二次創作小説(紙ほか)

エクストラターン17:大阪へ ( No.307 )
日時: 2014/03/31 23:41
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 流石飛行機というところだろうか。大阪には45分程で着くらしい。
 その間に、コトハは今までの経緯を話していた。
 水澤カナデの詳細、そして竜神王の行方。

「アタシ達も、ついさっきジェイコフから竜神王がオーストラリアのエアーズロックに向かったのが分かった。だから、今度こそ一気に叩く」
「それにしたって、急展開だな。竜神王は何のために人を喰らったんだ?
 つーかシントさんに彼女とか居たんだ」
「遠距離交際やってるみたいだけどね。手紙とかで」

 ふぅ、と息をつくとコトハは呟いた。

「後は、竜神王の動きなんだけど、実はエアーズロックの上空で未だ動いていないみたい」
「動いていない? リンクしたままジッとしてるってことか」

 竜神王は未だに動きを見せていなかった。
 だが、ここでもう1つの疑問が生じたのである。

「後は、無法の覇王----------《無限皇》と《不死帝》が護るように竜神王の横についてるって--------------」
「な、何だって!?」

 じゃあ、訳が分からなくなってきた。2体のアウトレイジの王が何故、こんな場所に、まして護るように竜神王に付いているのかということだった。

「まあ、今はそーゆー疑問は丸投げしておくとするか。さ、ところで----------------」

 コトハは思わず目を逸らしそうになった。自分のほうを向いたヒナタの顔が思ったよりも近かったからだ。

「お前さっき、俺のこと好きって言ってたけど、あれは告白ととっていいのか?」
「良いわけないでしょバカ!!」

 ガスッ、と思いっきり赤面したコトハに殴られるヒナタ。
 ああ、これで二度目である。

「--------全くアンタは----------でも、もしそうだったらアンタはどう返すのよ」
「は? もしそうって何さ」

 逐一腹が立つ少年だとコトハは軽く鬼に目覚めようとしたが、何とかこらえた。
 頬が真っ赤に、そしてカイロのように熱くなる。

「だーかーらっ! さっきのが、もし本当に告白だったのなら、アンタはどう返したのよっ!」
「ああ、そういうことか。俺はな----------」

 少し考え込むような仕草を見せた後、ヒナタはこう言った。

「悪いけど-----------少しだけ待っててくれっ、て返すな」
「は?」
「だからさ。俺の頭の中今ごっちゃごちゃなんだよ。アイツの-----------死んだ幼馴染の幻影を竜神王に見せられたことで、やっぱり未練がましくまだ忘れられないんだ。前を向けとか言うけど、やっぱダメだな俺」

 竜神王に幻影-----------それで、ヒナタはあんなに精神的にダメージを負っていたのか。
 それとは別に少し残念な気分になった。
 だが、コトハは少し思ったことを口に出してみることにした。

「よっぽど好きだったんだね。その幼馴染のこと」 
「たりめーだ。あの頃の俺は弱虫で、よくいじめられていたのをかばってくれたのもあいつ、デュエマを教えてくれたのもあいつだった。赤ちゃんの頃からの付き合いだったからな。だから--------------」

 苦い思い出を反芻するかのように、顔を俯かせながらそれでも無理に笑顔を浮かべてヒナタは続けた。

「死んだとき、実感がわかなかった」

 彼は俯き加減だった顔を上げると、もう一度言う。

「あいつ、お前に似てるんだよ。勝気な所も、お節介な所も。だけど、全部ひっくるめて、俺はあいつが------------いや、もう良いんだ。過去に引っ張られてるようじゃ、俺もまだまだだな」

 ***

 着いたのは、(本来ならば)ヘリポートらしき場所だった。しかし、雲は鉛色。視界が悪く、ここまでよく安全に来れたものだと感心する。

「流石、自家用ジェット。本当に45分で着いてしまいましたね。」
「しかし、ここもやはり竜神王の襲撃を受けているのか」

 廃墟が連なる。襲撃を受けたのは海戸だけではない。此処、木芽布陀(きめふだ)ニュータウンも竜神王による襲撃を受けていたのである。

「確か、彼女は此処で待ち合わせの予定だ」

 真っ先に降りたフジが、くるりと辺りを見回した、が誰もいない。

「まさか、竜神王に食われたとか……いや、ありえん」
「ちょ、ちょ、ちょ、フラグ立てないでくださいよ武闘先輩っ!」
「コトハとついでに世界文化遺産先輩。とにかく探すしかないだろ」
「ヒナロット、お前から血祭りに上げてやる」

 かの伝説の超戦士の台詞をパクってヒナタに飛び掛るフジ。すぐに、十字ロックが炸裂した。
 悶える様に、苦を並べるヒナタ。
 
「痛い痛い、ギブ! ギブっす!」
「オマエなぁ!! 世界文化遺産呼ばわりならともかく、てめえ俺様をついで呼ばわりしたろ!!」

 必殺、武闘バスターが決まった後、ヒナタは呟いた。

「しかし、これだけ仲間が集まってるんだ! ”もう、何も怖くない”」
「おいそれフラグ」
「この戦いが終わったら、先輩、”ラーメン食いに行きましょう”」
「おいそれもフラグ」
「もう勝ったも同然」
「全部死亡フラグだって言ってんだよテメェ!! 某大手イラストサイトの百科事典の死亡フラグ網羅してどうする!!」

 再び怒鳴るフジ。にしても、遅い。というか、来ない。
 全く、時間にルーズなのか何なのか。

「遅いッ! いったい、いつになったら来るんだ」
「まあまあ、フジ先輩。そうキレないで。血管切れますよ?」


「ひぃひぃ、遅れてすみませーん!!」

 声が聞こえる。振り向けば、眼鏡に青い髪の少女の姿が。白衣を揺らし、水晶のように透き通った目は美しく、凛としている。それを見た瞬間、胸が跳ねるほどに。

「遅いぞ! 全く、俺様を待たせやがって!」
「ち、違うんですよぉ〜!! 私、実は追われてて……」

 は? と、皆が空を見上げた瞬間だった。耳を割る甲高い声が聞こえる。見れば、空には大穴が開き、大量の影が飛来してくる。さらに、大穴は遠くを見渡せばさらに見えた。
 まさしく、クリーチャーが大挙して人間界に押しかけてきているのである。

「ギヒャハハハ!! 獲物だ獲物だ、喰らってやるぜぇ!!」

 さらに、既に上陸していたと思われるクリーチャーがこちらへ向かってくる。大量の装甲竜(アーマード・ドラゴン)や悪魔(デーモン・コマンド)、そして獣人(ビースト・フォーク)等、種類を問わずクリーチャー達がこちらへ大口を開いてやってきたのだった。

「来るぞ、皆!! 構えろ、決闘空間を開け!」

 
 始まる。2つの世界を巻き込んだ大混戦が。
 そして、告げた。

 俺たちの日常は既に、無くなったと。