二次創作小説(紙ほか)
- エクストラターン9:急襲、竜神王 ( No.267 )
- 日時: 2014/02/27 23:22
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 0.DI8Vns)
「俺が-------------怖がっている」
確かに考えてみればそうだった。負けなければ、等負けたことをいつまでも引きずっていた。
そんなことでは、前に進めない。
勝てるわけが無い。
負けない為に戦うんじゃない、勝つために戦うのだ。
弱い自分と。
「ありがとよ。リョウ。俺は、お前のおかげで大事なものを失わずに済んだ!!」
そして、目の前の相手をキッと見据えた。
「終わってねえぞ、俺のターンは!!」
残りのマナを全て払って、これに賭ける。
「二体目の《熱湯グレンニャー》召喚! 効果でドロー!!」
来た。今、一番来るべきのクリーチャーが。《グレンニャー》は一瞬で破壊されたが、すかさず今引いた手札を投げるようにバトルゾーンへ放つ。
「6枚以上引いたため、グラビティ・ゼロ発動! 《クロスファイア2nd》を召喚し、バトルゾーンへ!!」
激流の力を纏った王邪が、ここに再び現れた。
大胆不敵に。そして、絶対無敵に。
「《クロスファイア2nd》……! だけど、勝てないよ! 《パラノーマル》がシールド・ゴーしてるから、そいつのパワーはマイナス3000されてたったの4000! たとえ、このターンで僕のシールドを破ったとしても、次のターンで僕が除去カードやもっと強いカードでソレを除去すれば関係ないんだ!」
「いーや、勝てるぜ……! ウラワザを使えばな!!」
次の瞬間、ヒナタは先ほど《ハルカス》で手札に加えたカードを放つ。
そのカードは赤い衝撃を放って、同時に《クロスファイア2nd》の体が更に隆起するのが見えた。
「《無法の裏技 ドドンガ・ドン》でこいつはパワーアタッカー+3000を得るぜ! つまり、そのまま《ストーンゴルド》を殴り倒せるようになるんだ!!」
「プ、プラマイゼロ!? しまった、これじゃあ……!!」
その時だった。
ザクッ、と空間が裂ける音が聞こえた。
空間が裂けて、突如デュエルが中断された。
***
空間が裂けた後、真っ先に目に飛び込む光景は病室、のはずだった。しかし、その窓からは、本来現実世界では目にすることは出来ないはずの、巨大な異形の生物が真っ黒な闇の夜空に浮いて見えた。
その体はブクブクと太っており、体の部分部分がたるんでしまっている。紫色の毒々しい肌の色は、一層邪悪さを助長させた。
そして、黒い小さな角は竜であることの証。何より、背中には大柄な体格に合わない小さな翼が生えている。
何より、ぶつぶつとした無数の突起が生えた顔面に、埋め込まれたかのようなまん丸の目玉を見ているだけで吐き気がこみ上げる異形の姿。
まさしく、ガルグイユとのデュエルで現れた竜神王の一角であるツメイ・ゴルニッヒだった。
しかし、問題点はそこではない。
ズバリそれらが、何体も居るということだ。
「うっ、うわああああ!?」
とにかく、逃げるしかないだろう。カードを全部ケースにぶち込んでベッドを飛び降り、パーカーを羽織って病室をともに飛び出した。
「な、何が起こってるんだ!? あいつは竜神王じゃねえか!!」
「決闘空間での出来事は、コッチの世界では一瞬で済まされます、だから間違いなくその間に現れたとは考えられない……まさか、最初っから居て気づかなかっただけ!?」
ヒナタは当初、精神が異常を来たしており、またリョウもヒナタに意識が集中していたため、気付かなかったのも無理は無い。
だが、今の状況から見れば何より、建物の中に居るのが一番自由が効かなくて危険だ。
病院を慌てて飛び出したところで、ヒナタは1つの事柄に気付いた。
「リョウは……!?」
リョウの姿が見当たらないのだ。
***
「海戸ニュータウンにクリーチャーが!?」
テレビ画面を見ていたフジは、素っ頓狂な声を上げた。
ならば現地に行けば良いというテツヤのぶっ飛んだ発想は即却下されたが、武闘ビルのフジの書斎にヒナタの愉快な仲間達は集合していたのだった。
とはいえ、現在此処にいるのはフジにテツヤにジェイコフ、そしてレンにコトハにシオの6人だった。前者の3人はテレビから、後者の3人はパソコンから情報の収集を行っていたのだが、とうとうゴルニッヒが海戸ニュータウンの中央病院付近に出現したという映像を掴んだのだった。
しかも、大量に。
「どうなっている!? 竜神王の個体数は、一種につき一体ではないのか!?」
「分かりません。が、1つだけいえるのは、ヒナタ達が危ないってことですよ!!」
レンが焦燥の表情で、フジに向かって叫ぶ。
「黙れ黙れ、此処は元はと言えば俺様の部屋だぞ!? それを狭いのを我慢してお前らに少し貸してやってるんだ! ちったぁ、黙っとけ! うるさいんだよ!」
とは言ったものの、フジも本心では相当心配しているのが目に見て取れる。
「アレ、そういえば無頼先輩の姿が見当たらないんですけど」
コトハがもっともな指摘をする。
いまや、世界最強クラスのデュエリストとして名を馳せていた無頼シント。今、彼が居れば心強いほか無いだろう。
「嗚呼、アイツか。アイツはな……今、ラリアに行ってやがる」
『はァ?』
一瞬、テツヤ以外全員の顔がフジに集中した。
フジは一度咳払いをすると、続けた。
「だから、アイツは今はオーストラリアに行ってんのさ。」
***
「あー、気持ちいーわぁ、コレ。やっぱビーチで肌を焼くのサイコーだわ」
ビニルシートの上で寝転がり、サングラスで目を覆ったまま彼は-------------無頼シントは陽気にビーチから水平線を眺めていたのだった。
水着の美人に心躍らせながら、タピオカジュース片手に、腰にはデッキケースをつけて彼は完全にバカンス気分だっただろう。
と、その時だ。
「Hey!(よぉ!) You do Burai Sint?(無頼シントか?)」
「イ……イエス!?」
いきなり、金髪碧眼のケラケラ笑う兄ちゃんに話しかけられたシント。いきなりのイングリッシュに戸惑うが……。
「Oh!(おお!) Well it, let's Duel!(それじゃあ、デュエルしよう!)」
その兄ちゃんの手には、しっかりとデュエル・マスターズのカード。
「The'm a fan of you.(君のファンなんだ)」
「サ、サンクス……」
この後、言語の違いはあれど、デュエマを楽しんだシントであった。
***
「と言った経緯で、外人とデュエルしたって話は昨日届いた手紙にあった」
「何で!? 何でオーストラリアなんかに行ってるんですか、無頼先輩!!」
「懸賞でオーストラリア旅行7日分当たったらしい。後2日は帰って来ないぞ、アイツ」
テツヤが、さも呆れたかのような表情で語る。
「まぁ、楽しんでればの話だけどね」
同時に、ドス黒いSのオーラを放ちながら。
「は? どういうことですか?」
「向こうにも今、竜神王が出てるのさ。それも、漆黒の竜。アングバット・アンカラゴンがな」