二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと忘却の彼方 ( No.72 )
- 日時: 2013/04/23 23:23
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第7章の続き(ルーク視点)
自宅に到着した頃、僕は玄関のドアを開けて入った。そこで迎えてくれた双子の兄・リーフが待っていた。
リーフは心配そうに僕とケイティを見つめていたが、思わず苦笑しながら溜息をつく。
「お帰り。随分と遅かったじゃないか、何してたんだ?」
「リーザと酒飲んでて…って、それ言っていいのかな…」
「リーザって…確か、ケイティの友達だったリザルダ・ホールド?」
「うん、そうだけど…兄貴が何で知ってんの?」
リーフもリーザのことは知っていたらしく、高校時代にケイティを通じて仲良くなったらしい。
ケイティは僕を見て、2階に行こうと促す。リーフに挨拶してから、2階にある部屋に向かった。
部屋に入ったのと同時にフラフラしながら、ベッドに倒れ伏した。ケイティは溜息をついて、隣に座る。
「ルーク、飲み過ぎ!」
「リーザに誘われたんだから、しょうがないだろォ…」
「そりゃ、飲みすぎてしまうのもいかがなものかね…」
「なんだよ、ケイティ…僕のこと気遣ってくれてんのかぁー?」
ヒックと呻きながら、仰向けに横たわったままでケイティを見た。ケイティは思わず首を傾げた。
「気遣うどころか、あんたはいつもそうでしょうが…」
「…あ?」
「いつも寝ると起きないのがルークらしいよねー」
「なんだよォ…ケイティに起こされても、絶対に起きるよー」
「フッ…そうね。ルークは私の声だけ反応するくせに、リーフたちの声を聞いても起きないんだよねェ…」
図星を突かれ、ケイティに何も言えなかった。ケイティは幼馴染なのに、僕のことは何でも分かっている。
そういうところがあって、面倒見が良くてしっかりしている…彼女の明るさが僕の心を癒してくれた。
「うるせぇ…そんなのどうだって良いだろォ…」
「あら、よく言うじゃない…そういえば、リーザからお礼のものを渡してって言われた」
ケイティはガザガザとバッグの中を漁り出して、僕にあるものを渡す。
それは、僕の大好きな推理小説の本だった…どうして、彼女がその事を知っていたのか。
「これ、僕の好きな推理小説じゃないか…」
「リーザがね、ルークのこと気に入ったらしいのよ。だから、お礼としてくれるってさ」
「なんだよ、それ…まぁ、有り難く受け取っておこうかな」
推理小説はシャーロック・ホームズが好きでよく読んだものだ。幼い頃からずっと育んできたケイティとの絆を失いたくない。
幼馴染と言う存在があってこそ、大切なものができた…これはリーザのプレゼントだと思って、大切にしようと思った。
「フフッ…そうね、ルークらしくていいと思う」
ケイティの笑顔を見て、僕は本を持ったまま頷く。彼女にリーザのことが好きだということを言えないで居た。
だから、大切なものを守りたい…そう思ったのは、リーザとの出会いがあってこそ。
(傍にはリーザが居る…僕には、彼女を守る役目があるんだ)
ケイティには打ち明けられない思いを胸に込めて、言わないでおこうと思って考えた。
しかし、1年も続いた後に僕たちを襲う悲劇が待つことになろうとは想像していなかった。
1年後、大学3年生になった。僕は学校が終わって、リーザと一緒に酒を飲みながら過ごす日々を送っていた。
酒浸りというわけではないが、たまに誘われては遊ぶようになった。ケイティも事情を把握していたので、何も言わなかった。
いつものように、『Dark Crown』という居酒屋で酒を飲んだ。リーザとふざけあって話していた僕はかなり酔っ払っていた。
「リーザ…僕と付き合って、1年になるけどさぁー」
「うん、ルークは良いヤツだから大丈夫よ。でも、近くで通り魔事件が起きてるなんて…」
最近になって、通り魔による殺人事件が相次いでいた。噂では、赤い瞳をした男に刺されたということが話題になっている。
赤い瞳と言うのは、両目につけられていたものなのか…それとも、生まれついての目だということも考えられるのではないか。
「そんなこと気にしてんならさぁ…今日はお前の家まで送ってやるよ」
「いいの、ルーク?」
「いいって…送っていくだけだぞー?」
酒を煽りながら飲んでいた時、CCMが鳴った。眠そうにズボンのポケットから取り出して開く。
着信の差出人は、ケイティ・ライトだった。折り返しで電話して、耳に当てた。
「…もしもし?」
『あっ、ルーク…帰り、遅くなるようだったら…迎えに行ってもいいよ」
「ごめん、リーザの家まで送ることになった…後で迎えに来てもらっていいかな?」
『うん、いいよ…最近、通り魔が起きてるから気をつけて…』
「うん、分かってる…ケイティ、僕は大丈夫だから心配するな。じゃあ、また後でな」
電話を切り終えた後、リーザは不安そうに外を見つめていた。首にかけているペンダントを手に取りながら、気にしている様子だった。
「…リーザ、どうしたぁ?」
「ルーク、何か嫌な予感がするの…」
「バーカ…なーに言ってんだぁ、酒を飲んで帰ろうぜ」
冗談っぽく言ってやると、リーザはあまり乗り気ではない様子で不安そうな表情を醸し出していた。
仕方なく、グラスに残っていた酒を飲み干したのと同時にヒックと呻いてから立ち上がる。
会計で飲み代を払って、外に出る。真っ暗になっていたので、2人で手を繋いで帰ることにした。
「ったく、しょうがねぇな…送ってやるから、気をつけていくんだぞ」
「うん、分かってるよ…」
歩きながら帰ろうとした矢先、風のざわめぎが聞こえた。どこからか、強い風がヒューヒューと吹いている。
その時、ザッザッと何かが歩く音が…リーザは不安そうに僕を見てしがみつく。
「ルーク、何かが来る…」
「やべぇな…これ、本当に例のヤツが来る…その合図と言うわけか?」
その瞬間、何かがリーザの背中に刺さる音がした。振り返ると、リーザの背中にはナイフが突き刺さっていた。
目の前にスウッと影が現れ、顔を上げると…不気味に赤い瞳をした男が立っている。
「お前…リーザに何した!?」
そう言ったその時、男は無言でリーザの背中に刺さったナイフを抜いた。すると、ナイフを持って襲い掛かった。
男はリーザに向かって、何度も執拗に刺すように苛立った様子を見せる。
僕はそいつに向かって、ドンと押して胸倉を掴んだ。怒りを膨らませ、最高潮に達した。
「リーザになんて酷いことするんだ!?」
「ククク……君は絶望の淵に陥れてもらおうか…」
「何だとォ…!?」
赤い瞳をした男の両目から眩い光が放たれたのと同時に意識が途切れた。
意識が戻った頃には、病院のベッドに寝かされていた…目の前にケイティとリーフが心配そうに覗き込んでいる。
「ルーク、大丈夫?」
「……ぅん…、それより…リーザは?」
ケイティとリーフに問いかけると、無言で俯くように顔を伏せた。どうやら、その様子だと…嫌な予感がした。
リーフの口から告げられた言葉…それは僕を絶望に陥れようとしているように伺えた。
「リーザは…死んだ。あれだけ執拗にナイフで刺された痕が多かったからな」
「うっ…嘘だろ、そんな…リーザ、何で…」
ショックを受けて、動揺を隠せなかった。その時、ケイティがポケットからあるものを取り出す。
それはリーザが身につけていたペンダント…ケイティは無言で僕の首にかけてくれた。
「リーザの形見となってしまったようね…」
「…僕、どうすりゃ良いんだよ……」
「ルーク…」
リーザを亡くし、孤独に陥ってしまう。退院後、僕は再び学校に通い始めた。
授業が終わると、いつものように通っていた『Dark Crown』に入り浸って飲むようになった。
カウンター席に座って、1人で飲んでいると…心配そうに見つめた日本人のオーナーが気にかけて話す。
「ルーク、飲みすぎちゃいかんぞ。彼女を亡くしたくらいで落ち込まない方がいい…」
「うるせぇ…どうだっていいんだよ、そんなこと。リーザがいない酒場で飲んでもしょうがねぇだろ…」
夜遅くまで飲んで、かなり酔っ払った頃には深夜1時を回っていた。店を出ると、見覚えのある女性が腕を組んで待っていた。
「ケイ…ティ…?」
「…やっぱり、そこにいたのね」
「なんだよ…酒飲んで気が済めばいいじゃねーかぁ」
「ルーク、飲み過ぎ! とりあえず、今日は私んちに泊まって…」
ケイティは僕の様子を見て、気遣っているようだ。寂しげに溜息をついているのが気になった。