二次創作小説(紙ほか)

Re: ■… 鎖少女 …■ (学園アリス)  ( No.25 )
日時: 2013/04/29 22:22
名前: 暁 ◆veyMdjA2J6 (ID: qManwW4a)

■ 第14話 覚悟


「棗君、…デューン先生が呼んでるよ」

「…………?」


疑問に思いながら、棗は廊下に出た。そこにはデューンが本当に居た。

場所を変えよう。と言われて、棗は外に出る。

誰もいない静かな場所で、デューンはゆっくりと口を開いた。


「君は…まだ、帝神姫花を探しているのか?」

「————!」


棗の瞳が見開かれた。デューンは何処か遠くを見つめている。

デューンを睨みつけながら、棗はああ。と返事した。


「……そうか。それは…これからも続けていくつもりか?」

「…何が言いたい」

「質問に答えるんだ。これからも彼女を探すのか?」

「……当然だ」


——帝神姫花は死んだ。だとしたら、だ。

何故遺体にも会わせてくれない? 何故葬儀のようなものも行われない?

せめてでも、花を贈るぐらいはあるだろう?

だから棗は、姫花が生きていると信じていた。


「だったら…君に大切な話がある」

「……なんだ」

「君がこれ以上彼女を探すようなら…君の、彼女についての記憶を消せと…ある人から言われた」

「なっ……!?」

「だから…今から、君が覚えている彼女についての記憶を…消す」


デューンは静かに、だけど有無を言わせない口調で言った。

棗はさらにキツくデューンを睨めつける。


————これは、賭けだ。実際は記憶を消そうとは思っていない。

ただそれは…棗の覚悟次第で、変わる。









「……消せるもんなら消してみやがれ」

「——!?」

「だが…こっちも本気でテメェに対抗する。それに、テメェにそんな事を指示したやつにもだ」

「…………」


「俺がこれ以上姫花について詮索して困る、という事は…何かあるんだろ?」



(…そう言ってくれると、信じてよかった)


低い声音で棗が言い切る。デューンは何処か安堵した表情のまま、何も答えなかった。

…だけど、それが答えだった。


「一つだけ教えろ」

「…なんだ」

「……姫花は、生きているのか」


真っ直ぐにデューンを見つめる棗。デューンもしっかり見返した。

数秒間の沈黙。だけど、棗にとっては数十分にも感じられた。





「——自分で確かめてこい」

「……は?」


途端、デューンに石を握らされる。驚いて棗は目を見開く。

次の瞬間、棗はテレポート体制に入った。景色が霞んでいく。


「10分間だけだ」

「なっ……?」

「10分経てば結界に押し戻される。それまでに、しっかり確かめてこい」


デューンのテレポートのアリスの力を込めに込めたアリスストーン。

だが、向こうの部屋にある結界の力を考えれば最高10分間。

きっと棗があの部屋にいられるのは、それだけだ。

それまでに——一度だけでも、再会して欲しい。


「いいな!10分間だけだ!」

「聞こえねぇ——」


「——彼女と、会ってこい!」




————その声だけは、やけにクリアに聞こえた。

次の瞬間棗の視界は一気に違う場所を映す。


「……ってぇ」


どうやら頭を打ったようだ。棗は鈍痛に顔を歪める。


その時。ジャラリと言う妙な音が、聞こえて。

ゆっくりとその方向に視線を向ければ、人がいた。


「……だれ、ですか?」


鎖につながれている、少女。彼女は泣いていた。

棗の瞳が見開かれる。


その優しい声に。

その金色の柔らかい髪に。

その吸い込まれそうになる青い瞳に。


その、面影に。


(ま…、さか……)

『————彼女と、会ってこい!』


話の流れがよく分からなかった先ほどの会話。

妙に姫花のことについて聞いてきたデューン。

何故自分は姫花のことについて記憶を消されなければならなかったのか。

全ての疑問が、一気に解消されていく。


(ま、さか…こいつ——)


この目の前にいるのが——自分の探していた、彼女なら。

涙を流すその横顔にも、随分見覚えがあって。


「まさか…お前……」

「え……」



「——姫花…、なのか?」


残り時間、あと——8分。