆けつけるまで、数分かかったが…意識が朦朧としているルークの傍にタイーザがつく。

「ハル、ルークのことは俺に任せて…お前は先に帰ってろ」

タイーザはルークの容態が心配だから、傍に居ると話す。傍に居るだけでも心強い。
…が、タイーザに逆らうわけにはいかず、ハルは素直に従うしかなかった。

「分かった…」

ラークは警察によって逮捕された。タイーザによれば、ルークの父親の知り合いだったらしい。
その男はルークの父親の同級生だったことが判明し、息子であるルークを殺そうとしたそうだ。
腹に重傷を負ったルークは1ヶ月の全治。そのため、回復できる見込みはあったというが…意識はすぐに取り戻した。


ハルから全てを聞き終えた瞬間、缶ビールを飲み干していた。相槌を打ちながら、聞いてみる。

「なるほどなぁ…だから、ルークが腹を怪我したってわけ?」
「そうだよ。でも、ラークって言う男の人が気になるの…」
「そいつがルークを殺そうとしたんだろ…あんなヤツなんて忘れちまえば良いよ」

そう言ってやると、ハルは顔を顰めて溜息をつく。右手で缶ビールを飲み干すと、俺の方に向いた。
顔を顰めているところから見ると、ルークのことで何かあったらしいことが伺えた。

「いや、忘れるどころか…。それには続きがあってね…」
「…何かあるのかぁ?」

ハルのしかめっ面が気になる…ルークに関することだろうと思ったが、そうではないらしい。

「ルークの様子がおかしくなり始めたのよね…」
「様子がおかしくなったって…何かあったのか?」

左腕についた傷跡を見て、すぐに納得する。ルークと揉めたわけではないが、事件後に何かあったようだ。
ハルは顔を伏せたまま、俺の右手を握った。ようやく、勇気を振り絞って言えた。

「うん、高校の時に一時帰郷したの。その時にルークと会ったんだけど…」
「それで?」
「それで…会った時は家に居て、酒を飲んでたの…」
「はぁ? ちょっと待て…家で酒を飲んでたって…どういうことだ?」

ハルに聞くと、ルークの母親によると高3になってすぐに飲み始めたとのこと。
未成年なのに、飲むのは止めてって説得したらしいが…日本に居たハルを呼び出して、事情を聞くことになった。
それで、ルークの部屋で2人だけの話をしたという。酒を飲むのは止めた方がいいと言っていたその時に殴られ、その弾みで傷跡がついたらしい。

「その傷跡が残ってたのは、ルークにやられたから?」
「うん…どうしようもなくって、何も言えなかった。バンなら聞いても分かってくれると思ったし」
「ふーん…まぁ、しょうがねぇよ。嫌なこと忘れちまえばいいって…」

ゴロンとベッドに横たわりながら、隣に座ったままで居るハルを見た。
ハルは相変わらず、顔を伏せていた…何も話す気になれないでいるのだろう。