二次創作小説(紙ほか)
- コラボ短編:last smile (2) ( No.317 )
- 日時: 2014/04/27 22:00
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
終業式が終わり、下校時刻が終わった直後。全員は、あたかも家に帰ったかのように見せかけて、直ぐに学校の中へ戻っていた。
最後に、クラスでシオと一緒に何かしたい。それを考えるために。
ヒナタ曰く、今回の作戦は
「良いか、良く聞け。名づけてな、『シオを笑顔で送り出すためのさよならパーティしたいけど、取り合えずオメーラ脇役だから黙って俺の言うこと聞いてシナリオどおりに動きやがれコンチクショウ作戦』だ」
ということだったので、
「作戦名長すぎだし、おめーは何様だあああ!」
自信満々に作戦名を述べたヒナタに、クラスの面々がいきり立って突っ込みを入れる。
さて、男子共が騒然に包まれている間に女子達は持ち前の団結力で、1つの結論を出したのだった。
「シオちゃんも楽しめて、アタシ達も楽しめる事っていったら、アレしかないわよね?」
「あ、コトちゃん分かってる?」
女子の1人が、お前の考えなど見え透いてるわという自身あり気なコトハに話しかける。
「そうっ! 人生ゲーム!!」
「予想の斜め上を言った!? 大丈夫、コトちゃん!!」
「冗談よ、分かってるって。おーい、馬鹿男子ぃー! アタシ達が、もう決めたわよ」
コトハが進み出て、叫んだことにより、男子共の動きは一気に止まった。
「あ、何に決めたんだ? 俺らは一応、最後にサッカーや野球を」
「アンタ達馬鹿でしょ、シオちゃんがスポーツ出来ないの知らないの」
「……忘れてた」
「はい、馬鹿決定。アタシ達、もうこれに決めたから。勿論、アンタ達も楽しめる内容をね!」
コトハは、自信満々に言った。
「最後に、クラスでデュエマ大会すれば良いのよ!」
……。
男子達は固まった。あまりにも不自然な光景なので、思わず女子達は口々に尋ねる。
「いや、どうしたのよ」
「お前らにしては、いや、なんていうか、ボケ抜きで来たな〜って」
「毎回毎回ボケてんのは、むしろアンタじゃないのよ!!」
何処から持ってきたのか、今もシュッシュッと磨かいているハリセンをヒナタに喰らわせるコトハ。
スコーン、と小気味の良い音が聞こえた。ヒナタは頭を抑える。
そんな光景を、1−Eの面子は、また違った視点で見ていた。
「ねえ、あの2人見てると、夫婦漫才見てるみたいよね」
「ほんと、仲良いわよね」
「実はアイツら付き合ってるんじゃね?」
「あ、奇遇ですね。僕もそう思っていたんですよ」
「同感だ。僕も同じく」
全員は思った。
(微笑ましいつーか、仲良いなー)
「いだだだだ!!」
「え!? 何!? 今何つった!? もう一回言って見なさい、馬鹿ヒナタ!!」
***
「近づけぇ〜、ブリロー彗星ぇ〜」
「あの、シャンツァイ様? 好い加減、パ○ガスの真似ばっかしてないで、直接攻め込めば良いものを」
「ふははははは、この彗星を使って、こんな星滅ぼしてくれる、見ろぉもう彗星が近づいている!」
喋るのは、鎧を身に纏ったクリーチャーだ。しかし、マントを羽織っているところ、どうやらオラクルのようだった。
《破戒のインガ シャンツァイ》。それが、彼の名前だった。そして、近くに居る神官らしきクリーチャーは《浮魂ターメリック》だった。
その手が、ピッとホログラムモニターのようなものを投影する。地球の外の映像らしかった。
そして、一気に彗星が音もなく地球へ。どうやら、ブリロー彗星と呼ばれるその彗星の大きさはハンパがない。地球がスイカならば、彗星はりんごである。それほどの大きさの彗星が接近しているのである。
ちなみに、断じて”ブ「ロ」リー彗星”ではない。”ブ「リ」ロー彗星”である。
だが、彗星の大きさは徐々に小さくなっていくのが分かる。砕かれ、穿かれ、燃え盛り、どんどん元の大きさより小さくなっていく。
彗星は大気圏に突入して燃え盛ったかと思えば、すぐに塵となって消え去ったのだった。
場が一気に白けた。
「……分かってたよ、分かってたよ!! 彗星如きじゃ、地球が落とせないことぐらい! てゆうか、彗星衝突したら我らも死ぬし!!」
ようやく、現実を見ることが出来たのか、シャンツァイは肩を落としたのだった。
「シャンツァイ様、気を御鎮めください。コンピューターが弾き出した計算によりますと、制御なんたらは正常ですじゃ」
《信託の守護者 胡椒》が古めいた機械を見て語る。
「お前までソッチのネタに走らなくて良いんだけど?!」
『何時まで騒いでいる……余は煩くて眠れぬぞ……』
冷たく、冷酷な声が聞こえる。白く、長い髪に羽根が生えたような独特の容姿。
白きマント、そして統率者の荒ぶる気迫は正しく本物-------------------これが、《神人類 ヨミ》の真の姿だった。
ヨミは以前。レンに憑依して戦い、そしてディアボロスを復活させて自滅した-----------ように思われた。
だが、彼は生きていた。
それは、肉体の完成と同時にオラクルの魂魄蘇生術で見事この世に再び復活することになったからである。
しかし、今はその力を100%全て充填しきったわけではなく、こうして再起の時を待っているのだった。
その時は刻々と近づいている。
ヨミはふと、鎧竜の周辺に意識を飛ばした。憎き暁ヒナタの気配を探り、いつでも襲撃を掛けられるようにするためである。
ヤツだけは、この手で殺さなければ気が済まない。
と、そこに妙な気配を感じた。
ドス黒いような、だが逆に黒すぎて澄み切った感じの気配だ。
「ほほう、面白い。ヤツは確か、暁ヒナタの同胞-----------------」
***
当日、3月23日。ヒナタ達は、着々と教室に会場の準備を施していた。
「デュエマ大会開くのはいいとしてさ、サプライズでどうやってシオを誘うんだよ」
「手は打ってある」
ヒナタの疑問にレンが答えた。まさにそれが、会心のアイディアであるかのように。
ほら、もうすぐ来るぞ、皆隠れろ、というレンの言葉にヒナタ達は急いで机の下に隠れる。来たところを一気に飛び出して、驚かそうということだ。
「さっきの質問の答えだが、コトハに忘れ物を一緒にとりに行って欲しいという名目で一緒に着いて来させる作戦だ」
すると、声が聞こえる。シオと、コトハの声だった。
「先輩、忘れ物くらい自分1人で-------------」
教室の戸が開く。彼女の姿が確かに見えた。
刹那、全員は飛び出して叫んだ。デッキケースを掲げて。
『デュエマしようぜ、シオッ!!』
大勢が一気にシオの目の前にやってきた。
シオは一体、何が起こったのかわからない、といった様子で呆然と立っていただけだったが、次第にどういうことか分かったのか、口を開いた。
「せ、せんぱい……」
黒板には、カラフルな文字で”今までありがとう、シオちゃん”や”離れてもずっとデュエ友だぜ”などそういったメッセージが沢山。
信じられないような、嬉しいような、色々混ざった感情が、彼女を覆い尽くしたのだった。