二次創作小説(紙ほか)
- エクストラターン5:行動開始 ( No.261 )
- 日時: 2014/02/21 01:34
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)
「先輩!」
「ヒナタ、大丈夫か? 起きろ!」
「ちょっと、救急車呼ぶわよ、良い!?」
仲間の声が聞こえる。だけど、ヒナタには関係なかった。何もかもが雑音としか捕らえられない。
光が、4つに分かれて消えていくのだけは分かった。
***
気付けば、既に午後6時だった。
武闘ビル。かの有名な大型グループ、武闘財閥の所有する最大大型建設物。内部には、武闘財閥の本社だけではなく、ショッピングモールなども設置されているが、今は関係ないので割愛する。
その中でも、1つ孤立した一部屋がある。小さな書斎、と言ったような部屋で、中には白く脱色した髪の少年、武闘フジの姿があった。彼は、パソコンと睨めっこをさっきからずっと続けていた。
その傍らに黒髪をストレートに伸ばした少年、星目テツヤはその画面の映像に見入っていた。
「《マントラ教皇 バラモン》。こいつが元凶と言っても過言じゃねえ」
フジは画像を拡大した。銀行強盗事件の際、浮かんでいる2つの影。そのうちの1つを指差して言った。
テツヤはコーヒーを飲むとフジに向かって語りかける。
「傍迷惑な話だ。こいつが竜神王の封印を、0・メモリー使って解いちまったんだろ? アレは消滅したかと思っていたんだが。挙句の果てには、鍵に封印されていた《無限皇》と《不死帝》を引きずり出して、自分の犬にしちまいやがった、て訳だな」
「ああ、あとコッチ。《神聖鬼 デトロイト・テクノ》だ。途中から、生命反応が消えた辺り、どうやら死んだらしい」
「じゃあ、残りはバラモンと竜神王達、そして解禁された無法者だな」
「しかし……」とテツヤは遮った。
「この実体化するクリーチャー共は、一体何者なんだ? 何故、俺達の世界に存在するカードゲームにあるクリーチャーと同じ姿、同じ設定で出てくる?」
「俺は-------------」
フジは少し間をおいて答える。
「奴らが、パラレルワールドから来たと考えてる。アウトレイジや0・メモリーを含めてな」
「何だ、そりゃ。いよいよSFみたくなってきたぞ?」
「簡単だ。こっちの次元じゃ、クリーチャーはカードの中にしか本来は存在できねえ。だが、奴らが元居た次元じゃクリーチャーの物語が背景ストーリーの通りに繰り広げられている。0・メモリーは大方向こうの世界から来た、ってことだ」
要するに、同じ時間を流れる別の空間の宇宙から彼らはやってきた、ということになる。
クリーチャーが存在しないこの世界に、クリーチャーが存在する世界からやってきたのだ。
「問題は、何故連中がこの世界にやってきたか、だ。この竜神王だが、どのパックにも収録されていねえ。つまり、奴らが教団を初めとするクリーチャーとは全く違う、異端の存在だということだ」
「異端……成る程、似たような例に神話の神を模したカードがあるという風のうわさだけは聞いたことがある。ま、真偽は問わないとして、その竜神王が、そもそもの元凶って言いたいのか?」
「ご名答」
フジは淡々と続けた。
「って言いたいが、あくまで推測だ。俺は竜神王に次元の壁をぶち破る程の力があったとすれば、全て辻褄があうと考えた」
「へえ? 根拠は」
「あるさ。今、ヒナタ達が合宿行ってる常磐山に竜神王と思われるクリーチャーの反応があった。その際、時空のひずみが著しく起こった。これだけじゃ、まだアレだ。だけど何より、時空のひずみを起こせるだけの力を持ってるんだ。本気を出せば、俺が考えている以上の事だってやってのけるかも、だぜ」
その時だった。書斎の電話に、一通の着信が。フジはすぐさまそれをとった。
「はい、武闘ですが……嗚呼、コトハか。何? ヒナタがやられた!?」
***
暁ヒナタは、死んだも同然だった。
確かに息はしているし、体はまだ鼓動を刻み続けている。
だけど、目はぼんやりと虚空を見つめており、目の前に居る何もかもを受け付けることは無かった。
海戸病院にすぐに搬送された彼の容態は、あまり良くなかった。
「ヒナタ……」
ドラポンは哀しそうに彼の顔を覗いた。だが、ヒナタは何も言わないし、何もしなかった。
「おんしのバカッ!!」
そういって、銃身でヒナタの頭を小突く。だけど、いつものように啖呵を切ってくることも無かった。
「……ドラポン」
オーロラの姿があった。ヒナタも心配だ。だが、それを憂うドラポンもまた、心配だった。
「ヒナタは大丈夫だよ」
そういって、ぎゅっとドラポンを抱きしめる。ほんのりとドラポンはオーロラの温かさが伝わってきた。肌を通して。
「おだんには、他に組むデュエリストなんかおらん。ヒナタが駄目になったら、おだんは誰と組んだらいいん!?」
「今は、信じようよ」
ドラポンは、泣きたかった。いや、現に涙が溢れて来る。寸前でこらえる。
「今は、ヒナタを信じよう?」
「あ、嗚呼……」
「泣きたいなら、泣いて良いんだよ? だいじょうぶ。あたしたちがついてる」
気づいた時には、大粒の涙が視界いっぱいに広がっていた。ただただ泣くことしか出来なかった。だけど、その後彼は嫌な気持ちが皆流れてしまっていることに気付いた。
***
「竜神王は、リンクした後。再び世界中に散ったようです」
星目テツヤは先輩、零皇崎 封李にこれまでの経緯を話していた。
ヒナタが倒されたことも含めて、だ。
そして、竜神王の反応がバラバラに散って、消えたことも話した。
「なーるほどね。奴らのリンクはまだ完全じゃねえらしい。しかも、リンクには途方も無いエネルギーが必要だから、当分は単独で動いてるんじゃねえか? 一回割ったりんごがなかなか元に戻せないのと同じだぜ?」
「教団のゴッド・ノヴァは何度もリンクを繰り返していましたが?」
「アレはな、言うなれば一時的にノリでくっつけたようなもんだ。だから、リンクの解除は簡単に出来る。教団の神と竜神王は完全な別物だ。竜神王は元々は1つの存在だったらしいからな。ああ、コレ全部カツドンから聞いた」
封李は得意げに話す。テツヤは1つ聞いた。
「はぁ、にしても何故竜神王はヒナタを狙ったんでしょうか?」
「さあな。それより……そろそろアイツの出番だな」
「はい?」
そこに、1つの足音が加わる。思わず、テツヤは振り向いた。
「お前は二年の……!」