二次創作小説(紙ほか)

エクストラターン1:異変 ( No.253 )
日時: 2014/02/16 18:18
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)

「《四十日鼠 チョロチュー》でダイレクトアタック!」

 研修合宿とは、非常に面倒なものである。という発想は、ヒナタの中で途中から爆ぜて、ドラポンの持った銃の銃口に吸い込まれて消えた。
 特にデュエマで優秀な生徒を選抜し、全学年から2人ずつ出るという冬の学園対抗大会に出場する、というコンセプトから熱血デュエル馬鹿、暁ヒナタはこの合宿でトップに上り詰めようとしていた。
 現に今も、1人倒したばかりだ。
 この合宿では、1年のみが参加し、スイスドロー形式でどんどん戦っていくものである。
 そして、最上位の1人が学園対抗合宿に参加できるというもの。しかし、超エリートのエル・ヴァイオレットは参加するまでも無く、その椅子を1つ勝ち取ってしまったのである。
 勝ち数が多くない生徒は、後でマラソンさせられるという最悪の副産物が付いてくるわけだが。しかし、いつもの通り友人の黒鳥レン、如月コトハ、月夜野シオは刻々と上位に上り詰めようとしていたのだった。

 が、そんな中で唯一不愉快な感情を抱く人物が居た。


 ヒナタの相棒のチビ龍・ドラポンである。

 
(何っちゃ!? あのデッキは! ヒナタのアホ、馬鹿! 調子に乗って!)

 何故、こうもドラポンが激怒しているのか。まず、それは2つの理由があった。

 1つ目。まずヒナタが今現在使っているデッキの内容である。それは、前代未聞の”半分が同じカード”のデッキだった。
 いや、デッキ云々抜かす前にルール違反でしょ、デュエマには同じカードは4枚しか入れられないというルールがあるでしょ、アホなの、死ぬの? という読者の皆様。
 実は、このカードならばそれが可能なのである。

四十日鼠フォーティ・ボディ チョロチュー UC 火文明 (3)
クリーチャー:アウトレイジMAX 2000+
このカードは、4枚以上デッキに入れることができる。
バトルゾーンにある自分の他の《四十日鼠 チョロチュー》1体につき、このクリーチャーは「パワーアタッカー+2000」を得る。
このクリーチャーはパワーが6000以上の時「W・ブレイカ—」を得る。

 これぞ、ルール度外視のアウトレイジMAXに相応しいカードである。《チョロチュー》はデッキに4枚以上入れてもいいのだ。ヒナタは調子に乗ってこれを40枚投入したデッキを作ってしまい、即・ドラポンをデッキから抜いてしまった。

 そして何より、2つ目はヒナタがそのデッキで勝ちまくっていることである。メインキャラほせ(ry)恐るべし。
 というのは嘘で、何回かフルチョロチューデッキで負けて懲りたかと思いきや、

「いーや、40枚だったからいけねんだ!」

 とほざいて、今度は条件付スピードアタッカー《漆黒の猛虎 チェイサー》や《白骨の守護者ホネンビー》、そしてコスト3以下を3体呼び出す《復活のトリプル・リバイブ》を投入した結果、勝率が上がって現在この結果である。

「もうやだ、もう泣きたい」

 そう言って、突っ伏すドラポン。それを見かねたのか、コトハがドラポンの肩を叩く。相棒にして、ドラポンの思い人である妖精、オーロラも一緒だった。

「大丈夫! アタシがヒナタの目を覚まさせてあげるんだから!」

 と、次にヒナタと当たることになっていたのか、そういってデュエルフィールドへ。
 それを見送るドラポン。
 直後、頭に激しい衝撃を感じる。
 まるで、貫かれるような。

「ツッ……!」
 
 だが、痛みをこらえ、さっさとヒナタの班の部屋に向かうことにした。


 ***

「はっはっはっは! コトハ君? チョロチューによって究極のデュエリストとなったこの俺に勝てると思っているのかね。さあ、闇のゲームの始まりだ!」

 いかにも闇の王者といった気取りでヒナタは完全に暴走してしまっている。

「それ完全に別のカードゲームよね、自重しなさい。ネズミだけに、チュー二病にかかったわけね、って全然上手くないわ!」
「馬鹿言え、この俺にはチョロチュー究極の布陣(《チョロチュー》×8匹)を出している。次のターンで一気に決めるために今まで攻撃しなかったこと、有難く思うが良い。最早、究極の道☆楽☆王(Do-Raku-oh!)の俺様に勝てるわけが……」
「たった今召喚した《GENJI XX》でW・ブレイク。《ポッツーン》でダイレクトアタック」

 この瞬間。コトハの勝利が決まった。そして、よりによって能力なしの《ポッツーン》にとどめを刺された、というショックがヒナタを現実へ呼び戻した。

「う、うわあああ!! この負け方は酷過ぎる……って俺は今まで何をしていたんだ?」
「100回死ね、アホヒナター!!」

 次の瞬間、デュエルホールにはとてつもない勢いで銃弾が乱射された音が響き渡った。

 
 ***

「悪かったってー、機嫌直してくれよぉー、な? な?」
「うっさいっちゃ!」

 昼休み。何とか、マラソン組に入らずにすんだヒナタであった。
 さて、どうデッキを組むか。いつも通り、アウトレイジで組もうと思っていたヒナタ。火、水は必須だろう。
 それにしても最近ふと思うことがあった。

 ドラポンの様子が少しおかしいのだ。

 いや、別にオーロラ絡みの恋わずらいとかそういう話ではなく。

「何なんだろうな……」

 次の瞬間、咆哮が轟いた。遠い方角からではあるが。


『グオオオオオオッ!!』

「「……」」

 とてつもなく嫌な予感しかしない。だが、一体何だ? 迷惑にも此処で大声を上げる輩は。

「ま、いっか」
「スルー!? 無視しちょくんか!?」
「デッキ組んでる最中だぜ。ふざけたクソヤローはまた騒ぎが起こったらぶっ潰しに行くけどな」

 さて、まずはメインカラーは決まった。水と火。それは、ヒナタを今まで一番支えてきたカラーだった。

「……《新世界 シューマッハ》、《戦慄の取引 ビッグ・パルサー》、んでもって《疾封怒闘 キューブリック》、最後はこいつだ!」

 《百万超邪 クロスファイア》。オラクルとの最終決戦の後、エグザイルとしての力は失ったが、その攻撃力は健在である。
 
「さて、飯食いに戻るか!」
「オイコラ、おだんは?」

 しまった。ドラポンのことを完全に忘れていた。といってしまえば、それまでだが。

「わりー、わりー、もう一回デッキ組みなおすからよ、な?」
「……」


 が、次の瞬間。何かが斬れる音がした。


『グギャオオオオオ!!』


 部屋の天井がずり落ちて、凶悪な1対の目がヒナタを睨む。《神聖斬 アシッド》だ。

「オ、オラクリオン!? 何でこんなところに!」

 などと抜かしている暇は無い。即刻で逃げた。部屋のドアを乱暴に閉め、廊下を駆け抜けて外へ出る。異変に気付いた生徒や教員も避難を開始していた。

「バケモンだぁー!!」
「クリーチャーだ、逃げろぉー! 殺されるぞ!!」
「皆、落ち着いて! 先生の指示に従って逃げて!」

 ダメだ。完全に大混乱と化した。
 その光景を見て、自分が何とかしなければ、と咄嗟に感じて、即興で作ったデッキだが、奴に立ち向かう。

「決闘空間開放!」

 ドラポンが叫びを上げると同時に、黒い靄が広がって、ヒナタの回りに5枚のシールドが展開された。
 その名の通り、盾といった形をしている。

 これが、決闘空間でのデュエマ。命と命のやり取りを目の前で行い、敗者は死のリスクに付きまとわされるのだ。


 ***

「レン、まずいわよ。 あっちにも、こっちにもオラクリオンが!」
「分かっているッ!」

 だが、数が多い。《神聖麒 シューゲイザー》、《神聖騎 オルタナティブ》、《聖忌祀 ニューウェイブ》に《神聖祈 パーロック》……。

「先輩達、変だと思いませんか」

 クラス一の無表情で知られ、デュエマの腕も高い女子生徒、月夜野シオが真っ先に問うた。

「ここには、オラクリオンしかいないですよ」

 見渡してみれば、確かにそうだった。
 何かが違う。
 何かがおかしい。

「ゴッド・ノヴァ……確かに! ヨミの襲撃のときは、ゴッド・ノヴァも居たけど、今回は見当たらない!」
「武闘ビルの際もそうだ。何故、オラクリオンだけなんだ!?」


『グガガ……』

 不気味に脳内に響く声。次の瞬間、巨大な影が姿を現す。

 そこには、大量の鎖で縛られた、巨大な竜の姿があった。