二次創作小説(紙ほか)
- エクストラターン4:狂気 ( No.258 )
- 日時: 2014/02/20 21:24
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)
「な、《ムシュフシュ》がいない!?」
レンは辺りを見回した。しかし、もう何も居なかった。
すかさず、コトハが助言する。
「どこかに呼び出された……いや、召喚されたってこと?」
「はぁ、だとすればこいつを必要とする誰かが奴を呼び出したってことか?」
「同感です。でも、今はヒナタ先輩を探すのが先決だと思うです」
シオは至極もっともなことを言う。
「……ヒナタのこと、忘れてた」
「だとすれば先輩は、とんでもないお馬鹿さんですね」
ぐさりと刺さる言葉。久々のシオの毒舌である。
「なっ!?」
「今の記憶障害の上に、貧乳フェチ、そして大量の《逆転王女 プリン》のカードを隠し持っている上に、それを毎日飽きずに頬ずりしているといるらしいですね」
「な、なぁー!? 何で知っているんだ!? てか、記憶障害って何!?」
「オーロラがね、この間撮って来ちゃったんだ♪」
ばっちり証拠の写真を見せ付けるコトハ。意気消沈、と言った様子でへたり込むレン。
そして、シオはコトハの陰に隠れながらとどめの一言。
「変趣味の上に馬鹿が重なるとは……先輩はとんだ変体さんですね。見損なったです。しばらく私に近づかないで欲しいです」
次の瞬間、レンは光の矢に胸を打ちぬかれた感覚と同時にアスファルトの上へ倒れた。
シオに悪意は無いだろう。毒舌は最早彼女からは切っても切れないものだ。
毎晩そんな趣味を隠し持っていたレンもどうかと思うが、それを暴露するオーロラとコトハもどうか……。
***
「ギッシャアアアア!!」
咆哮を上げる四柱神。四つの首がそれぞれうねっている。
「《ツメイ・ゴルニッヒ》は他の竜神王の数だけ、相手のパワーを−2000……つまり、合計−6000のパワーダウンを永続的に行う、ターンエンドだ!」
とてつもない状況になってしまった。これでは、弱小クリーチャーを出せても、すぐに破壊されてしまうのだ。
しかも、竜神王のパワーは合計15000。ぞっとしないほどである。
「だけど、まだまだだ! 俺のターン、《スクランブル・タイフーン》で5枚を墓地へ!」
墓地の中には、《キューブリック》の姿が。
「よしっ、水マナの数が3枚以上あるから、墓地に落ちた《疾封怒闘 キューブリック》の効果で竜神王をバウンス!」
「貴様に出来るのか、それが」
「は?」
墓地から一時的に現れたキューブリックは、今にも竜神王に掴みかからん勢いで突っ込んでいく。
しかし、次の瞬間、竜神王の前に1人の少女の姿が現れる。
刹那、それを目にした途端、ヒナタは咄嗟に叫んだ。
「《キューブリック》、止まれ!」
《キューブリック》はその声にしたがって止まり、そのまま墓地へと還った。
『ア、アホ、何やっとるんっちゃ!』
墓地から、ドラポンの怒鳴る声が聞こえる。
「ほほう? 幾ら貴様といえども、非常になりきれないようだな。彼女のことを知っているだろう?」
覚えていないわけが無かった。
「ナナ……!!」
檜山ナナカ。数年前、事故で死んだヒナタの呪縛とも言える存在。ヒナタは、自分が傍に居なかったせいで彼女が死んだと思っており、自分を責め続けていた。
「どうした? 我に服従すると誓えば、彼女の魂を開放し、現世に生きとして生けるものとして復活させることも出来るのだぞ?」
「ふざけるな、てめーはそうやって俺を惑わせるつもりだろ!」
『ヒナタ……』
声が聞こえた。か細い声、だが確かに。何も変わっていない。
確実に、彼女のものと分かった。
「良いのだな?」
直後、ガルグイユの腕が彼女の霊体に伸びた。
「や、やめろ……!!」
しかし、指は一本、また一本と彼女の体に絡みつく。鎖で縛られた彼女には、悲鳴を上げてすすり泣くことしか出来ない。
その声の1つ1つがヒナタの心を乱す。
「やめろ、やめてくれ!! ナナを離せ!!」
ガルグイユは一気に腕に力を入れた。
そして直後。
暗い空間に、断末魔が響き渡った。
何かがはじけ飛ぶ生々しい音と同時に。
何かが。彼女と過ごした何かもの思い出が頭をよぎる。目をよぎる。
彼女と幾度と無く交わしたデュエル、護ってもらった思い出……そして、棺の中で見た彼女の変わり果てた姿。
全部が、爆ぜた。
「うっ、うわあああああああああああ!!!!!」
ただただ、叫ぶしかない。
滅茶苦茶だった。
何もかもが狂ってしまった。彼の中で。
「うわああっ、うわああっ、うわああああああ!! ナナッ、ナナッ、うわああああああ!!!」
『落ち着け、ヒナタ! タダの幻影っちゃ!』
しかし。今のヒナタがそれを聞き入れるわけも無く。
「あああああああああ!! 《ドラポン》! 《天災超邪 クロスファイア2nd》! 《暴走龍 5000GT》ィィィ!!」
手札にあったクリーチャーを、滅茶苦茶に召喚する。
プレイが乱れている。
精神が正常ではない。
最早、くるってしまった。
顔は、笑ってさえ居なかった。
《5000GT》の効果で破壊された《ドラポン》は、新たな姿へと次元を超えて変化する。
『《弐超拳銃 ドラゴ・リボルバー》、参上!!』
すかさず、ヒナタに声をかける。
『落ち着け、ヒナタ! 相手は神だぞ!!』
「うっ、うわああああ!!」
全てのカードをタップする。その矛先は、全て竜神王へ。
怒り、悲しみ、混沌とした負の感情が、全て仇敵へと向かった。
しかし、パワーで敵うわけが無い。
全て、破壊されてしまった。
「ああああああああ!!」
無残にも倒されて紅い粒子となって消えていくクリーチャー。その光景が、一層ヒナタの心を掻き乱した。
「感じる……感じるぞ、貴様の負のエネルギーが!!」
虚しくも。声が枯れてヒナタはもう叫べなかった。
そして、ずっと竜神王のターンだ。
「我々でダイレクトアタック!!」
次の瞬間、無数の紫電がヒナタを貫いた。