二次創作小説(紙ほか)
- Re: 進撃の巨人〜外伝〜 とある一兵士の見た世界 ( No.41 )
- 日時: 2014/01/05 13:39
- 名前: Banira (ID: 1CRawldg)
「ついに正体を現したな!バケモノめ!」
キッツが素の性格からは、とても想像できない威勢だけはいいしっかり
とした声で煙の中から出てきたその黄色い髪をした訓練兵を指差していった。
途端、周りにいた駐屯兵も震える手を必死に抑えながらもう一度ブレードを強く握り臨戦態勢に入る。
同じように、「合図を送る」という言葉を聞いて
壁上のエルド、マチルダの両名がブレードの柄の
部分に無意識的に手をやると、ハーブに問いかけた。
「分隊長。動きますか?」
そんな動きをとっている二人の気持ちはわかっていた。おそらく、これ以上市民の混乱を広げないためにキッツが再び砲弾の発射を意味するその腕を振りかざす前に今いるハーブをはじめとした調査兵団のメンバーで緊急介入してそれを止めさせようというのだろう。
「いや、まだ私たちが動く必要はない。今は、事の行く末を見守ったほうがいいわ。それに、あの訓練兵は
何やらちゃんとした説明しに出てきたと思うから。
それを聞いていましょう。」
だが、ハーブはまだそれを行うには早すぎるという
決断心の中で下した。何故なら、介入しようも何も知りえている情報が少なすぎたからだ。そんな状態で動くのはハイリスクしかないということを周知の事実だ。
「了解。」
と言うと、二人は柄から手を離し目を元の視線へと
戻した。
そして間髪いれずキッツが続けざまにもう一度その口調を走らせいい放った。
「送るぞ..私は合図を送る!」
そのあまりの勢いにキッツの目の前にいて銃を構えていた駐屯兵二人は
今一度、照準をその訓練兵にあわせて構えなおすと、命令が出れば
いつでもすぐに打てる態勢に入った。
そんな、いつ死ぬかわからない状況を尻目にその訓練兵は何食わぬ
青年らしい凛々しい顔つきでキッツ達、警戒している駐屯兵に向かって
抵抗する意思のない両手を上げてポーズをとると、自分の思いのすべて
を詰め込んで言い放ったのである。
「彼は..人類の敵ではありません!!!私たちには知り得た情報の
すべてを開示する意思があります!!!」
しかし、そんな青少年の必死の主張もキッツの耳には入ることはなく
すぐさま大衆の思いを代表していうキッツによってすぐさま反論される。
「命乞いに借す耳はない!目の前で正体を現しておいて今更何を言う!
奴が敵でないというなら証拠を出せ!それができなければ危険を排除
するまでだ!」
しかし、駐屯兵団の幹部であるキッツを前にその訓練兵は一歩も譲らない。外見はすぐ他人に流されやすそうなのに、仲間のためにという強い目的意識が彼を突き動かしていた。
「証拠は必要ありません!」
まるで、トントン拍子にすすむ裁判でいう死刑をめぐる検察と弁護士による必死の応酬。
言うなれば巨人によって様々な被害を被ってきた被害者の人類の思いと重ね合わせ必死に追求する検察・キッツ。
そして、あくまで巨人化した訓練兵には、敵意はないと容疑者を弁護
する弁護士・黄色い髪の訓練兵であり、そんな一連の思いを背負った者同士の言葉の対決を前に便乗して野次を飛ばす者などおらずもはや、
つけいる隙さえなくそれを見ていた周りの者たちに許された特権は
《傍観》だけであった。
傍観・・ただ事の行く末を見守るしかなかったのは壁上で見ていた
調査兵団の面々の同じであり第三者がいきなり介入することすら
許される状況ではなかった。。
ただ聞き入るだけで、一歩も動けずハーブ以下調査兵団の兵士4名はすでにその二人の世界にとらわれていた。
そんな二人の世界に囚われた周りのことなど顧みず論争は
続いていく。
「そもそも、我々が彼をどう認識するかは問題ではないのです!」
「なんだと?」
「大勢の者が彼を見たと聞きました。ならば彼が!巨人と戦う姿を
見たはずです!周囲の巨人がかれに群がっていく姿も!
巨人は彼を人類と同じ捕食対象として認識しました!これはいくら
知恵を振り絞ろうとも絶対に変わらない事実です!」
しかし、彼がそういい終えた時その場の雰囲気が
明らかに変わっていく。
彼の訴えによって心が突き動かされたのだろうか
ざわつき始めたのである。
「確かにそうだ・・・」
「巨人が味方?」
「そんな..馬鹿な・・・」
駐屯兵達は、それまで各々構えていた警戒体勢を
といていくと、脳裏に焼きついていたその巨人の行動を見た記憶をそのまま口々につぶやいていく。
それはその場にいた多数の者が、人間が巨人化した
状態を目撃したということがあらわになった瞬間
でもあった。
そんな周りの部下達を見てキッツはただ薄れていた
死相を酷くさせただ首を左右に振ってどうしたら
いいかわからない表情になるほかなかった。
※ ※ ※
「なるほど、これでだいたいわかったわね。」
「ええ。やはり、駐屯兵団は多方が知っていたんですね。巨人化したという事実を・・」
「だから、ああやって人類に敵意がないか
尋問してたんですね。もっとも、あのキッツ隊長が
ちゃんと目撃していたかはわかりませんけど。
というか尋問っていうよりあれは拷問ですね。」
エルドが少しうすら笑みをうかべて言う。
「でもまあ、これで駐屯兵団が訓練兵を尋問してた
理由だけでなく、巨人化したあとの習性まで
わかったのは大きかったわよ。」
「巨人を殺す性質ですか。私にとってあれは一番驚きましたね。まさか、巨人同士で殺し合うなんて..」
「確かに。むしろそれって好都合なんじゃないですか。人類にとって害がない上に巨人を掃除してくれる
なんて。アレをなんとかして有効利用できれば。」
「ただその前に、この事を知って必ず飛びついて
くるあの人にめちゃくちゃにされて挙句に殺されなければの話ですけど。」
エルドのツッコミに、ドッとまたその場に笑いが
巻き起こる。
「まぁ、あの人に捕まったら最後だからね。」
「ああ、話だけでも一夜はあけるからな〜」
と、ペトラとマチルダも続くとまた笑いの渦は
巻き起こるのであった。
本当は、そんなことしている場合ではないのだが
やはり、歴戦慣れしてきた調査兵としての余裕
だろうか。
「まったく、こんな時にあなた達ったら・・。
みんな、漫談はそこまでにして。」
と外見は分隊長らしく取り繕いつつもハーブも
内心では他の3人と同じ気持ちである。
同時にエルドのムードメーカー的な気質にも
感謝をしていた。
何故なら、こういった何気ないやりとりが
日々のしかかるストレスを軽減させいざとなった
本番の時に集中力を高めさせてくれるからだ。
「すっすいません〜。」
エルドはまだ抜けきらなくて悪びれていない
表情でいう。逆に、なんとかして真剣な顔になろうと
しているところでハーブの方が笑ってしまいそうだ。
「まぁ、いいわ。それよりも私たちが知るべき情報は
揃った。これで万が一の介入する時の口実もできたしね。」
「そ..それじゃあ分隊長..動くんですね?」
「ええ、これ以上駐屯兵団の好き勝手にはして
られないからね。みんな、その時がきたらすぐ動く
よ!」
「ハイ!」
とその時まるで待ってましたと言わんばかりに
下からの大きな声がまたあたりに鳴り響く。
「惑わされるな!皆、迎撃態勢を取れ!」