二次創作小説(紙ほか)

Re: 【inzm】想像フォレスト ( No.4 )
日時: 2013/08/11 07:44
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: J69v0mbP)

Page2  《感情》





 髪がふわりと浮かんだのを見て、みんなが騒ぎ出した。


「な、なんだよっ。」
「風じゃないの……?」
「こんな小さい風で、髪が浮かぶわけないって!」
「化け物っ。」


 みんなが言いながら、じりじりと後ずさる。みんな、なにを言ってるの? 化け物ってなに? お母さんの本には、書いてなかったよ?


「みんな、どうしたの?」


 私は、みんなに手を伸ばした。すると、ひとりの女の子が、悲鳴をあげた。


「きゃああぁあっ。」
「来るなよ!」
「みんな、逃げよ!」


 そう言った子を戦闘に、みんなが木々のむこう——〈光〉に走っていく。


「みんな? 待っ……。」


 私が走り出そうとすると、肩を優しく掴まれた。ふり返ると、ルビーが私をまっすぐ見ていた。
 その宝石は、陶器のようなつるんとした白い肌に乗っかっていて、とっても紅がはえている。

 ルビーの上のまゆは、ふちっこが地面に向かって垂れていて。


「お母さん?」


 私が呼ぶと、お母さんはふわっと笑って。


「帰りましょう。」


 静かに、そう言った。

          ☆          ☆          ☆          ☆

 うすいカーテン越しに差しこんでくる日差しがまぶしくて、私はゆっくり目を開けた。
 緑色の葉っぱが、茶色の窓枠にすっぽり収まっていて、まるでひとつの絵のように思える。

 からだを起こすと、もうお昼だった。昼寝をしてしまっていたのだ。それにしても——思い出したくもない過去を、思い出してしまったな。
 机の上の本に向きなおる。


 本は、私に〈外〉を教えてくれる、唯一のもの。昔は、べつの人が教えてくれていたのだけど。


 しばらく本を読んでいたが、ふと外を見た。案の定、人影はひとつもない。あるのは、緑色の高い下草にちょこちょこ見える、白い花だけ。

 それもそのはず。だってここは、街から遠く離れた森なうえ、とても深いところに建っている。ここを見つけるのは、とても難しいだろう。
 迷ったら、来られるかもしれないが。


 私は人が嫌い——いや、こわい。もしかしたら、人のせいじゃないかもしれないけど。昔のことについて、すこしこわい体験をしたことがあった。
 なんだか、人と……人間と会うのは、おっくうだった。

 でも、逆に会ってみたいという気持ちもある。会って、話をしてみたい。人間って、じつはそんなに、こわいものじゃないかもしれない。そんな感情も。

 矛盾している。



 でも、感情なんて、そんなものだろう。