二次創作小説(紙ほか)

Re: 【inzm】想像フォレスト ( No.25 )
日時: 2013/09/11 06:04
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: J69v0mbP)

Page7  《カップ》





「なあんて、無理だよね……。」


 久しぶりに聞いた自分の声は、お母さんのいた頃とはちっとも変わっていなくて。

 やっぱり私は、ふつうじゃない……。

 そう思うと、不意に胸が苦しくなった。

 ふしぎ。私もふつうの——ニンゲンでありたいって、そう願ってるの? 変わり、うつろいゆく存在でありたいって、そう思ってるの?
 私みたいな——本物のバケモノが。

 なに考えちゃってるのかな。

 窓辺に椅子を置き、〈外〉をながめる。

〈外〉の風景は、いつ見ても心がほっとする。いしげる緑、ぽつぽつと小さく、緑をいろどる白や黄色の花々。

〈外〉に出られない私が、唯一〈外〉にふれられる瞬間。大好きだけど、苦しくて、つらい世界。

 そして、私のあこがれになってしまった世界。

 どうしても行ってみたい——そんな、夢のような世界。

 でも、そこにドウブツやニンゲンがいたらどうしよう。
 ましてや、そのドウブツたちと、目が合ってしまったら……?

 そう考えると、とてもじゃないけど、〈外〉に出ようなんて思えない。


「あ、かぎかかってる。」


 びくんっと肩が跳ねる。

 き、聞こえた。いま、なにかが。
 鳥のさえずりでも、木々の葉がこすれる音でもない。

 これは、そう。これは……!


(いまのって、まさか……!?)


 動揺してしまい、私はあわてて立ち上がる。

 がちゃんっと騒がしい音をたてて、カップの中に残っていたハーブティが、机をぬらす。

 いまのは間違いなく、ニンゲンが口から発する話し声。
 話し声が聞こえたってことは、人がいるってこと。

 つまり——!


「ど、どうすれば……。」


 リボンをつけてあるほうの手首をにぎりながら、口元に手をあて、震えながらつぶやいた。

 扉の向こうの人は、戸が開くのを待ているはずなのに。