二次創作小説(紙ほか)

ターン58:”タイタン・ポセイドン” ( No.189 )
日時: 2013/10/21 23:37
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

 鎧竜サマートーナメント。それは、同じ学年同士で作った有志のチームで行う、鎧竜の一大イベントの1つ。毎年、多くのチームがしのぎを削り合う戦いを繰り広げる、一大イベントである!

「とゆーわけで、参加したいものは参加意思表明の、記入欄の記入するところ記入して出せよ。チーム構成は3人!ただし、同じ学年のメンバーに限る。良いかッ!!」

 帰宅前のHRで先生は気合を入れて熱論する。そのあとには、

『ぐーぐーぐー・・・・・・。』

 返事ではなく、全員の寝息が返ってきた。

「あれ!?全員寝てる!?起きろぉー!!」

 ふと腕時計をみると、気づかぬうちに自分が下校時間の1時間もオーバーで話していた事に気付いた。

「ちょっとぉー!?しまったぁー!!みんな起きてくれぇー!!今回は先生が悪かった!でも君らも帰らないとヤバいから!!お願い、起きてくれぇー!!」

 しかし、爆睡中の生徒の耳に絶賛後悔中の先生の声は入らなかった。その後、真面目な彼は保護者たち1人1人に電話でお詫びしたという。




 1時間ほど遅くなったが、帰る途中のことだった。ドラポンとオーロラは先に帰ってしまった。コトハが、ヒナタに話し掛けてくる。

「ねっ、ヒナタ!トーナメントに参加しよーよ!」
「るっせぇな。レンが居なくなったのに、こんな大会にも出ていられねーんだよ。」

 《スミス》のカードを手に取り、疎ましそうに睨むヒナタ。相当苛立っているのか、足元の小石を蹴飛ばした。その小石は驚く程によく飛び、前方にいた男子生徒の脳天に直撃した。まずいと思ったのか、ヒナタはその前方の生徒に駆け寄る。

「すみません!大丈夫ですかぁ!?」

「ああ、大丈夫、何ともないよ。」

 相手の容姿は眼鏡をかけ、青みの勝った黒髪。そして、眉間から頬にかけて血が流れている。しかし気にしていないのか笑顔で答えた。ヒナタは青い顔で問う。

「あの・・・・・・気づいてないんスか?血ィ出てますけど?」
「ははは、面白いことを言うね。この程度どうということは---------------------------」

 次の瞬間、ドサァと音がした。目の前の男が倒れたのである。驚いて、声も出ないヒナタ。慌てて声をかける。

「あのぉ・・・・・・。」
「いや、大丈夫だよ。」
「大丈夫じゃねーだろォ!!俺が言うのもアレだけど、今倒れたよね!?倒れたよね!?」

 得意のツッコミを仕掛けるヒナタ。しかし、少年は立ち上がり頭を押さえて答える。

「なーに、このぐらい。ん・・・・・・?」

 少年は、ヒナタたちを見つめた。すると、気づいたかのように

「君たち、暁ヒナタ君と如月コトハさんだね!?」
「え、ええ・・・・・・。」
 
 流れる血に戸惑いながらも、答えるヒナタ。相手は笑顔で言った。

「僕の名は、天川スプラッシュ・ウェンディー。人からは、スプラッシュ天川と呼ばれているんだよね。」
「スプラッシュ天川!?」

 ヒナタとコトハは同時に叫んだ。そのあとに付け加える。

「誰?」

「ズコォー!!」

 天川はずっこけた。が、コトハは思い出したかのように話し始める。

「でも、そういえばイギリス人と日本人を両親に持つ、ハーフのデュエリストがすごい強いって噂が・・・・・・。確か異名は・・・・・・。」

「”タイタン・ポセイドン”。」

 天川はコトハの言葉を続けた。そして、ため息をつく。

「全く、残念だ。僕の名すら知らない人間がいたなんて・・・・・・。まあ良い。本題に移ろう。暁ヒナタ君!!」
「え?俺?」

 いきなり名指しで呼ばれ、戸惑うヒナタ。しかし、構わず天川は続ける。

「僕はねえ、君たちの実力が知りたいのさ。この間のD・リーグの試合、見させてもらったよ?素晴らしい勝利だった。君からは、周りよりも遥かに高い才能を感じる。」
「は、はぁ・・・・・・。」
「だから今度は、直接君の実力を感じたい。もし、僕に勝てたら、今度の鎧竜サマートーナメントでは、僕たちが用意した、最高のチームに入れてあげよう。どうだい?」

「待ってください!!」

 1つの声が、ヒナタと天川の会話を遮る。コトハだった。コトハは納得できないとばかりに、天川へ詰め寄った。

「納得できません!そんなの、ヒナタ以外が弱いみたいじゃないですか!」
「君にははっきり言って、興味がないんだけどねぇ・・・・・・。」

 眼鏡をかけ直し、やんわり断る天川。しかし、コトハはそれでも食い下がる。

「証明します!ここで!私の実力を!」
「心配すんなよ、コトハ。」

 ヒナタがコトハを止めた。そして、天川に言った。

「すみませんが、俺はあんたの誘いに乗るつもりはありません。俺は今の仲間でトーナメントに出る。それだけです。」

 それを聞いて天川は怒り出すかと思いきや、むしろ微笑んでみせた。

「・・・・・・やはり、聞いた通りの人間だね。」
「はい?」

 2人はきょとんとし、顔を見合わせる。すると、天川は笑い出す。

「ハハハ、さっきの話は嘘だ。はっきり言って、君の実力は学院の中じゃあ、まだまだ中流中の中流。トーナメントで、その中から抜きん出るためには、僕の力が必要って、シントくんに頼まれたのさ。」
「シント先輩に?」

 「そうさ」と答える天川。

「ヒナタ君、コトハ君、君たちからはすごい才能を感じる。今の実力では惜しい程に。残念なことに、実力と才能は必ずしも比例しない。だが、もっと先へもっと先の次元へ進んでみたくはないか?」
「ですが・・・・・・何故、鎧竜サマートーナメントに参加しなければいけないんですか?」

 ヒナタは一番聞きたかった質問をぶつけた。何故、自分なのか、自分よりも実力の高い人間に付けばいいはずだ。すると、天川はデッキを取り出す。そして微笑んだ。

「それは・・・・・・勝ったら教えてあげるよ!この僕、”タイタン・ポセイドン”にね!」