二次創作小説(紙ほか)

Re: 【inzm】想像フォレスト ( No.19 )
日時: 2013/09/11 05:48
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: J69v0mbP)

Page5  《世界》





 本を読んでいると、ふと、あることを思う。
             もの
 私って……もしかして、無機物に安心してる?

 べつに、悪いことではないと思う。私は、無機物でないと、石にしてしまう。お母さんがそうだったんだもん。むすめの私もそのはずだ。
 でも、無機物は違う。私の視線を受け入れてくれる。石にならないでくれる。

 モノが石になってしまうのは、しょうじき、ストレス……というか、精神に負担をかける。

 私が見つめて石になってしまったモノが、もとにもどったことはない。命を吹き返したことはない。
 私が命を奪ってしまったという、事実だけが残る。
 それは、私の心に、重たいモノをつくり、それがどんどんたまっていっていた。むかしは。

 いまは、もう駄目だってことが分かってるから、無機物しか見ていない。

 きょうは、めずらしく《鳥》という生き物を、殺してしまったけれど——……。


「あ……。」


 これ、〈外〉の話しだ。

 さっき考えていたことなんてすっかり忘れて、私は本が石化してしまいそうなほど、じっと見つめた。

 私にとって、じつは〈外〉はあこがれ。
 ほんとうは、物語の中でしか知らないけれど、読んでいると、どうしても〈外〉にあこがれてしまう。

 私は、それをときどき、そんなことをしていいんだろうかと、自問する。

 人間が怖い私が、ほんとうに〈外〉にあこがれていいの?
 人間が怖がる私が、ほんとうに〈外〉にあこがれていいの?
 命を奪うだけの私が、ほんとうに〈外〉にあこがれていいの?

 けっきょく、答えはいつも出ない。

 だけど。


「あこがれることくらい……。」
(神さま。許しては、くれませんか?)


 ぶわっ


 私の問いに答えるように、窓から風が吹きこんできた。
 思わず、目をつぶってしまう。

〈外〉から吹いてくる風は、なんだかあったかかった。なんでなんだろう。

 そういえば、〈外〉には〈季節〉っていうものがあるんだっけ。それによって、風や温度も変わってくるんだよね。

 目を開けると、本に白い花が乗っていた。私が見つめても、石化しない。

 これも、無機物なんだ。

 花を見つめながら、ふと思う。


(〈外〉は、とっぴなことがいっぱいなのかな。)


 とっぴな世界。

 そんな世界は、私のもとにやってきては、くれないのかな。