二次創作小説(紙ほか)

短編3:親父の背中 ( No.206 )
日時: 2013/10/26 01:33
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

『グッドモーニング、ヒナタ!鎧龍では上手くやってるかい?父さんも、結構頑張っているよ!この出張も、あと一週間で終わるからさ!で、今ヒナタはデュエマで何のデッキを使ってるんだい?まぁ、デュエマに根を詰めすぎて、勉強が\(^o^)/オワタにならないように気をつけろよ!(笑)それじゃあ、頑張れよ! 父より』

 俺の親父は、よく海外へ出張することが多い。今はオーストラリアにいる。貿易会社の重鎮だけでなく、本当にすごいのはデュエマのプロも副業で兼ねているということだ。曰く、「海外での友好関係を築く手段としてやり始めたらハマって、そのままプロになってしまった。」ということだ。母さんが、何でこんなオヤジと結ばれたのかは未だに分からない。母は、彼の優しくて素直なところに惹かれたのかもと言っていたが・・・・・・全く、恋愛事情とかガキの俺には分からない。
 にしても、あのバカ親父、オーストラリアの時差を考えてメールを送っていないな。今は夜なんだが・・・・・・。それも、真夜中。スマホの電源切り忘れた俺がバカだった。夜中にメールの着メロが鳴り、起きてしまった。ああ、明日は学校で居眠り確定だな、チクショウ。あ、明日は鎧龍サマートーナメントだった。授業ねーんだ。でも、デュエマの途中で寝たら困るな・・・・・・。
 まあ、良い。ここはデッキを組もう。火、自然、水のビートダウンにしようか・・・・・・いや、ここは火、水のアウトレイジデッキで攻めるべきか?火、水、闇も捨てがたいぞ。

「あーっ、チクショォ!!ぜんっ、ぜん纏まらねえ!!」

「お兄ちゃん、やめてよ。大声出すの・・・・・・。」
「わ、わりぃ・・・・・・。」

 全く、困ったものだ。そーいえば、この間、親父が出張に行く前、デュエマしたっけ。あれは確か、武闘ビルでの戦いの前日だったな。





「俺のターン!《ゼッツー》を《ダークナイト クリストファー》に進化!」

 試行錯誤とは言え、久しぶりに使った火水ビートの切れ味は、やはり抜群だった。しかし、流石親父。プロを侮るべからず。場に、《侵入する電脳者 アリス》や《飛散する斧 プロメテウス》、《突撃奪取 ファルコン・ボンバー》を並べてしまった。とにかく俺は、《クリストファー》で《ファルコン・ボンバー》を破壊し、自分の場の《ゼッツー》で《プロメテウス》を破壊した。だが、次の親父のターンだった。

「《紺碧術者 フューチャー》召喚!どーだ、ヒナタ!父さんの切札だ!」
「ア、アウトレイジ!?しかもスピードアタッカー!?」

 そこからは凄かった。《フューチャー》と《アリス》のコンボで、山札に仕込んだ呪文、《ティラノリンク・ノヴァ》で俺のシールドは焼き尽くされ、《フューチャー》でダイレクトアタックを決められてしまった。

「だぁー!!負けたァー!親父手加減しろよ!」
「ハハハハ!お前もまだまだだな!アウトレイジで俺とやり合おうなんざ、100年はえーんだよ!ハッハッハ!」

 だけど、と親父は付け加えた。

「お前、強くなったな・・・・・・。なーんてな、ハッハッハ!」

 いつもの豪快な笑い。照れ隠しだったのかな。親父の陽気な姿。俺はそれが大好きだ。そして、これだけは言える。優しくて、世界一誇れる俺の親父だと。





「・・・・・・朝か。」

 気付けば朝だった。デッキは、結局出来上がった。《百万超邪 クロスファイア》のカードは、実体化する奴以外にも持っていたから、それをメインに組み上げた。《ドラポン》も勿論、入れた。
 
「親父。俺、絶対優勝するからな。とっとと仕事終えて帰ってこいよ。」

 親父が言ってた「強くなったな」は、多分デュエマだけのことじゃない。鎧龍に入ってから、色んなやつとデュエマして、色んなカードに出会って。今の俺を支えてるのは、間違いなくそれだ。だから、勇気を持って臨もうと思う。今日の、最高の晴れ舞台へと。


 
 










 だけど、俺は気づかなかった。《アラシ》が、明らかに不自然な風に乗って、飛んでいったのを。まだ、暗雲は残っている。