二次創作小説(紙ほか)

Re: 【ダンボール戦機W】バン×ハルと忘却の彼方 ( No.93 )
日時: 2013/05/17 20:13
名前: レッド ◆mAzj/Mydf. (ID: hSo8a19A)

第8章の続き(ハル視点)

バンは肩を竦めながら、眠そうに欠伸する。仕方がないと思っているのか、私の肩を掴んで抱きしめた。
ジョーイを失ったという出来事があったので、辛いと思わせたくないのだろう。
その気持ちは分かりきっていたようなものだ…孤独を感じつつ、気を紛らわせることで不安を解消することができた。

「お前なぁ、ジョーイのこと…今も好きだったって思ってんだろ?」
「うん…ジョーイはいつだって、優しくしてくれたよ。なのに、目の前から消えていくのが信じられなくて…」

ジョーイとの思い出が少しずつ蘇る。学校でよく喋りながら、ふざけ合って遊んでいたこともあった。
幼馴染であれ、ジョーイは私を気遣って英語を教えてくれたりもした…もちろん、リーザもその1人だった。
リーザは中学に入ってから、仲良くなった友達の1人でよく喋ることが多かったのを思い出してしまう。

「リーザもジョーイも、目の前から消えてしまうんだよ…っていうか、そんなこと言ってもしょうがないけどさ」
「ハル、俺は別に気にしてないよ。お前がどう思ったか聞いてるけど、2人を失ったのが辛くて話せないことがあったんだろ?」

バンは私を抱きしめながら、背中を擦って話しかけてくれる。幼馴染だからこそ分かる、寂しさによる孤独。
ジョーイとリーザを失ったことで、目の前から誰かが居なくなるのを恐れていたから…そのせいでバンたちに話せずにいたのだということを-------

「うん…」
「やっぱり、そう思ってたぜ…でもな、天国に居るからきっと見守ってるはずさ」
「…氷介兄さんも天国だもんね…っていうか、本当に嫌だっ!!」

バンの服の裾を掴んで、3人に対する思いを込めて号泣する。その様子を見て、優しく受け止めながら抱きしめた。
ルークとリーフ、ケイティが居るから、辛いと思ったことはなかった…なのに、3人が居ない寂しさを受け止められずにいたのだ。

「ハル…」
「バンッ…目の前から居なくならないでよぉ…」

ギュッと力を込めて、バンの服の裾を掴んで嗚咽を上げながら言う。そんな私の様子を見て、思わず苦笑した。

「何言ってんの、お前…俺はここにいるから、大丈夫だぞ」
「バン…私、目の前から消えてしまうのが嫌なんだよぉ…」

ヒックヒック、と嗚咽を上げながら号泣している私の背中を擦りながら、黙って聞いていた。
いつも酔っ払って、たまに私の話を聞いてくれるバン…そんな彼を見ていて、酒を飲むのはいいって思っていても飲みすぎは良くない。

(バン…いつだって、私を助けてくれた…時には見守ってくれたりもしたっけ…)

バンは酒を飲んで帰ることが多く、飲み会に連れ回されることもあった。
時には、私がその場所まで迎えに行ってあげたり…そんなこんなでバンに付き合ったりもした。
死んだ兄の氷介の代わりとして、私の様子を見守ってくれる兄貴的存在だった…そんな彼のことが大好きになっていったのは覚えている。

「バーカ、そんなこと思ってんならさぁ…俺が傍に居るから、心配しなくても大丈夫だって」
「バン…私のこと…今でも心配してくれてんの?」
「心配してるよ、お前がいきなり無茶なことしでかしそうだからさ。俺だって、ハルのことを気にしてんだぞォ〜」

いきなり無茶なことをしでかすって…確かに当たってる、しっかり私のことを見抜いている。
バンは私のことを心配して気遣ってくれて、探してくれたりもしたっけ…それで怒られたこともあったし、懐かしく感じた。

「俺がどんなに心配してんのか、分かってねぇだろ…っていうかさ、お前は本当に無茶なことしでかすんだからなぁ」
「ごめんなさい…っていうか、バンに怒られたくなかったのは確かだけどね」
「何でそうなるんだよ。俺は気にしたことねぇし、ルークたちにも迷惑かけたことあったか?」
「…っ、ルークたちには…うん、そんなこともあったりするかな」

あはは、と笑いながら流そうとした矢先…バンは私の頭をパシッと優しく叩いた。
本当に無茶なことをしでかしたことがあるのか…というようなしぐさを見せていた。

「お前、ホントに無茶なことしでかしたの…アメリカで?」
「うん、ちょっとね…日本に帰る前だったから、ルークたちには迷惑かけたかなーって…」

アメリカで何をしでかしたのかは…想像にお任せしてもらおうかなって思ったりする。
まぁ、バンたちが居たから良かったと思っている…辛くなった時はバンに愚痴を聞いてもらっていたから、彼と話すのが唯一の楽しみだ。

「バカ、そんなこと言ってんならさぁ…ルークたちも気付いてんじゃね?」
「でも、あんまり話すことってないんだよねー。日本語より英語で話すことが多かったからさ」
「そうなんだ…まぁ、日本語で話すことは少ないけどな…そこはしょうがねぇよ」

バンは苦笑しながら、私の腕を掴んで手繰り寄せる。いきなり、そんなことして良いのか。
やっぱり幼馴染として、話すことがたくさんあった…でも、赤い瞳の男が気になる。

「赤い瞳の男ねぇ…そいつには会ったことねぇが、気をつけた方が良いな」
「そうだね、やっぱり気をつけないとまずいか…」

確かに気をつけなければいけない…逆に怪しげな視線を注がれたりしたら、まずいことになる。
気を引き締めていかないとヤバいことになりそうだ…バンはいつも傍に居てくれる、そういうところが好きだった。

「バン…」
「んー?」
「今日は話を聞いてくれてありがと…」
「バーカ、いつでも聞いてやるって…これで気が済んだろォ?」

バンは私の頭を撫でながら、溜息をつく。やっぱり、傍に居てやった方が良さそうだ。
しょうがないわけではなかったが、そろそろ寝る時間なので…電気を消して就寝した。


翌日、ルーク宅を出て散歩に出かけた。公園を散策しながら、久しぶりに歩いた。
バンはヒロと一緒にジェシカのところに行くと言っていた…せっかくだから、ナオ&ケイティと一緒に行くことになった。

「ハルさん、何か良い天気ですね」
「そうね…まぁ、私たちも気を緩めないようにしなきゃね!」
「フフッ、よく言いますね…っていうか、ハルさん…」

ナオは何か思い出したのか、後ろを振り返った。何かが居そうな予感がするのは気のせいか?
訝しげに考え込んでから、ナオは私を見て思い出しながら呟いてみた。

「もしかして、昨日…バンさんと話しこんでたのは赤い瞳のことですか?」
「えっ、何で知ってんの!?」
「ヒロが目を覚ましだして、バンさんのところに戻るんだーって言ってて…。その時に部屋から声が漏れてて、少し覗き込んだら…」

その時に部屋を覗いた時に話を聞いて知ったのだという…両目に赤い瞳をした男の存在すら知らなかった。
ナオは溜息をつき、私を見やりながら苦笑する。どうして、あの時…話してくれなかったのか。
その事について、疑問を抱いたのも頷けるわけで…どうも、気になることがあって考え込んでしまう。

「ハルさん…どうして、私たちに話してくれなかったんですか?」
「ごめん、バンだけ話すつもりでいたけど…ナオたちには、どうしても言えなかったの」

バンには話すつもりでいた…なのに、ナオたちに聞かれてしまうとは思わなかった。
これ以上、話を聞かれてしまうのもまずいか…と思っていたその時、バレてしまうのも時間の問題だ。
気を取り直して、ナオと一緒に遊ぶ時間を過ごしながら楽しむことに集中した。

(よーし、楽しむか!)

時間が経ち、夜になって帰り道を歩いていた…その時、ナオが何かを感じて振り返った。

「…!」

ナオが異変を察知した頃には、道の向こうから不気味な音が聞こえていた。
こんな時間に不気味な音が出るとは思えない…いや、それは有り得ない。

「まさか…」
「ハルさん、どうしたんですか?」
「ナオ、気を引き締めて。どこから来るか分からない…っ!?」

その時、頭に何か殴られたような音が聞こえて触ると…血が伝っていた。
後ろを振り返ると…見覚えのある赤い瞳の男が立っていた。左手で頭から出てくる血を押さえ込んだ。

「ハルさん…頭から血がっ!」

ナオが怯えながら指差した瞬間、赤い瞳の男はズボンのポケットから何かを出した。
ケイティが気付いて、ナオを狙っているのだということに時間がかからなかった。
…が、その時はもう既に遅し…ナオの身体にナイフを突き刺していたのだ。

「なっ…ぐ…うっ…」

腹から噴出してくる大量の血を見た私はビクッと怯えながら、顔を青ざめて叫んだ。

「ぎゃあああああ!」

そう言った瞬間、意識を失って倒れこんだ。しかし、この後…意外な展開になってしまうとは思っていなかった。