二次創作小説(紙ほか)

Re: ■… 鎖少女 …■ (学園アリス)  ( No.24 )
日時: 2013/04/28 22:52
名前: 暁 ◆veyMdjA2J6 (ID: RXnnEm2G)
プロフ: コメントは一番最後に返してます。有難うございます!

■ 第13話 記憶の欠片


「…………」


デューンは怒りに頭が狂いそうなのを、必死にこらえていた。

ダンッ!と思いっきり壁を殴る。その音は、よく響いた。


「…おーおー。荒れているなぁ、デューン」

「……クロノか」


「——何があった」


一瞬にして真剣な表情になったクロノ。

デューンは唇を噛み締めて、頭を抱える。只事ではないと、クロノは悟った。


「…アイツが、」

「……」

「……初校長が、同じことをしようとしているんだ」

「?」


眉をひそめるクロノ。デューンは息をはいた。


「奴が記憶を消して欲しい奴がいると言ってきてな…」

「ん」

「……誰だと思う?」

「…大きく行動に出たのは皇我崎だしな…皇我崎か?」

「俺もそう思っていた」


深呼吸してから、デューンは改めてクロノを見る。


「奴が名をあげたのは——」


ザァッと風が吹く。デューンの口がその名を刻んだ。


クロノの瞳が見開かれる。





「そいつは…1番、消してやってはいけない奴だろう……!?」




「……ああ。それに、あいつはなんて言ったと思う?」


デューンは嘲笑うかのような笑みを浮かべていた。

クロノは落ち着きを取り戻したながら、デューンを見た。


「…日向棗も、裏任務で何かあったことにすればいいと。裏任務で失態し、記憶を失ったことでもすればいい…と」

「…そんな事を」

「日向棗にとって、帝神姫花は希望の様な存在だ。…今もな。そんな大切な存在の記憶をあっさりと消してしまえとアイツは言うんだ」

「……デューン」


「日向棗がどれだけの間、帝神姫花を待ち続けていると思ってるんだ…!!」


見たくなくなるような、棗の葛藤の日々。

晴れの日も、雨の日も、雪の日も、嵐の日も。

周囲が何を言おうとも、棗は待ち続けたのだ。


そこまで待ち続けた存在の少女の記憶を、初校長は簡単に消せという。


それも…『これ以上詮索されると、いい事がないから』らしい。

たったそれだけの、自己中心的にも程のある理由だけで、大切な記憶を消せというのだ。


『それとも————』


できなかった時の、条件。それもデューンは嫌だった。

生徒思いのデューンだからこそ。






『それとも、佐倉蜜柑や今井悠、冥利空の記憶をリスクを伴いながらも消し…更には、妙な詮索をしている奴らに、罰則、又はこちらも危険を伴う記憶消去を行うか?』


どちらにしろ、最悪な結末になりそうで。


日向棗の記憶を消すも、鎖少女について色々詮索をしている生徒に手を施すも。

どちらも、嫌なのだ。









(どうする……!)


デューンとクロノは、静かに、そして必死に思考を巡らせていた。








「——ん、…」


…どうやら自分は眠っていたようだ。

その割に何か夢を見ていたきがする。…なんだったろうか?

身じろぎすれば鎖が音を立てる。


「……あ、思い出した」



夢で、赤い瞳の男の子がいたのだ。それと、自分とよく似た女の子。

それに、金髪の男の子。楽しそうに笑っていた。

自分とよく似たその子も、凄く楽しそうに笑っていて。


「最近こんな夢ばかり…」


けど、夢の中では…なぜだか、幸せだった。


その時。ズキン、と、鎖少女を激しい頭痛が襲う。


「……っっっ!!!」




————姫花。…無茶するなよ。


————それは棗でしょ。無理しないでね?


————…バーカ


「な、なにこれ…」


頭に流れる映像。それは全て、夢で見た女の子と男の子。

幸せそうに、笑う、女の子。そう、幸せそうに、笑う、



(——わたし)


ふいにそんな考えが脳裏をかすめて、鎖少女は驚く。


(な、何考えてるの私…私なわけ……ない、のに…?)


本当にそうか? これは自分が失った『記憶』なのでは?


(そうだと…いいな……)


なんて思った自分に、また鎖少女は驚いた。

でも、とても心地がいい。この少年といる少女は、本当に幸せそうで。























「なつめ…」



人知れず呟いたその名を、彼女は知らない。





 ポンタさん
棗でした〜;;ドキドキしていただけたのなら幸いです!
コメントありがとうございます♪