二次創作小説(紙ほか)
- Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと忘却の彼方 ( No.91 )
- 日時: 2013/05/16 21:16
- 名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)
第8章 ハルに忍び寄る影(前編)…その背景には、何が?
(ストーリーモード:ハル)
3日経ったある日、私はケイティと一緒に遊びに行った。その帰り、ルークの家まで向かう途中のことだった。
いつものように、歩きながら話し込んでいた矢先…目の前に現れた、謎の人物が立っていた。
「…誰?」
両目に赤い瞳をした男…その人物には、見覚えがあった。あの時、目の前でジョーイを殺した犯人だ。
その男を見て怯えだすケイティを見かねた後、溜息をつく。そもそも、何で目の前に居るのか。
「人見晴香…知られたくないなら、これで殺してやろうか?」
その台詞を聞いた瞬間、ビクッとなって怯えた。久しぶりのアメリカを満喫していたのに…。
ルークの家で待っているバンはヒロと話し込んでいるに違いない。しょうがないので、振り切って逃げた方が良さそうだ。
「ケイティ…」
「ん?」
「ここから逃げよう!」
その男の前を振り切り、逃げ切ろうとした瞬間…その男に追いかけられ、逃げ切るしかなくなった。
「くっ…」
ケイティに手出しはさせない…そのつもりで振り切るしかなく、全力で逃げ切ることに集中した。
バンには心配かけさせたくないのに…どうして、その事を知っているのかも分からない。
「どうする、ハル?」
「このまま無視して突っ切るよ!」
一か八か、危険な賭けだが…とりあえず、振り切っていくしかない!
覚悟して、ケイティの右手を握ったまま逃げ切った。ある程度、逃げ切った時点でルークの家に着いて、中に入った。
「ハァハァ…」
私とケイティは肩を上下に揺らしながら、息を整えていた。その時、ナオが私たちのところにやってきた。
「お帰りなさい、ハルさん。あっ…そちらの方は?」
ケイティの存在に気付いて、笑うナオ…そのことには気付いてないみたいだ。
とりあえず、ケイティを紹介することにして話すのは後だ。バンたちがどうしているのかも分からない。
「ナオ、紹介するね。この子はケイティよ、ルークの幼馴染なんだ」
「初めまして、ケイティ・ライトよ。よろしくね、ナオ!」
ケイティは人懐っこく話しかけてくれたので、ナオは緊張せずにリラックスして頷いた。
「小野奈緒美です。私のことはナオって呼んで下さいね」
「うん、ナオ…ルークはいるかしら?」
「ルークさんなら、さっき出かけていきましたよ」
ナオの言葉を聞いて驚くケイティ…帰りに立ち寄るって伝えてあったはずなのに、どこに行ったのやら…。
「ルークのバカ…あいつ、いつも居ないこと多いんだよね。まぁ、大体飲みに行ってんでしょうよ」
「そうなんですか…」
「ナオ、バンは?」
「あぁ…バンさんなら、上の階の部屋でヒロと一緒に酒飲んでるけど…」
ナオの台詞を聞いて、思わず苦笑する。仕方がないので、一気に階段を上っていく。
階段を上り、4人部屋のドアを開けると…空きの缶ビールが7本くらい転がっていた。
その視線を追うと…バンとヒロは仰向けに倒れ伏したまま、気持ち良さそうに眠っている。
「…こんなになるまで飲んで…」
半ば呆れている感じで呆然と見つめるしかなかった。こんなところで寝ていたら、風邪を引きそうだ。
溜息をつき、気持ち良さそうに眠っていたバンのところに歩み寄る。顔を覗くと、幸せそうに夢を見ているような感じで寝息を立てていた。
「しょうがないなぁ…」
苦笑しつつも、バンの寝顔には参ってしまう。ふと物思いに耽っていたことを思い出し、肩を揺り起こす。
「バン起きて、こんなところで寝てたら…風邪を引くって」
肩を揺り起こしても反応なし…思いっきり、爆睡してるみたいだ。眠そうに身じろいだだけで寝返りを打つ。
再び、スースーと寝息を立てて眠り込んでしまった。もう少し強く揺り起こして、ベッドで寝てもらわないといけない。
「ったく…しょうがないなぁ、もう少し強く起こすか」
2度目の溜息をつき、バンの視点にあわせるようにしゃがみ込んで起こした。
「ねぇ、バンってば…起きてよ、ここで寝てたらダメだって!」
「…んぅ…」
眠そうに少し目を開け、私に向けたかと思えば…なぜか寝惚けている。
寝惚け気味に上半身を起こし、だるそうに大きく欠伸してから目を擦った。
「んー…あ、お帰り…」
「うん、ただいま…っていうか、こんなところで寝たらダメでしょ!」
「酒飲んでたんだから、しょうがないじゃんかぁ…ルークのヤツ、さっき出かけてったみたいだぜ」
「うん、ナオから聞いた。何で酒飲んでたのよ、ストレス解消に?」
「それもあるけど…ヒロが急に飲みたいって言い出してさぁ、それで話しながら飲んでるうちに寝ちまった」
バンの話を聞いた後、ナオの方に振り返って気になることを思い出す。
そういえば、ルークはどっかに出かけていったとか…もしかすると、酒場に行ったんじゃないのか。
「…そう、なら良いけどさ…」
スッと立ち上がり、部屋を出ようとしたその時…ギュッと掴まれた音がした。
振り返ると、トロンと目が据わりながら見つめていたバンの姿…ヒック、と呻きながらも私を見て話しかける。
「ハル、様子がおかしいぞォ…」
しまった、何たること…バンには分かってしまうのが嫌だった、それを思い出すのが遅かった。
バンは私の右手を掴んだまま、手を離さない。何か気になったことでもあったのか、聞きたそうな顔をしている。
その様子を見かねたナオとケイティは顔を見合わせながら、思わず苦笑した。
「とりあえず、ヒロのことは任せて下さい。この部屋から連れ出しますんで…」
「えっ…ちょっと、ナオ!?」
ナオはケイティと一緒に酔い潰れたヒロを介抱して、1階に連れ出した。
バタンとドアが閉まったのを確認すると、バンは私の右手を握ったまま、ベッドに連れていった。
バンの意図が分からず、首を傾げていると…ベッドに座ったのと同時にグイッと引っ張られた。
「ハル…さっきから顔色が悪いぞ、何かあったのかぁ?」
トロンと目が据わっていた眼差しは優しそうな感じになっていた。ケイティと遊んだ帰りのことを思い出す。
赤い瞳の男に出くわした…なんて言ったら、何か言われそうな予感がする。
そう思うと、何か怖くて…今にも泣けてきそうで怯えてしまうのも頷けた。
「なぁ、怒らないから…話せよ、俺で良ければ聞いてやるよ」
「バン…っ…」
ウルッと涙が出てきて、バンの胸に飛びついた。私を受け止めてくれたバンは目を丸くして驚く。
いったい、何があったのか…それが分からなかったバンは黙りこくったまま、私の背中を抱きしめた後に優しく撫でる。
「ハル、何も言わなくていい…そこまで無理しなくていいからな?」
バンの気遣いは嬉しかった…でも、やっぱり言わないと気が済まない。
幼馴染だから、話すしかないって言うのもあるんだろうけど…絶対に言わなきゃダメだ。
「ねぇ、バン…」
「なんだぁ、無理して言わなくていいって…」
「あのさぁ…バン、私の話を聞いてくれるよね…?」
バンは寝転がったまま、私の背中を抱きしめながら撫でていたが…ようやく、話す気になったようだと悟った。
「あぁ、いいよ。言ってみな…」
「うん…赤い瞳の男に会った…って言っても信じてくれるよね?」
トロンとした目つきをしたバンは眠そうに私を見つめたまま、コクリと頷く。
どうやら、信じてくれるみたいで…話すことができて良かったし、バンなら絶対に分かってくれると思っていた。
「信じるけどさぁ…そいつに会ったのは、本当なのかぁ?」
「本当だってば、あいつには借りがあるんだよ…絶対に許せないんだから!」
その台詞を聞いたバンは何かを思い出し、ハルの過去に関する出来事が関係しているのだと気付く。
過去の一部に幼馴染のジョーイを失ったという出来事があった。その時に目の前で殺されてしまったという話を聞いたような記憶が残っていた。
「そういえば、前に言ってなかったっけ?」
「えっ、何を…」
「ジョーイとか言う幼馴染がいたよな、そいつがその男に殺されてしまったって…」
「そう、それよ。だから、あいつには借りがある…っていうか、その時に蹴りで気絶させてやるわ!」
勢い込みながら、バンに突っかかりつつも顔を顰めた。バンには私の気持ちが分かるはずがない。
ジョーイの仇を取りたいという気持ちもあったし、その時に出くわしたら…ぶん殴ってやるというつもりでいたのだ。