二次創作小説(紙ほか)
- ターン37:私の仲間 ( No.111 )
- 日時: 2013/07/28 23:42
- 名前: タク ◆XaammrlXPk (ID: 0.DI8Vns)
「《悪魔神ドルバロム》でトドメです。」
「む、無情の極み・・・・・・!」
暁ヒナタは、無表情でデッキを片付ける対戦相手に、涙目で訴えた。が、対戦相手------------------月夜野シオに、
「デュエマに於いて、真剣勝負は至極当然です。むしろ今のは手を抜いた方です。この間の勝利は偶然ですか?」
「思い切り矛盾してるんだが!何?!今手ェ抜いたの!?」
「今日の100戦中100戦、全て私が勝利しているので、余りにも可哀相ですと思い・・・・・・。」
「お前・・・・・・。」
それが通用するわけがない。すると、シオのデッキからカードが1枚、飛び出て光った。
「ブークスクス!やっぱお前、大したこと無いブー!マイハニーに先輩とか呼ばれているクセして、メチャクチャ弱いブー!」
シオの相棒(?)にして、ストーカーのブータンだ。
「おいナレーター!ストーカーとは失礼なブー!俺様は愛を追跡するトレジャーハンターだブー!ブ?」
ブータンは言っちゃいけない事を言いながら、ヒナタの顔を見上げた。そして思わず目線をそらした。そして後悔した。これヤベェなと。
「貴様・・・・・・どちらか選べ。ポークカレーの具か豚汁の具か・・・・・・!!ハンティングされるのはてめーの方だ、さぁ一狩り行こうぜ!(ストーカー豚を)」
ヒナタが怖い笑みを浮かべた。モ○ハンに出てきそうな、ものすごい装備を着て。そして片手にはインスタントのポークカレーと豚汁の包みを持って。2秒後、ブータンの断末魔が教室中に響いた。
「全く、何をやっているですか。」
『う〜シオちゃ〜ん可愛いブー』
「黙れです。」
シオはカードを持つ手に少しだけ力を込めた。帰宅中で、学生達が各々の道を歩んで、家へ向かう。が、その中にシオが居ると、まるでシオがとても小さく見える。
「はぁ・・・・・・。」
シオはため息をついた。別に彼女は自分の身長を気にしているわけではない。ただ、地元を家出同然で飛び出し、この未知の地へ足を踏み入れてしまった事に、多少後悔の念を抱いているのだった。シオもまだ少女だ。年不相応にしっかりしていると言っても、思春期の少女なのである。不安を抱えたり等は多々ある。今まで一人暮らしだったが、突然ブータンが覚醒してからは、1人きりだった私生活がそうでは無くなった。しつこく結婚してくれと迫ってくるとはいえ、ブータンはもう、彼女にとっては家族同然なのである。
「シオ。」
「!」
シオは思わず振り返った。黑鳥レンだった。
「レン先輩・・・・・・!」
「1人か?」
「いえ・・・・・・私にはブータンが。」
「ああ、そうか・・・・・・ちょっと、デュエマしないか?」
近くに丁度良い場所があったため、レンの持っている、対戦用のプレイマットで、すぐに準備は出来た。
「で、やっぱ一人暮らしなのか?今も。」
レンのターン。ヒナタの場には、《破界の右手 スミス》と《神託のサトリ 最澄》。
「僕は《スミス》でシールドブレイク!」
「受けます。」
シオはそう言って、シールドを手札に加える。
「はい。でも今は・・・・・・寂しくないです。ブータンが居るから・・・・・・。」
「そうか。なら良かった・・・・・・ターンエンドだ。」
「・・・・・・私のターン。《オルゼキア》召喚。《ヤミノストライク》を破壊して、《大邪眼B・ロマノフ》を墓地進化します。T・ブレイク!メテオバーンで手札を3枚、山札へ!」
シオは話しながらも、デュエマを続けていく。
「私は・・・・・・ブータンが来るまでまで1人だったから。」
「そいつは違うんじゃないか?」
レンははっきり言い切った。
「どういう事ですか?」
「お前には・・・・・・僕たちが・・・・・・友達が居るだろ。《真実の名 修羅丸》召喚。パワー15000の《神託のサトリ 最澄》で《B・ロマノフ》に攻撃。」
「《シンカイドーベル》でブロック。」
「《破界の右手 スミス》召喚。アタックチャンス発動。《破界秘伝 ナッシング・ゼロ》で山札を3枚捲り、3枚とも無色の場合、Q・ブレイカーに!Q・ブレイク!」
シオのシールドが全て吹っ飛んだ。
「友達・・・・・・ですか・・・・・・前の地元じゃ、私と関わる人なんか居なかったから・・・・・・。」
「前の地元なんか関係ない。何回でも言ってやる。今のお前には、立派な友達が・・・・・・仲間が居るじゃないか。」
シオはうつむいた。
「レン先輩・・・・・・私、仲間なんか居ないと思ってたです・・・・・・。」
「仲間ならここにいる・・・・・・さて、突然だが、ある潔癖馬鹿の話をしよう。その潔癖馬鹿は、学校の入学当日に、ちょっとした事故からカードを汚され、その腹いせに相手にデュエマを挑んだ。だけど、その相手はとても強くて、挙げ句の果てには巨大クリーチャーが並べられたままやられてしまった。だが、その後そいつとは、気が合うようになり、いつの間にか友人、そしてライバルと呼びあえる間柄になっていた。」
「これって・・・・・・。」
シオは思わず尋ねた。
「まぁ実は僕の話だ。僕はそれまで、仲間なんか居ないと思っていた。いや、居なかった。なのに、たった一回の本気のデュエマで、仲間が1人出来た。僕はこんな性格だからな。自分でも仲間など出来ないと思っていた。僕は思う。あのデュエマでアイツは負けていても、アイツは笑ってこう返しただろう。”お前、強いんだな!またデュエマしような!”ってな。さて、デュエマの続きだが、僕はターン終了だ。」
そう言ってレンは、1度ふぅとため息をついた。
「私のターン。《ダークモルダー》進化。《悪魔神ドルバロム》。」
「へ?」
「そして、レン先輩の全てのマナを吹き飛ばすです。」
「よ、容赦ない!?」
「《B・ロマノフ》でT・ブレイク!《ドルバロム》でトドメです。」
レンは思わず肩をがっくりと落とした。
「つ、強い・・・・・・。」
「レン先輩。先輩は・・・・・・どんなに私が強くなっても、私を避けたりしないですか?」
「・・・・・・当たり前だ。」
レンはそう言って、デッキを片付けた。
「それじゃあ、僕はこれで。」
「あ、はい。」
そう言って、レンはとっとと帰って行ってしまった。ふと見上げると、鉛の雲が広がっている。ポツポツと水が空の上から降ってくる。だが、シオは自分の服がぬれるのは、決して雨の所為だけではないことを知っていた。
「私にも仲間が居たんですね。」
そう言って、ふっと一瞬だけ笑みをこぼした。すると、後ろから声がする。
「おーい!シオー!俺、頼み事があってさぁ!今から帰るんだけど、お前傘持ってないだろ?俺、折りたたみ傘あるから!貸すよ!」
ヒナタだ。
「あ、はい。ありがとうです。」
「ったく、濡れてんじゃねーか!風引くぞ。」
そう言って、ヒナタはシオに、折りたたみ傘を渡した。
「ヒナタ先輩は?」
「俺はいーから!な?」
「じゃーな!」と言って、走っていくヒナタ。シオはその姿を見て、1つだけ理解した。
「ヒナタ先輩だったんですね。」
そう呟いて、帰路に着いた。