二次創作小説(紙ほか)
- 短編5:探偵パラレル ( No.306 )
- 日時: 2014/03/31 08:15
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
俺の名は、ヒナタ・アカツキ。今ロンドンで、最もホットでクールでちょっぴりお茶目な探偵である。
喧騒なロンドンの街から少し外れに立派ではないが、事務所を立てているのだ。
今日も、俺の力を借りに迷える子羊共--------じゃなかった、依頼人がやってくる。
「すみません! ヒナタ・アカツキ探偵事務所って此処ですか?」
やってきた。見れば、中肉中背、紳士服を着こなしたどこにでもいそうな男だった。丸ひげが特徴的で、細い目は切れ込みのようだった。
「ええ、此処ですよ。事件の依頼でしょうか」
「はい、そうなんです。大事件なんです」
大事件---------それは聞いていて、腕が鳴るというものだ。早速俺は、依頼人をもてなそうと机のある客間に通そうとしたが、依頼人は手短に話すのでこのままで、と断った。
畜生、クライアントの分際で俺の提案を断るたぁ、いい度胸-----------いや何でもない。本音がちょぉっぴり漏れただけだ。うん。
「では、どうぞ」
「実は-----------」
依頼人は、改まった様子で口を開く。
「家のトイレが壊れちゃったので、トイレ貸してくれませんかね?」
あー、成る程成る程、よーするにトイレを借用しに来たのね、んじゃあ俺は親切だから----------------って、バッキャロオオオオ!! ここは探偵事務所なんだよ!!
トイレがぶっ壊れたのなら大工に頼め!!
ついでに公衆トイレを使いやがれ!! ドブネズミがよく沸く公衆トイレをよぉ!! ああ!?
思わず、依頼人に掴みかかって恨み辛み全部ぶちまけてやったぜ、ヒャッホー! クレイジー!
ハイテンションMAXの突っ込みが炸裂。
だが、依頼人はこびて言い訳タイムを開始。
ったくもう、付き合ってらんねえよ。
「す、すみません! ”事件は親切に何でも解決”って看板に書いていたもんですから」
「いや、確かにテメーにとっては大事件かもしれないけれども!! ざっけんじゃねえよ、何度も言うけど此処は探偵事務所なんだよ!!」
「あの、すみません、でも私そろそろ限界---------」
「ちょ、やめろ! ヤメテ! 此処で我慢をといたら、一巻の終わりだからね!? おい、ちょ、やめ---------ぎゃあああああああああ」
こうして、俺の一日は最悪な形で始まったのだった。
そこからはもう、大惨事だったことは目に見えているだろう、親愛なるシャーロキアン諸君。そんぐらい推理しやがれ。
え? 推理したくない?
ま、そーだろーよ。
***
〜第一節:怪盗キット(続きません、多分)〜
俺は、今までにも幾多もの事件をといてきた自他共に認めるスーパー名探偵だ。このロンドンで極上の事件が起こる限り、俺はそれを解くだけ。
そして、ついこの間もかっこよく犯人を追い詰めてやったぜ。
「ギャルの着替えを覗いたのは貴方ですね? 何故こんなことを……」
「ギャルのシャワー覗き魔事件の犯人は、貴方しかいないんですよ!」
「俺の秘蔵のコレクションに賭けて! 絶対にこの謎を解いてみせる!」
「もうダメだぁ、お終いだぁ……逃げるんだぁ……」
……。
おい、今くだらない事件しかないって思ったやつ、後で屋上に来い。
え? 最後のは何かって? いや、違うんだ! 決して事件が迷宮入りしたとか、そんなんじゃなくてな!!
あ、墓穴掘ってるって?
サーセン。
さて俺は今、ヨルムンガル博物館にいる。何故かって? 知り合いの警部からの依頼に決まってるだろ。
何故なら世紀末の大物怪盗、キットが今夜、この美術館の目玉といえる宝玉、レイジクリスタルを盗りにくると予告状を出してきたからな!
え? キッドじゃないの?
バカいえ、そもそも此処は19世紀ロンドンって設定なんだよ!
にしても、広い博物館だ。あちこちに、宝石による派手な装飾が施されている。
目がチカチカしてやってられねえよ。
と、その時だった。
「ヒナタ君」
声を掛けられた。振り向けば、聞き覚えのありまくる声。でっぷりとした貫禄のある腹に、若干赤みのかった茶髪が特徴の中年男性。長い髭が特徴的だ。
この方が、俺の知り合いのマグレ警部だった。
「やはり、キットは予告どおりにやってくるんじゃろうか」
「そうですね。はぐれ警部」
「マグレだ。それ別のデカ」
「ヤツが予告状を出してこなかった時はないですよ。ゴリラ警部」
「マグレだ。それもう原型崩れかけてるから。完全にわざとだよね? 悪意すら感じられるんだけどね?」
「ですが心配無用。この俺、超天災名探偵ヒナタ・アカツキが携わって解決した事件は多いことは知ってますよね?」
「天災って何? 本編のほうの自分の切札意識したの? それに普通自分では言わないからね? つーか君が解決してきた事件の殆どは覗きか自分の盗まれた同人誌の行方くらいだからね?」
ふ、事件に上も下もないんですよヘタレ警部。あ、マグレだった。
にしても、キットが言っていた予告の時間までだいぶあるな……。
「警部。一度、予告状を見せていただきますか?」
「ああ、これだ。”マヌケな警察諸君。今回も1つ、君達に挑戦させてもらうよ。21日の月夜の元、レイジクリスタルを頂に参ります”とな。完全に元ネタの怪盗をパクってるのだよ」
「しかも、挑戦して今まで一度も宝石が盗まれなかったことはないんですよ? 何としてでも阻止せねばなりません。それじゃあ、宝石の方を拝見したいのですが」
「ああ、良いとも」
***
ずさんと言えばずさんだった。
まず、レイジクリスタルと呼ばれる宝石は、七色に輝く非常に珍しい性質で、他の宝石のどの特長にも当てはまらないという。
だが問題は、その管理の仕方だった。
宝石は床に置かれ、さらにその横に看板が立っているのである。ご丁寧にも、”盗ってちょ”と。
これでは、まるで盗ってくれと言わんばかりである。
「あの、警部。腹切る準備は出来ましたか?」
「ちょ、物騒なこと言うもんじゃないよ君! 罠だよ罠、これはね! ほら、このどこにでもありそうな壺を見ていたまえ! これを宝石の前に放ると------------」
すると、警部の手から壺が離れて宝石の近くへ舞って行く。が、次の瞬間だった。突如、どこからか赤いラインが飛んでくる。それが、何方向から合わさって、壺の形を消し去った。
「どうだね! このレーザーは!」
「へー、すごいっすね。つーか、良いんですか? こんな明らかに時代に合わないハイテクなマシン使っても」
「ノープロブレムだよ」
「へー、すごいっすね。つーか、良いんですか? 今の壺が時価数億円の”デトロイトの壺”だったとしても」
「ノープロブレムだよ-------------って、え? 今何て? 時価数億円!? あのボロっちぃ壺が!?」
時既に遅し。
壺は消し墨と化してしまった。だが今、警部が壺を投げるシーンは誰もがばっちり目撃してしまっている。
まさか、本当にそれを投げるとは思わなかったのか、というかどこから持ち出されたのか、誰もが唖然としている。
「あの、警部---------------」俺は、にっこりと営業スマイルで言った。
「腹切る覚悟は出来ましたか?」
こうして、警部は何やかんやで警部を辞めることになった。そして、事件はばっちり解決されたのだった。
***
その夜---------------。
「あれ? 誰もいない? もしかして俺来るの忘れられている?」
怪盗キットは確かに予告通りに来た。だが、盗みという所業を人に魅せることが生きがいの怪盗には、これはショックだったらしく----------------。
「もう怪盗やめよう」
こうして、キットは何やかんやで怪盗をやめることになった。そして、二度とキットの予告状が届くことはなかったという。