二次創作小説(紙ほか)
- Re: 進撃の巨人〜外伝〜 とある一兵士の見た世界 ( No.14 )
- 日時: 2013/06/18 17:59
- 名前: Banira (ID: 1CRawldg)
それはまさに、逃げ場のない地獄というにふさわしい状況であった。
今まで遭遇そして観測がされたことのない特殊型奇行種に前線の防衛網
が突破され陣形が乱され長距離索敵陣形が機能不全になり我が物顔で
次々押し寄せてくる大小さまざまな憎き巨人共・・・。
おかげで右翼、索敵を初め次列五、六・伝達はほぼ壊滅・・私たちが率いる援護班がちょうど最前線であった。
そんな人類存亡の最前線に今、私たちがいる。
しかし、こんな状況でも「人類の英雄」リヴァイは真の指揮官と
呼ぶにはふさわしくいたって冷静であった。
視線の先にいる、今も尚暴れている巨人共を指さしながら
その場の状況を理解した上で的確に判断を下した。
「いいか、よく聞け。まず俺とハーブの二人であの奇行種を狩る。
残りの全員は奥から来ている巨人2体を頼む。」
「それからだ。ハーブお前は難しいとは思うがあの巨人の腱を削いで
動き回るアイツの動きを止めてくれ。それを任せられるのが今の段階で
お前しかいない。」
「了解です。」
自分でも、巨人の目をつぶしたり腱を削いで巨人の動きを止める
討伐補佐においての立体起動においては、リヴァイ以外においては
今の調査兵団内においては数本の指に入ると自負しているが聞く限り
今回は高速移動に飛ぶという複雑な動作をもった奇行種である。
奇行種は難易度が高くよく洗練された立体起動が出来ねば狩れないが
今、持てる力すべてを出せる自信はある。
「それ以外の奴らは奥の巨人どもを奇行種の巨人からなるべく
引き離し俺たちから遠ざけた所で立体起動に移れ。何たってあいつは
移動速度が早いうえに目に入ったものはかたっぱしから喰らう習性が
あるように見える。そうするとすぐお前らを捕食対象にしかねいない。
あと・・悪いが討伐方法についてはまで今考えていられる余裕はない
そちらに任せるぞ・・」
すぐに分隊長である私がこういう時に備えて考えていたある一人の
部下を指名した。
「そちらの指揮は、セダ・グラッドレイあなたに任せます。
リヴァイ兵長・・いいですよね?」
「ああ、異論はない。」
リヴァイもすぐセダの名前を聞いて納得してくれたようだ。
しかし、正反対にこの突然の決定に納得が行かないのは当の本人である
セダであった。
「ちょ・・ちょっと待ってください!俺なんかに...みんなの命を
預かるなんてことは...」
セダは自分には力がないことを理由に固辞しようとした。
「いいえ...私はあなた以外にこの中で指揮官に向く適任者が
いないと判断したからあなたを任命したのです。」
「で..ですが..私の今の力量では!」
「心配しないで・・セダ。私が分隊長就任当初から私についてきて
くれたあなたをずっと見てきたから分かる。あなたは自分を顧みずに
巨人に立ち向かう心と仲間を第一に考えて行動できる頭脳があります。
だから・・どうか・・この指揮を引き受けてほしいのです。」
「時間がない。おい、やるのかやらないのかどっちなんだ?」
リヴァイも早く決めろよという鋭い眼光と口調でセダに催促した。
しかし・・私の訴えが通じたのだろうかそこにはもう頑なに固辞しよう
としていたセダはいなかった。
「わ・・私でよければ職務を全うさせていただきます!!」
セダは兵団の胸を手にあて心臓を公に捧ぐという意味の敬礼のポーズをとった。
この自信を全体にあらわにしたセダのポーズを見て私は安堵した。
「さすが・・私の一番の部下です。」
そしてリヴァイが最後の言葉でみんなを鼓舞した。
「これ以上大切な仲間や家族を失いたくなかったら死んでも必ず
この作戦を成功させるんだいいな。いくぞ!」
「オーーーー!」
その時、その場にいた誰もが己の刃を空に向かって突き立てた。
その刃に込められた思いは、人類のため、家族のため、最愛の人のため
と人それぞれであったが、その思いの根底にはある一つの共通意識が
あった。
それは、誰もが潜在的に持っていた(守るために戦う)という潜在意識が。
そして、先陣をきるリヴァイが自馬にムチを入れスピードをあげた。
それにつられて他のみんなも馬体にムチを打つ。
全員の馬が風をきりトップスピードになった時・・
その時間はやってきた。
「作戦陣形展開だ!」
リヴァイの号令を合図にして密集陣形から作戦遂行の陣形に展開する。
「セダ班こっちです。ついてきてください!」
また、巨大樹の巨木を分岐点として密集陣形であった隊列は2つに分かれる。右側はセダ率いる普通種討伐班、左側には私とリヴァイの奇行種
討伐班であった。
別れ際セダがこちらに言葉をなげかけてきた。
「健闘を祈ります。」
「セダ・・任せましたよ。」
「ハッ!」
臨時指揮官を任されたセダはいかにも指揮官向きであるという冷静な声でいった。いつもの自虐思考の強かったセダとは明らかに違かった。
そして、セダ達の率いる部隊もやがては木々の間に隠れ見えなくなった。
たった二騎だけになると今まで耳に響いてた馬の駆ける音は驚くほど小さくなった。聞こえるのは風が木の枝や葉を揺らす音とそして・・
巨人がだんたんと近づいてくる不穏な音であった。
いつもは聞きなれているその音も今日はなぜだかより一層、不吉な音に
あって耳につんざくのであった。
しかし、今はそんなこと考えている場合ではない。敵はすぐそこに
いるのだから。
「よし・・ハーブ。俺らもやるぞ。まず俺が巨人を引き寄せる
その間に裏に回って奴の腱を削げ。」
「了解です・・。これから立体起動に移ります。」
私は馬の背を蹴って勢いよくジャンプするとアンカーを巨大樹の幹に
目指して射出した。