二次創作小説(紙ほか)

Re: 【inzm】想像フォレスト ( No.2 )
日時: 2013/05/30 06:52
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: sbAJLKKg)

プロローグ  《家》   β





 数分間そうしてから、少女は本を開いた。乾いた髪の音がして、文字の羅列が現れる。


『石になってしまう……。』


 母の、苦しみを帯びた声と、悲しげなルビーがよみがえる。


「こわいね、お母さん。」


 本のページを見下ろしながら、少女はつぶやいた。が、セリフの内容に反して、声は明るかった。
 きっと、これまで思っていたよりも、こわくないことが分かったからだろう。

 ぱたんと本を閉じ、本棚に戻した。


 かさり


 外で、小さく葉がこすれる音がした。少女ははっとして、走って窓に駆け寄り、身をのり出して外を見た。

 ——いた!

 木々のすき間に、紺色っぽい色が見える。
 来てくれたんだ。

 少女は慌てて台所に駆けこみ、ハーブティを淹れる。

 彼が来るのは、もうずっと前から分かっていたはずなのに。準備してないなんて、ばかだな……。

 ハーブティを淹れながら、ふとそんなふうに思う。
 そう。べつに、サプライズでもなんでもない。決まったときに訪れるんだから。
 だから、ふつうなら、格別嬉しくもないはず。もう、一年もずっと、そうしているんだから。
 でも、ふしぎと毎回、嬉しかった。

 ハーブティを淹れ終わると当時に、扉がとんとん、と音をたてた。


「はーい!」


 少女は元気よく返事をし、台所を出た。