二次創作小説(紙ほか)

Re: ■… 鎖少女 …■ (学園アリス) ( No.11 )
日時: 2013/04/21 20:16
名前: 暁 ◆veyMdjA2J6 (ID: 5NRE2t7J)

■ 第4話 お友達


『本当は…この世にはいない人間らしいんです』

「それって…どう言う事なん?だ、だってアンタ…今、生きて…」

「はい、今は生きてます。けど…一度、死んだみたいです」


にっこり笑って言う鎖少女。でも、何処か泣きそうな顔だった。

蜜柑は訳が分からないと言った表情で鎖少女を見る。


「私もよくは分からないんです。…ただ、聞いた話で」

「う、うん」


「私は元は“ウラニンム”と言うのをこなしていたそうです。でも、その最中に怪我を負い死んでしまって…」

「え……?」

「それで…『蘇生のアリス』という凄い力を持ったお方が私を生き返らせてくれたそうです。でも私はその影響で、記憶を失ったそうです」


あまりにも話が唐突過ぎて思わず茫然とする蜜柑。

鎖少女は、手足についたその鎖を見たあとに蜜柑を見て、微笑んだ。


「そして…他人に合流させるわけにもいかず、私はこんなところにいるそうです」

「じゃ、じゃあもしかして…アンタ、アリスもってんの?」

「ありす…とは、何ですか?凄いものなんですか?」

「し、知らんのかいな…」


じゃあさっきの石についての説明はなんだったのだろうか。

明らかにアリスを知っている口調だった。


「さっきの石についての説明は?アリス知ってそうやったけど」

「この説明は私が最初にしてもらったもので。念の為覚えてたんです」

「そ、それも凄いなあ…」


はああと蜜柑は溜息をつく。何だか謎がいっぱいだ。

その時鎖少女の表情がいっぺんした。真剣な表情で蜜柑を見る。


「佐倉さん…今日はこの辺で、一度帰った方がいいです」

「え…?」

「ちょっと私…面会の時間ですから」


泣き出しそうな表情で少女は言った。でも有無を言わせない口調。

蜜柑はその勢いにおされてコクンと頷いた。

石をギュッと握りしめながら、少女の方を見た。


「明日も来るなっ!」

「…え?」


キョトンとした顔の鎖少女に蜜柑はにっこり笑った。


「ウチらもう友達やん?絶対、明日も会いに来るなっ」

「…はい、待ってます。あ、あと」

「?」

「私のこともこの部屋のことも、その石のことも…他人には言っちゃダメですよ?」


指を一本立てて、口元に当てる。しーっと悪戯っぽく笑う。

蜜柑は笑ってぶんぶんと首を縦にふった。少女も笑う。


「じゃあ…な!“くーちゃんっ”!」

「くーちゃん…?」


“く”さり少女。蜜柑がこの短時間で考え続けた名前だった。

実際、蜜柑は一度も彼女を「鎖少女」とは呼んでいない。

そう思うと嬉しくって、鎖少女は微笑んだ。


「うん、またねっ!…蜜柑ちゃんっ!」


一番の笑顔で、鎖少女は蜜柑を見送った。


一気に静まり返る室内。鎖少女は笑顔を打ち消す。

ガチャリと扉が開いた。石をなくした張本人だ。遠いし、面倒だろう。


「やぁ、鎖少女。…少々手違いがあって石をなくしてしまってね。いつもの時間より遅れたんだ」

「いえ、大丈夫です。…久遠寺さん」


小柄な体格。子供にしか見えないが、実は大人。

久遠寺…又は初校長と呼ばれている人物。

自分をここに閉じ込めている張本人であり、身寄りのない自分を守ってくれている人物でもある。

でも、嫌いだ。なぜかわからないけど、嫌いなのだ。


「あの…ひとつだけ、聞いていいですか?」

「…何かな?」

「“ありす”って何ですか?私が持っているあのちからも…“ありす”なんですか?」

「…どこでアリスなんて言葉を聞いたんだ?」

「あ…」


そうだ。思わず聞いてしまったが蜜柑のことは言わないほうがいい。

言ってしまえば彼女は罰則をもくらうかもしれない。それだけですめばいいと言えるくらいなのだが。


「…まぁいい。君はアリスじゃないよ。それに君は…何も、知らなくていいんだ」


優しく頭を撫でられる。

はい。と小さな声で返事をしてから、目を閉じた。


(私は…何なんだろう…)