二次創作小説(紙ほか)
- Re: 進撃の巨人〜外伝〜 とある一兵士の見た世界 ( No.7 )
- 日時: 2013/06/12 22:20
- 名前: Banira (ID: 1CRawldg)
「リヴァイ兵長!北東に10M級巨人と思われる物体を1体確認!
距離およそ550、60!」
私は、その方向を指さしてリヴァイに知らせる。
「っくまたか・・今日はやけに多いな。」
リヴァイは悪態をつく。だが、その通りであった。
毎回、多くの巨人と遭遇するのは毎回のことであるが
今回はそのいつもよりも遥かに多くの巨人が各班で確認されていた。
「ここからは、俺とハーブの2班に分かれ展開する!
俺は右翼だ。ハーブ達は左翼を頼む!目をつけられた方が陽動を
するんだ。いいな。」
リヴァイが的確な判断で自分の分隊に指示を出す。
「了解!!」
そう言われると各員はそれまでの密集隊形から対巨人隊形へと
シフトする。
「ハーブ班、こちらです!」
私はもう一度、自馬にムチを入れ加速させた。今までも長い時間
走っているのだが、品種改良の賜物なのか息、一つ切れていなかった。
さすが、私の愛馬である。
と、今はそんなそんな感傷に浸っている場合ではない。
一時的といえど、今、指揮権は私にあり部下の命を背負っているのだ。
ここは紛れもない戦場・・・焦って下手な動きをすれば全滅にしかねない。
感情は判断を鈍らせるとよく言うのはまさにそういうことなのだろうか。 一刻を争う状況では変な感情移入はもってのほかである。
そして、目の前に巨木がせまってきた。私たちはその巨木を分岐点と
して展開を開始する。
「いいかいたって訓練通りだ。変な真似はするんじゃねーぞ。」
「ハッ!!」
私たちはその巨人を包囲するような形をとるため旋回をはじめた。
巨人達もどうやら私たちに気付いたらしい。標的にされたのは
左翼に張っていた私たちであった。
本当に運がない。襲撃ならまだしも陽動とは・・。
これまた大きな厄介事を背負わされたものである。失敗すれば
私の班はおろか、リヴァイ兵長の班まで大規模な損害は避けられない。
「陽動行動に移ります。スピードをあげてください!」
そういうと、巨人の前に躍り出るため馬にムチを打った。
さすがは、洗練された調査兵団の馬である。ひとたびムチを打てば
すぐトップスピードへと加速した。
グイグイと巨人を追い抜きやがて巨人の進行方向の前へと踊りでた。
予想通り、巨人は前を走る私たちを追い始めた。
ドシン・・・ドシン・・・
馬にのっていながらも巨人の大きな足音が感じられる。
後ろにはすぐ10Mという大型巨人が私たちを喰おうと我が物顔で
さしせまってきている。
それは、まるで喰われまいと必死で逃げるネズミと食べようと
呑気に追いかける猫のようであった。
大きな足音を聞くたび生きた心地がしない。私は毎回のことなので
慣れたが新兵にはいささか恐怖を植え付ける体験の一つであった。
だが、私たちの部下の新兵は総じて優秀であった。さぞ恐怖に
怯える顔をしているかと見れば物怖じしない顔つきでしっかり前を
見ていた。その上
「ヤイ!化け物!こっちだ!」
と巨人を挑発する余裕ぶりまで見せる。
「エバンス・・・余計な挑発はかえって巨人を刺激し、興奮させるだけ
です。必要ない言葉は慎むようにしなさい。」
「す・・すいません・・。分体長・・」
と注意したが、内心は信頼のおける部下で安心していた。
しかし、すぐにその絶望の時間は解放されるので
あった。
見ると立体起動行動に移っていたリヴァイ班が
もう巨人のうなじを抉り切っていたのだった。
フィニッシュを飾ったのはもちろん、一人で一旅団分の兵力と等価と言われるリヴァイであった。
普通の一般兵なら30人で一体がやっとだというのに
部下を残して一人でやってしまうからやはりあの男
恐ろしい・・。
それを見ていた周りの新兵たちはやはり噂が確信に
変わり驚きの表情をしていた。
まぁ誰だってあの立体起動装置の操作術を見れば
最初は驚くか・・・。
やがて、きれいにうなじを削がれた巨人は一回
悶絶したかに見えると前を行く私たちの方へと
倒れてきた。
「う・・うわー!巨人が倒れてくる!!」
「皆さんもっとスピードをあげて!」
およそ、馬の体力などガン無視した指示ではあるが
倒れてきた巨人の下敷きになって死ぬ、そんな死に方など
洒落にならないし浮かばれんだろう・・。
ドサッーーーー
間一髪そんな由々しき事態は免れたようだ。
「フゥ・・危なかった・・」
私や部下たちは胸をなでおろした。
戦場はこういったおよそ死とは結びつかない場面
でも恐怖は襲ってくるから侮れないのである。
後ろを見ると巨人は変な痙攣?を見せたかと思うと
やがて動かなくなって蒸発を始めた。
「あれが・・巨人の最後なのか。哀れだ・・」
部下の一人、新兵であるグラクスがボソリと
つぶやく。
それを聞いてあーそうか、新兵にとっては巨人の
最後を見るのはこれが始めてなのか・・と。
「ええ、グラクス。巨人の最期は人間と同じく
あっけない最期です。養成所で習ったと思いますが
うなじさえ切り落としてしまえば巨人とて人間と同じ
最期は蒸発して跡形もなく消え去ります。
あなたが、生きぬいていきたくば仲間の死よりも
巨人の最期を多くみていくようにしてくださいね。」
っフ・・私もいつから戦場でこんなきれいごと
言えるようになったものか。私も初めて巨人の死
というものを見たときは驚いた。あんな大きな物体の最期はこうもあっけないものだと・・・。
その時から考えれば多くの巨人の最期を看取ってやってきたが自分も随分立派になったものだ。
「アドバイス・・ありがとうございます・・。」
グラクスは右手を頭の後ろにあてがって、照れるようにお礼をいった。
そんなところが、兵士とは違って中身はまだ
純粋な少年なのだなと思うのであった。
やがて、右翼に展開していたリヴァイ分隊長率いる
班が向こう側から近づいてくるのが見えた。
やがて、右翼と左翼に分かれていた二つの班は
再び合流する。
「リヴァイ兵長さすがの腕前ですね。」
「あんな10Mの巨人一体いたところで俺の敵じゃあない。」
そんなことサラリ言ってしまうところがやはり
私たちとは違うのだな・・と思わされるのであった。
普通なら、10M一体でさえ倒すのに少数の犠牲は
つきものなんですがね・・・。
その時・・上空に一つの閃光が光った。
みると前方に展開する索敵班からの信煙弾であった。
しかも・・その色は・・・黒!!
黒の信煙弾は緊急を要する意味で奇行種が発見
された時などに用いられる。
どうやら、まだ絶望はつづくようだ。
「兵長!黒の信煙弾です。おそらく奇行種かと思われます。あの方角からするとおそらく次列・六伝達かと。」
「あぁ、そうだな。全隊、方向転換だ。前衛の援護に
向かうぞ!」
「了解!!」