二次創作小説(紙ほか)
- エクストラターン18:咆哮、激震、超克 ( No.310 )
- 日時: 2014/04/04 18:19
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
戦いは熾烈を極めた、が。
「《暴走龍 5000GT》でダイレクトアタック!!」
と、楽々勝ってしまった。数では圧倒されていたが、やはり弱い。
すぐさま、現実空間に戻る。
「終わったか!?」
「ええ、こっちもですー」
全員の無事を確認しあって、とりあえずこの場は切り抜けたと思われた。
切り抜けたと思われた、のだが。
「おい、ヒナタ! おんし、あれをよく見てみぃ!! 滅茶苦茶デカイクリーチャーが!!」
「はぁぁ!?」
1体の巨大なクリーチャーの姿。
デュエルが終わった他の面々もその姿をしかと目にする。
巨人だ。
武器を構えた白い巨人。
特に、動揺していたのはフジだった。
「《マキシマム・ザ・マックス》!? お前なのか!?」
『ぐおああああ!!』
吼えた。そして、一気に襲い掛かる。
「どうして! フジ先輩、アンタの言ってるそのカードは、しっかりとデッキに------------」
「俺達はかつて、実体化して意思を持つカード、通称”リアルカード”を所持していた。それはライオネルがあけた大穴の所為なのだがな。そして、ライオネルとの戦いが終わると同時に奴らは超獣界へ帰っていったんだ。分身であるカードを残してな」
俺には分かる。ヒナタはそれを聞いて、漏らした。
「あの……先輩、全然話が掴めないっていうか、俺その話聞いていないっていうか……」
「あー、うるせーうるせー」
フジは苛立ちながらも、返す。
だが、と続けた。
「俺は鬼だ。だから、例えかつての仲間だろうが、親友だろうが、相棒だろうが、立ち塞がるならば徹底的に叩き潰す」
そう言って、マキシマム・ザ・マックスに向かってデッキを向けた。
黒い靄が、2人を包んだ。
それに------------と途端呟く。
「ヤツが俺の敵になろうとも、俺のデッキにはヤツのカードがある。ヤツが俺に託してくれた魂(カード)がな」
その言葉が、聞こえるか聞こえないかのうちにフジの姿は消えていった。
「フジ先輩……よく分かんねえけど、どっちにしたって仲間と傷つけあうなんて……哀しすぎるよ……」
ヒナタの言葉が届く前に。
***
「貴様……、今喋ったのか?」
4年前。初めて、《マキシマム・ザ・マックス》を手にしたときのことだった。本来なら、もう何枚か積むつもりだったこのカードをシングルで購入した際、このカードがふと自分にかたりかけてきたことに気付く。
「一つ問う」
マキシマム・ザ・マックスは響くような低いトーンの声でフジに語りかける。頭の中に直接。
「貴様は、強いのか?」
少し、質問の意図に戸惑ったが、フジはきっぱりと言った。
「ああ、強いぜ」
断言してみせた。仮に今、そうでなくとも
***
フジとマキシマム・ザ・マックスのデュエル。かつての相棒とこうして戦うことになったフジ。
だが、彼の性質上容赦はしない。
「しかし、珍妙だな。確認できた種族は装甲竜(アーマード・ドラゴン)を初めとして、水棲人(リキッド・ピープル)、悪魔(デーモン・コマンド)、天使(エンジェル・コマンド)、獣人(ビースト・フォーク)、その他諸々……」
まるで、統率された1つの軍隊というよりは、御頭によって疎らにかき集められた傭兵団のようだ。
しかし、いずれも目的は同じ。
”人間を喰らい尽くすこと”。
故に、超獣界に帰ったはずの相棒とどうであれ、再会することになったのだが。
「はっ、まあ良い。俺のターンだな」
鼻で笑い、フジは場を見渡した。シールドは自分が5、相手も5。場には誰もいない。しかし、ワンショットキルを本来の使い手とするフジは、一気に形成を立てていく。
「《シンカイタイフーン》召喚で手札と墓地を増やして、ターンエンド!」
「ぐおおおおああああ、《ピクシー・ライフ》使用、マナをブースト。《ガチンコ・ルーレット》でさらにブースト! ガチンコ・ジャッジを貴様に挑む」
向こうも容赦する気等ないらしい。
だが、最後に一言だけ掛けた。
「マキシマム・ザ・マックス……俺様のことを本当に忘れちまったのか?」
僅かな、残された希望に掛けて。
だが。答えは残酷にも-------------
「……誰だ、貴様は」
だった。
そうか。ならば仕方があるまい。
「ガチンコ・ジャッジ発動、我はコスト8の《真実の名 メガパウンダー・マック》」
「コスト8だぁ?」
--------全然スケールが小せえじゃねえか!!
大胆不敵、余裕綽々と言った笑みでフジは山札をめくる。
「俺様が捲ったのは、コスト10の《「武」の頂 マキシマム・ザ・マックス》だぜ!」
--------俺の、勝ちだ!
マキシマム・ザ・マックスは自身と同じ超獣を封じ込めたカードをみて、少し動揺していたが、すぐに笑みを零した。
「何をほざくか。貴様の切札は山札の下-------------」
「確かにな。俺のターン、《メッサダンジリ・ドラゴン》召喚だ」
ターンエンド。
マキシマム・ザ・マックスのマナは既に7。そして-----------
「呪文、《セブンス・タワー》を使用してメタモーフこみで3枚加速。ターンエンドだ」
「俺のターン、んでもって《クリスタル・メモリー》で山札から1枚を手札に。そして、《怨念怪人ギャスカ》召喚。効果で俺は自分の手札を全部捨てる」
「はっ、自分から死にに急ぐとは愚かだな、貴様!!」
墓地に落ちたのは、《魔龍バベルギヌス》と《マキシマム・ザ・マックス》の2体。
しかし、手札は同時に0枚になってしまった。
マキシマム・ザ・マックスは吼えると、すぐさまクリーチャーを召喚する。
そう、自分自身を。
「呪文、《ミステリー・キューブ》。効果で山札をシャッフルし、最初に捲れたクリーチャーを出す。ふははは、私自身を召喚。そして-------------」
------------呪文、もう一度《ミステリー・キューブ》。
再び現れる巨大な影。緑の箱から現れるは--------
「《永遠のリュウセイ・カイザー》召喚!!」
最悪の権化。(この状況では)スピードアタッカーとなる上にタップインの追加。しかも、このターンで一気にシールドを持っていくつもりだ。
「《マキシマム・ザ・マックス》でワールド・ブレイク!!」
シールドが全て吹っ飛んだ。
しかし。
フジのほうに運は味方したようだった。
「S・トリガー、《スパイラル・ゲート》で《リュウセイ》をバウンスだ!!」
「何!?」
ギリギリのS・トリガー。
とどめを刺しそびれた。
しかも、次はフジのターンだ。そう。準備を完全に整えた、フジのターンだ。
「俺のターン。行くぞ。《インフェルノ・サイン》詠唱!! 効果で墓地からぼちぼちコイツを召喚だぁぁぁ!!」
現れるのは、《魔龍バベルギヌス》。そして、己が身を自ら滅ぼすことで、究極の頂点が現れる。
「制圧し、世界を破壊しつくすゼニスは我が一人!! 怒りのままに咆哮せよ、激震せよ、超克せよ!! 《「武」の頂 マキシマム・ザ・マックス》召喚!!」
「武」の頂 マキシマム・ザ・マックス P(R) 無色 (10)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 12000+
パワーアタッカー+12000
ワールド・ブレイカー
エターナル・Ω
ついに現れたフジの切札。そして、友情のカード。
本来なら、召喚酔いで動けないところを《メッサダンジリ・ドラゴン》の効果でスピードアタッカーとなっている。
「もう、元には戻らないんだな---------------俺様の《マキシマム・ザ・マックス》で貴様の《マキシマム・ザ・マックス》を攻撃。そして、アタック・チャンス発動。《天頂秘伝 ゼニス・レクイエム》っ! さっき、貴様が割ったシールドが、貴様の首を絞めることとなるのだ!! そして、効果でアンタップ」
バトルに勝ったため、再び起動する《マキシマム・ザ・マックス》そして、その刃はかつての友にして、目下の相手へと向かう!!
「ワールド・ブレイク!!」
シールドが全て吹き飛んだ。
そして--------------
「《メッサダンジリ・ドラゴン》で」
ダイレクトアタック。
衝撃がマキシマム・ザ・マックスに襲い掛かり、消し飛ばした。
刹那-----------彼が直前に手にしていた手札を見る。
シールドから加えられたカードの中には、《ナチュラル・トラップ》の姿が。
憤りを感じた。
直前で、彼は----------マキシマム・ザ・マックスは記憶を取り戻していた。
そして、フジを勝たせるためにわざと----------------
腹が立つ。
ふざけるな。
相棒だったからこそ、全力で自分を潰しに来て欲しかった。
「フジ……すまない。だが、貴様にこの世界を-----------」
「はっ、バカ野朗、んなこと聞いてるんじゃねえよ」
目じりが熱い。
目の前の巨人は、どんどん体が粒子となって消えていく。
「何でッ、何で最後に手を抜いたァーッ!!!」
虚しい叫びと同時に、巨人と空間は消え去った。