二次創作小説(紙ほか)

エクストラターン21:決戦の舞台へ ( No.313 )
日時: 2014/04/13 14:16
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

***


 時は少しさかのぼり、海戸ニュータウン中央病院周辺の港。オプティマスとのデュエルに敗れたテツヤは、空間から投げ出された。
 駆け寄る天川。

「だ、大丈夫かテツヤ!」

 しかし、彼は何も言わない。左胸に手を当てる。胸の鼓動は全く感じられない----------と思ったら、彼は右胸心だったのを思い出して再び鼓動を確認すると、確かに息はあることが分かった。

「くそっ、どうすれば……」

 恐らく、ジェイコフ達はまだ来ないだろう。
 ここは、自分が戦うしかない---------。
 と、飛び掛ってくるクリーチャー達に目をやった時だった。
 咆哮。耳が張り裂けんばかりの、雄雄しき咆哮が聞こえる。
 それを聞いた途端、クリーチャー達の動きは止まり、次々にディメンジョン・ゲートの穴へと帰っていく。
 オプティマスも、我をようやく取り戻したのか、倒れた直後、テツヤのデッキから散らばったカードの中へと帰っていく。


「智を司る私に、あの程度の洗脳は無意味--------------久しいなスプラッシュ」


 その影は、《「智」の頂 レディオ・ローゼス》だった。

「ローゼス! 君なんだね!」
「嗚呼、私だ」
「もうすぐ、仲間のヘリが来るんだ! そこで、今何が起こっているのか教えてくれ!」

 天川のかつての相棒、ローゼスは智を司る。故に、洗脳には掛からず、逆に洗脳を解く手段も見出したのだった。

「僕と共に、戦ってくれるかい?」
「勿論だ」

 そう言うと、レディオ・ローゼスは光の粒子となって、カードの中へと入っていった。

 

 そして、何十分かが経った。ジェイコフのヘリは無事、港へ到着した。
 こうして、ジェイコフ達もようやく決戦の地、エアーズロックへと駒を進めようとしていたのだった。

 ***

「重すぎる……」

 ヒナタは呟いた。窓を見れば、もう夜だった。明日にはオーストラリアに着いている筈だ。
 −−−−リョウが生きているのは嬉しかった。だけど、宇宙全部の危機なんて、俺には絶対ムリだ……。

 だが、デュエマで世界が救えるというのならば。
 あらゆるクリーチャーが実体化するには、この世界では一定の手番を踏まなければならないらしい。
 即ち、デュエマによる決められたルールで召喚すること。
 邪念因子が復活する唯一の方法で、唯一の倒すチャンス。
 −−−−俺のデュエマで世界が救えるのなら。

 勝たなければ、ならない。

「なーに、神妙な顔しとるんじゃ」

 ドラポンの声が響いた。

「うおっ、お前居たのか! −−−−−何話振りだ?」
「メタいわアホっ! やめんか、それ!」と返された。
「あんなぁ、ヒナタ。おんしはバカじゃ」
「ああっ!?」

 いきなりバカ呼ばわりされて、キレるヒナタ。
 「だからな」と続けるドラポン。


「そのバカが、デュエマで勝つこと以外を考えてどうすんじゃボケ!」


 デュエマで勝つこと------------そうだ。負けることを考えちゃ、いけないんだ。
 勝つためには、どうすればいいのか。
 それを考えることが、今の自分に出来ることだ。

「よーしっ! やるかっ!」

 景気付けるように、ヒナタはにっと笑って見せたのだった。

 ***


 夜は明けた。コトハに揺さぶられて起きるヒナタ。
 窓からの景色は、青い空が広がっている。だが、下のほうには禍々しい黒い渦があった。
 見ているだけで、吸い込まれてしまいそうな程、ぽっかりと開いてしまっている。

「着いたわよ……オーストラリア、エアーズロック頂上-------------」

 誘っているのか、それとも----------。

「おはよう、てめーら起きたか」

 フジが、手を振ってやってくる。

「今日、俺らがやることはたった一つだけだ」

 フジは口元を吊り上げた。


「こんなかに飛び込んで、黒幕をぶっ飛ばしてくんのさ」


 ***

 気付けば、朝だった。
 シントは目を擦って天を仰ぐ。
 昨晩は激闘が続いた。襲い掛かるクリーチャーを倒していく。
 何が起こっているのか、全くわからなかったが、フジに連絡したところ、何が起こったのかはすぐにわかった。
 竜神王という、敵の出現。
 いや、そのバックに隠れている敵の出現だった。

「俺は……何やってんだ」

 カードを1枚、手に取る。
 《竜魔神王バルカディア・NEX》。シントの最強切札。かつて、シントと共に戦った相棒だ。
 しかし、その魂は今、超獣界に帰ってしまっている。
 だから、実体化などしなかった。
 それでも、万が一クリーチャーに襲われたときの保険として、決闘空間を開けるようにはしてもらったのだった。
 
「今-----------どこにいるのかな」

 と、その時だった。幾つもの咆哮と共に、一度に大量のクリーチャーが現れる。
 アーマード・ワイバーンと思われる飛竜の群れが、一気に降下してきたのだった。

「はは、本格的にやべーな」

 自嘲するように、笑った。デッキケースを構える。
 しかし、疲れて最早命がけのデュエルをする余裕など無い。

 その時だった。

 アーマード・ワイバーンたちの体が、真っ二つに切り裂かれる。

 そして、背後には巨大な影。
 
 この感覚は-------------

「NEX!! 助けに来てくれたんだな!!」

 黄金の鎧に身を包んだ、伝説の龍。その名も、《竜魔神王バルカディア・NEX》。ここで、来てくれるとは思わなかった。
 シントの呼びかけに、咆哮で答えるNEX。言葉は通じなくとも、2人の絆はとても強いものだった。

「竜神王の居場所が分かるんだな?」

 NEXは確かに頷いてみせた。
 
「んじゃ、頼むぜNEX!!」

 咆哮とともに、2人は天空へと舞い上がる。
 竜は少年を背に乗せて、最後の決戦へと向かう-----------------。