二次創作小説(紙ほか)

エクストラターン20:絶望への反逆 ( No.312 )
日時: 2014/04/12 20:46
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「ウム……我は一体、何をしていたのだぁ……」

 半身が消えかかっている巨人は起き上がった。目の前には、見覚えのある少年の姿。少し、膨れっ面気味ではあったが。

「フジ……迷惑を掛けてすまなかったな」

 申し訳なさそうに、マキシマム・ザ・マックスは呟いた。
 しかし、フジの拳は震えている。
 そして、一喝した。


「この大馬鹿野郎がッ!!」

 
 その場に居た全員が、ビリビリと電撃の如く肌が痺れるような感覚を覚えた。
 フジの表情は、怒りそのもの------------と思われた。
 が、違った。

 -----------泣いている?

 だが、必死に堪えていた。涙が溢れるのを。
 相棒とこんな形で会ってしまったという、複雑な心境は喜びとも怒りとも悲しみともとれなかった。

「勝負云々の問題だけじゃねえ!! マックス、お前は何でこんなことになるまで俺を頼らなかったんだ!! 何で、貴様のようなヤツが、竜神王の犬になっているんだ!!」
「……すまん」

 巨人は一度、頷くとすぐにフジが手に持っているカードの中に、吸い込まれたかのように消えた。
 直後、声が響く。

「カードの中からで済まぬ。だが、人間界ではこの中のほうが力を使わずに済むからな」

 それに、今の状態で外に出たままでは消滅してしまっていただろう。

「いや、もう俺らは慣れてるから……」

 ヒナタは、辟易したかのように言った。

「カナデも久しいな。シントとテツヤも元気か?」
「はいです。 あたしは皆とは別の中学に行っちゃったけど、文通で元気なのは知ってます!」
「マックス。話は飛行機の中で聞く。今は休め」

 そして、フジはヒナタ達の方に向き直ると、言った。

「お前ら、飛行機に入れ。多分、もう襲ってくるクリーチャーはいないだろうよ」
「あ、待ってくださいよっ!」

 こうして、大阪での一件は幕を閉じたのだった。

 ***

 空を飛んでいる中、ようやく自己紹介となった。
 耳がキリキリ痛むヒナタであったが。

「改めて、紹介しておく。水澤カナデ、聖(セント)羽衣決闘学院の三年生。彼女の映像編集に解析、データ収集の技術は非常に高い。皆、よろしく頼む」
「はいっ! 皆さん、よろしくおねがいしますねっ!」

 健気に振舞う彼女。
 さて、ここからが問題だ。
 カナデはノートパソコンをプロジェクタに接続して、壁に投影する。
 と、画像が出てきた。
 そして、照明が消えてはっきりと見えるようになる。

「見ててください、この画像には竜神王---------------それも、アングバット・アンカラゴンがオーストラリアのキャンベラ街を襲っているシーンをニュース中継した映像なんですけど……」

 大口を開けて、人々を喰らっている姿が確認できる。
 胸糞が悪い。
 ヒナタは、反吐が出るかと思った。
 リョウが喰らわれたときの事を思い出したのだ。

「ったく、閉じてください! こんな映像がどうかしたって言うんすか!」
「どうかするんですよね〜それが」

 カナデは、もったいぶるかのように言った。


「食べられちゃった人々に、”助かる見込み”がある可能性が見出せたんですから」


 全員に衝撃が走った。
 -------------助かる? リョウが? 食べられちまった人たちが?
 ヒナタはカナデに向かって突撃していく。

「本当なんですかっ! じゃあ、早く方法を!」
「わっわっ! 揺らさないでくださいよぉ!」

 しかし--------と彼女は続けた。

「方法が見つかった、というのではなくって、あくまでも食べられた人々が死んでいないというだけです。この画像を見てください」

 拡大すると同時に、画像も鮮明になっていく。彼女の編集技術のおかげだろう。アンカラゴンの腹部に迫った。そこにはガラスの如く透き通ったようなパーツがある。
 凝視するヒナタとコトハ。
 すると----------その部分に人の顔が見えた気がした。
 思わず、コトハは仰け反った。

「あ、あの……これって……」
「よくやったな、カナデ。その件についてはマックスが既に知っているとの事だ」

 フジがしゃしゃり出てきた。
 それを聞くと、落胆するカナデ。

「ふぇ!? あたしの映像解析、もしかして意味無かったんですかぁ!?」
「まあ、待て。頼むぞマックス」

 ああ、と答えてカードの中の巨人は喋り始めた。

「長くなるから、覚悟しておけ。トイレには行ったか? つーか、下等なお前らに理解できるかどうか分からんが」
『今更上から目線キャラを作ろうとすんなバカ』

 このとき、初めて全員の台詞が一致したのだった。

 ***

 -----------古来------------竜神王とは、あらゆる宇宙を管理する絶対にして聖なる存在として崇められていた。
 ここで言う宇宙とは、パラレルワールドのことだ。
 例えば、ある宇宙の地球にはデュエマが存在するが、ある宇宙の地球にはデュエマがなかったりもする。そして、ある宇宙には地球すら存在しない、なんてこともある。
 お前達が知っているアウトレイジやオラクルなんかも、我々から見れば未来のクリーチャーだ。しかし、過去・未来構わずあらゆるクリーチャーが存在する世界がある。それが超獣界。異なる時間が1つの空間に存在する、きわめて珍しい世界なのだ。
 話がずれたな。
 それら全ての宇宙を管理しているのが竜神王だ。
 とは言え、全宇宙に一度に力を及ぼすほど竜神王の力は高くない。あくまでも、奴らの持つ8つの目が全ての宇宙の光景を見渡すことが出来るというだけだ。
 しかし、そこに宇宙の秩序を乱すような事件があれば、すぐさま駆けつけて沈静させるだけの力は持っている。
 竜の持つ”力”。
 神の持つ”権力”。
 この2つを併せ持つのが、竜神王だ。

 さて、ここからはリキッド・ピープル共のアカデミーを脅して聞き……いや、何でもない。受け売りなんだがな。
 竜神王は昔、1つのクリーチャーを封じ込めた。
 その名も、《邪念因子》。宇宙を再び無に帰して作り変えようとしたとんでもないヤツ-------------いや、正確に言えばあらゆる悪意やマイナス感情の集合体が、具現化したクリーチャーだ。
 それを、竜神王は封じ込めた。
 己の体の中にな。

 今度の黒幕は、竜神王を何らかの方法で操っているんだ。
 そして、この宇宙で最も歪んだ感情を持つ生命体----------人間の絶望の感情を喰らうことで蓄積させて、《邪念因子》を復活させようという魂胆だろう。
 絶望が限界まで蓄積したヤツは今、反乱分子を皆殺しにするために、超獣界の穴をこの世界に繋いだ。そして、洗脳の催眠を掛けて、俺達を送り込んだって訳だ。
 ちなみに、竜神王は、喰らった者を”元の形”でフリーズさせる能力を持っている。邪念因子も同じような要領で封印された。だから、中に居る連中は無事だろう。

 さて、今回の一件は何が何でも阻止しなければならない。

 さもなきゃ、全宇宙はお終いだ---------------。