二次創作小説(紙ほか)

エクストラターン22:立ち塞がる無法の王 ( No.314 )
日時: 2014/04/19 07:50
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「えーっと、フジせんぱーい? こん中入るの俺ら」
「入るんだ、行って来い馬鹿」

 ゲシッ、とフジがヒナタの尻を蹴る。危うく、落ちる所だった。
 危ない。
 突風が吹いて、唯でさえ危険だというのに。
 
「危ないじゃないっすか!! 仮にも、ここ空の上ですよ!?」
「うっせぇ、どうせ死ぬか生きるかは半々だ、とっとと穴ン中落ちて来い」
「あれぇー? おっかしいな、母さん、悲しくないのに涙が出てくるよ」
「それは単なるアンタの高所恐怖症」

 コトハのブルーなツッコミが決まったところで、自家用ジェットは穴の中へとどんどん近づいていく。
 と、そのときだった。影が横切る。
 そして、カードの中の《マキシマム・ザ・マックス》が叫んだ。

「気をつけろ!! ヤバい気配が直ぐ近くに2つもあるぞ!!」

 刹那、羽ばたく音が聞こえた。そこには、ヌンチャクを構えた竜人の姿。もう1つは、闇の渦から突如顕現し、黒いマントを羽織って杖を構えた亡者だった。
 しかし、今はどちらも正気を失っているようだった。

「《ジャッキー》はんに《ブルース》っちゃ……!」

 ドラポンが、露骨に怯えた様子で言った。
 その時、ジャッキーはヌンチャクを振り回してこちらへ向かってくる。領域への侵入者をここで撃墜するつもりだろう。

 --------------つーか、危ねぇ!! 落とされる!!

 間、一髪。
 ヌンチャクが機体に届く直前に、決闘空間を開いたヒナタであった。
 黒い霧が広がって、ヒナタの姿が消える。

 ***

 しかし、驚いたのは、2体を同時に相手取ることになったことだった。ヒナタは、思わず後ずさる。
 現実のカードとしても、ビクトリーの称号を持つ2体だが、今は無法の皇と帝として戦っている。
 現在、互いにシールドは5。場は、ヒナタが《一撃奪取 マイパッド》に対し、ジャッキー&ブルースは《戦略のDH アツト》を場に出している。

(墓地ソース……だな。マナのカードが《モールス》と《フェイト・カーペンター》なのを見ると。だけど、そのデッキでどうやってアイツらを出すつもりなんだ?)

 ヒナタは怪訝な顔をすると、手札を引いた。仮に、今目の前で戦っている2体を出すとして、どうやって召喚するのか。
 《ジャッキー》は、記憶が正しければコスト8のアウトレイジ版《バルガライザー》。さらに、呪文の手打ちを実質的に封じる。
 《ブルース》は、無法者、人形を墓地から召喚できるようになるだけではなく、自身も墓地から現れるということ。
 いずれにせよ、互いにデッキは墓地ソースだということだ。
 しかし、少々デッキの仕組みが違う。
 ヒナタの場合、火水のみで組んだ《スクランブル・タイフーン》型。
 一方の相手の場合、火水に闇を加えた《ホネンビー》型だろう。

「よし、お前の出番だ! 《日曜日よりの使者 メーテル》、来い!」

日曜日よりの使者(ビューティフル・サンデー) メーテル P 水/火文明 (4)
クリーチャー:アウトレイジ 3000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
自分がカードを1枚引く時、1枚のかわりに、2枚引いてから自分の手札を1枚捨ててもよい。

 こちらも、負けじと墓地を増やす。
 だが、ジャッキーとブルースも負けてはいない。

「ブルァァァアアア!!」

 咆哮したブルースの手が振るわれると同時に、《埋葬の守護者 ドルル・フィン》が現れた。

「くそっ、厄介なヤツが出てきやがった!」

 ヒナタからすれば、このカードは邪魔なブロッカーでしかない。後は、《ドルマークス》の餌食にして墓地を一気に増やす戦略をメインとしていたからだ。
 しかし、この場合は違った。少なくとも、弾除けではない。
 だが、ヒナタはまだこのことに気付いていないのである。

「俺のターン!」

 カードを引く。と、このときに《メーテル》の効果が発動する。カードをかわりに2枚引いて、1枚を墓地に落とすことが出来るのである。
 墓地に落ちたのは、《トップギア》。

「お前の番だ! 召喚、《マイパッド》の効果でコストを1下げて《フェイト・カーペンター》ッ!!」

 手札を2枚引いて2枚墓地へ落とす。落ちたのは、《シンカイタイフーン》に《ザ・クロック》。さらに、これでは終わらない。

「呪文、《エマージェンシー・タイフーン》で2枚引いて1枚落とす!」

 墓地に、《キューブリック》を落とすも、能力は発動しない。
 この状態では、まだ墓地はたったの4枚。一体、何をこのターンでやったのか、という話だが……。
 ”引く”ということ、これがポイントだった。

「G・ゼロ発動! 俺はこのターン、手札を6枚以上引いたため、こいつをただで出すぜ!」

 そこで吹き荒れるのは、炎の嵐か、激流の竜巻か。否、自由を求める無法のハリケーンだ。

「無法者の鼓動を聞け。巻き上がる炎、渦巻く水流! マッハ億万の轟く速さを目にせよ! 《天災超邪 クロスファイア2nd》召喚だぜ!」

 一気に奇襲をかけるヒナタ。

「いっけえ! 《2nd》でW・ブレイクだ!」

 だが、《ドルル・フィン》で防ごうとはしない。その後も、《メーテル》でシールドを割るも、全く動じる様子はない。

「ちっ、ターンエンドだ」

 何を考えているのか。
 だが、ようやくそれが明らかになる。

「グオオアアアア!」

 突如、ジャッキーがヌンチャクを振り回し始めた。まだ、バトルゾーンに出ていないにも関わらず、だ。
 直後、場に居た《アツト》と《ドルル・フィン》が破壊される。と、同時に山札から5枚が墓地に送られた。
 さらに、墓地からは1体の死龍が姿を現す。

「《偽りの名 ドレッド・ブラッド》を墓地からバトルゾーンへ出す……ブルァァァァア!!」

偽りの名(コードネーム) ドレッド・ブラッド P 闇文明 (7)
クリーチャー:ドラゴン・ゾンビ/アンノウン 9000
自分のターンのはじめに、このクリーチャーが自分の墓地にあれば、自分のクリーチャーを2体破壊してもよい。そうした場合、このクリーチャーを自分の墓地からバトルゾーンに出す。
W・ブレイカー

 味方の魂を喰らって、墓地から這い上がる死の侵攻者。
 さらに、まだまだ連鎖は続いた。

「呪文、《ヒラメキ・プログラム》で《ドレッド・ブラッド》破壊!」

 刹那、無法者の姿が顕現する。
 圧倒的な殺気。

「な、何が起ころうとしてるんだぁ!?」
『ヤバいっちゃ、ヒナタ! 今度こそ、本当に!』

 死の国の帝と、無法の皇。
 この2体が現れれば、どのような惨事になるのか、ヒナタには想像も付かなかったのだった。