二次創作小説(紙ほか)

Re: 進撃の巨人〜外伝〜 とある一兵士の見た世界 ( No.26 )
日時: 2013/10/10 21:09
名前: Banira (ID: 1CRawldg)

「各々、馬を繋ぎ準備ができた者から壁を昇りなさい!」

「了解!」

そういうと調査兵団の先遣班の面々は個人の馬から降りて、木々に
手綱を繋ぐと、準備ができた者から次々にウォール・ローゼの
壁にアンカーを射出し昇って行った。

ハーブも馬からおりて馬を木に繋ぎ、いよいよ自分も壁を昇ろうと
なった時、ハーブは自分の立体起動装置からブレードを抜くと
今一度、自分を思いつめ目をつむってブレードの持つ所の部分を強く握った。

そして、目をそっと開けるとハーブは自分に与えられた責務を
遂行しようと決心した。

「分隊長・・・・。」

突然、自分を呼ぶ声にハーブは驚いた。そして、声のした方を向くと
その主は同じ女性で、この先遣班として唯一ただ一人、女性で選ばれた
調査兵団の中でも屈指の精鋭、ぺトラ・ラルであった。

「ぺトラ・・・?どうしたの?」

「こんな時に…いうのも何なのですが。私…ずっとハーブ分隊長。
あなたの背中を見てずっと追っかけてきました。調査兵団に入った時
から…同じ女性なのに男性たちに劣らず、泣き言一つもいわず淡々と任務をこなしていくハーブ分隊長にあこがれていたんです。そして
いつかあんな人になりたいと思ってました。ですが、さっき分隊長が
涙を流している姿を見て…実は分隊長も内心追い込まれていたんだと
知って…分隊長みたいな強い人でも弱い部分はやっぱり捨てられないんだと知りました。でも、私はいつでもハーブ分隊長やリヴァイ兵長を
ずっと支えたいと思っています。だから、もっと私たちにも頼って
くださいよ?だってハーブ分隊長ったら自分一人でこなそうとしちゃって突き進んじゃうところありますから!」

「ごめん、ごめん。本当にぺトラったら私のことなんでも見てるのね。
本当に怖いくらいに。でも、今の私があるのはあなたたちがいてなの。
今までの私は体裁を気にするあまり、部下達の心情まで考えていなかった。だけど、あなた達がこんなにもふがいない私を慕ってくれてる
ことを知れてやっぱり持つべきものは部下だと思えた。逆に私が
ぺトラやオルオ、その他のみんなに感謝しなくちゃいけない。
でも、今はそんな事言葉で直接言ってる暇はない。だから行動で
恩返ししようと思う。今、自分に与えられた出来事をね。」

ハーブが一端、話すのを終えた時、壁の上から自分たちを待つ声が
聞こえた。

「ちょっと、長く話しすぎたわね。さぁ、ぺトラ行きましょう。
今も、訓練兵団や駐屯兵団の仲間たちが私たちを待ってるわ。」

「ハイ!一体でも多く巨人を狩って人間様の実力知らしめてやります
から!」

ぺトラは手を拳にして気迫を満々にしていった。ハーブはそれを見て
笑みを浮かべると右のアンカーを射出した。ぺトラもすぐ後に続いた。

そして、壁の途中で右のアンカーが限界まで収縮されると次は左のアンカーをすぐさま壁の上部に射出しそこで2、3歩勢いをつけるべく
壁を蹴るとアンカーに引かれるがごとく身体はそのまま壁を昇っていき
あっという前に壁の上へと着地したのであった。
ここまでほんの数秒のことであった。


そして、ハーブは壁の上に降り立つとほんのちょっと前は高い壁に阻まれ無数に立ち上る黒煙しか見えなかったトロスト区の凄惨な状況の全体図を嫌でも見ることになった。
周りを見ると先に、その悲惨極まりない光景を見てしまった兵士が想像以上の酷さに唖然としていた。

人類の敵である巨人が無差別に家を襲い、原型をとどめないほどに
破壊し、家はあちこちでただの瓦礫へと変わっていた。
石やレンガで作られた美しい建物群の数々はそこにはもうなかった。
そして、そこで今日の朝までは何事もなく平和に暮らしていたであろう
罪のない市民たちは何を思い考えて行動するのではなくただひたすら
生き延びるために必死に逃げ惑いそして、逃げ切れなかった者たちは
その巨人の前になすすべなく奇怪な肉塊へと変わっていくのであった。

見ればすでに逃げ切れなかった者たち、その逃げ惑う市民の盾に
なろうと巨人に立ち向かい壮絶なる最期を遂げた訓練兵や駐屯兵団
たちの無念に包まれた凄惨な死体がそこらじゅうに横たわっていた。
おそらく、そのXデーが今日じゃなく調査兵団の戦力が早々から
加わっていれば助けられた命もあったであろう。

そして、そんな絶望という言葉でしかいい表せない状況とは
うらはらに飛び散った赤い鮮血だけが傾きかけた夕日に照りだされ
美しい淡い紅となり小さな明るい景色をつくっているのであった。

たった私たちが見ている今にも、立体起動中に巨人の魔の手から逃れ
られずつかまってしまった兵士が発した

「やめろぉおおお!俺はまだ!こんなところで・・・」

≪うわぁあああああああああああああああああああああああああ!≫

出来れば聞きたくなかった耳をつんざくような断末魔の声が到着したばかりである先遣班の調査兵団員の耳に入ってくるのであった。

ハーブも惨憺たる状況を目の前にしてかたずを飲む他なかった。
しかし、時間というものは残酷で願って止まってくれるものではない。
時間の猶予というのはなく一刻、一刻と流れ状況は比例するかのごとく
悪くなっていった。

「状況は、予想以上に深刻なようね…。」
誰もが目の前の絶望に唖然として言葉が出ず、ただ無言で見ている
しかできなかった状況で開口一番に声をあげたのはハーブであった。

「おそらく見るからに死者、負傷者数ともに伝令で聞かされた情報
以上と思って間違いないわね。建物の被害ならびに物的被害も
甚大で計り知れない。」

分析しながらハーブはこの時思っていた、みんな眼前の状況に翻弄され冷静さに欠いている。それも無理はないウォール・マリアを突破されて五年…。私たち調査兵団の面々はウォール・マリアの奪還とウォール・ローゼ防衛に身を投げ打ち力をささげてきた。しかし、5年もの間、
ついに奪還することは出来なかった。それでもこれ以上の巨人の進撃を食い止めるべくウォール・ローゼの防衛に関しては奪還以上に専念してきていたはずだ。いや、はずだった。何せ5年の間、世間の民衆が
知らないところで防衛網を築きあげ幾多の犠牲を払いながらも巨人の
新たな侵攻を未然に防いできたからである。しかし、そんな調査兵団
唯一の誇り、糧となっていた防衛も簡単に突破されトロスト区が
襲撃されてしまった。そう、5年間の苦労と努力はあっけなく水の泡に
帰してしまったのである。それは精鋭をかき集めて作られた先遣班の
面々にも精神的に十分にこたえるものであった。

「くっそ!俺たちの今までの努力は無駄だったのかよっ!」

≪五年間の努力はすべて無駄だったのだ…じゃあ俺たちはいったい
何のためにこの五年間やってきたというのだ。≫

そんなやりばのない怒りが明らかに精鋭の兵士たちをむしばんでいた。
それは、ハーブも一緒であった。死んでいった仲間たちに報告なんて
できない。
だけど今ここで私が声を挙げなければ…作戦の遂行に重大な
支障がでるのは目にみえていた。

ハーブは沈んだ部下達の心に一語、一語投げかけるようにいった。

「だけど…皆さん!こんなところで感傷に浸っている場合じゃないのは
多くの修羅場をくぐってきたみんなにはわかってるはずです。
今、ここで私たちにできることそれはこれから起こる被害を最小限に
抑えることです。少しでも状況をよくしようなんて考えないでください。はっきりいって、この状況をよくするなんて無理です!
だけど、もっとひどくならないように食い止めることは私たちの
動きによっていかようにでもできます。でも、それは私たちが
しっかり役目を果たしできるものであり所詮は理想にすぎないでしょう。だけど、それを目指さずここであきらめて何が始まりますか?
何も始まらないのは訓練兵団時代で厳しくならったはずです。
だから、今は…感情に支配されず出来ることすべてをやってください。」

それを聞いて兵士たちは、もうこの状況に置かれてしまった以上
後戻りはできないと確信し、もう少しでも目の前に用意された
希望というものにすがるほかないと思った。

ハーブの演説は部下達を鼓舞するのには十分すぎたのだ。
過去にとらわれず現実を悟るほかないのだから。

見ると沈んでいた部下達の顔はかわっていった。

「皆...誰だって本当は辛い...出来るならここからにげたいと思う中で、私を信じてくれてありがとう。だから、私は
絶対ここにいるあなた達全員死なせたくないし見捨てない
そして信じる気持ちに応えたい思いでいっぱいです。
だけど、今は逆にあなた達が市民や他の兵士たちから
信じられてる立場....救いの手を待っている。だから
その思いに応えられる行動をして下さい。」

「そこで、スムーズかつ合理的に作戦を進めるために
ここにいる者を4人ずつの4班に目的別に分けたいと思います。
組み分けは能力に応じて私が既に考えました。
緊急なので、申し訳ないけどこれに納得してください。
まず、一班、エルド、グンタ、ゲルド、ティダの4名は
駐屯兵団精鋭班イアン班が既に、展開しています。なので
イアン班と合流し、人命救助優先で街に巣食う巨人を
一匹でも多く駆逐してください。二班、アイン,イヴァン
リーズ.デニス以上の4名は巨人による被害がもっとも
大きい本部周辺にて展開している補給兵ならびに
訓練兵の救出と周辺の巨人の駆逐を!三班
マチルダ,クリス,コモロフ,ドルナー以上4名は
北方面に展開し、兵士並びに市民の救出を最優先
でお願いします。そして最後4班はグレハ,レッド.マーズ
サムスの4名は負傷者の救出と介抱を優先でお願いします!
最後...ペトラは私とともに中央広場付近で展開
巨人の駆逐及び訓練兵たちの退路の確保をします。
では、以上!」

「了解!!」

兵士たちはそれぞれ、兵団式の敬礼のポーズをとった。
この時一度は、崩れかかった連帯感はまた一つになろうと
していた。

「よし!それでは、各班ごとに集合し準備の出来た班
から出撃してください!」

ハーブが言い終えると兵士たちはそれぞれの持ち場ごとに
散らばりそして、互いに

「死んだら容赦しないからな!」

「うるさい!お前の方こそ心配だ。ぜった生きてまた
会うぞ!」

と最後になるかもしれない言葉を掛け合いながら
出撃していった。

そして、壁の向こう側のオルオ達も事前に通達した通り
それぞれの班に分かれ出撃しているようだった。

次々と出撃していく班を見送るうち遂に私とペトラ
だけになっていた。

女性だけでの作戦行動は極めて稀であるがペトラの
討伐技術は並の兵士50人分はあるのでそこへ
分隊長の私が加わればおそらくその辺の部隊よりかは
私達の方が力があるので問題ない。

「ペトラ、私達も行きましょう。人命救助最優先それだけは忘れないでください。」

「ハイ!」

二人はアンカーを射出し、絶望渦巻くトロスト区へ
身を乗り出していった。




更新すごく遅れてすいませんq