二次創作小説(紙ほか)

コラボ短編:last smile (7) ( No.328 )
日時: 2014/08/25 18:30
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

「はは、消えていったか」

 嘲笑するレン。それは自分に向けられたのか、あるいは------------目の前の敵に向かってか。
 ああ、もうどうしようもない。
 目の前の輩はどうかなってしまっているみたいだ。いや、さっきから自分でも引くくらい、笑い続けている自分もどうかしているのだろう。

「はは、はははははははははははははははははは!!」

 久々ニ切レタ。コンナ感情ハ久シブリダ。

「ぶっ潰す、ぶっ潰してくれるわ、貴様ァー!!」

 爆発した。怒りが、全て一気に力へ代わる。
 カードを引く。
 そして、ギラリと目前の敵に照準を合わせる。

「《真実の名 修羅丸》でシールドへ攻撃! アタックチャンス、《破界秘伝 ナッシング・ゼロ》で3枚を見て、その中の無色カードの数だけ、ブレイク数を上げる! 捲られたカードが《戦慄のプレリュード》、《メガギョロン》、《神青輝 P-サファイア》だから、《修羅丸》はシールドを5枚ブレイクする!! その後、《サファイア》を一番上にして山札へセット!」

 シールドが一気に叩き割られた。その中からシールド・トリガーが炸裂する。

「シールド・トリガー発動です。《デーモン・ハンド》と《阿弥陀ハンド》でクリーチャーを全滅」
「その程度か?」

 嘲笑した。何故ならば、まだ《修羅丸》のアタックトリガー効果があるからだ。山札の一番上が捲られた。
 当然、そこにあるのは唯一つ。



「伝説の鎧龍よ、その名を歴史に刻み込め!! 蒼き魂を込め、偽りの神々となって光臨せん!! 《神聖輝 P-サファイア》」


 
 とうとう現れた伝説の龍。怒りの咆哮が響き渡る。


「これでジ・エンドだ。スピードアタッカー、《サファイア》でダイレクトアタック!!」


 ゴオオオと吹き飛ばすかのような咆哮が響いたかと思えば、空間ごと、そして目前に在る神ごとすべては消滅した。

 ***


「シオ、大丈夫か!」

 慌てて駆け寄るレン。スミスがやられた怒りで、ついカッとなってやりすぎてしまったか。

「逃げてください、先輩……私、ようやく思い出したんです。教団の刺客が昨晩襲ってきて、ブータンもやられてしまって……それで、貴方達に精神的なダメージを与える為に、私を向かわせたんです。」
「喋るな、保健室に連れて行く」

 彼女は首を振った。このまま、まだ喋らせてほしいということか。

「嘘の記憶を上書きして……痛い……もう、ぼんやりしてきました、このまま記憶の全部がぼうってしていって……”月夜野シオ”が消えていく……」

 涙を瞳に浮かべて、彼女はすすり泣く。

「もういい……そのまま全部忘れてくれ」
「ありがとうございます、せんぱい……こんな私を最後まで……」
「馬鹿が、死ぬわけじゃない-------それに、貴様を結果的に傷つけてしまった」

 一瞬、微笑んだかと思うと、彼女の瞳が閉じた。今までレンが見たことが無いくらいの笑顔だった。死んだわけじゃない。分かってる。彼女の胸の鼓動は確かに聞こえる。
 何を言っていたんだ自分は。死ぬことより、全部忘れてしまうほうが辛いのに……。
 そして、忘れるより忘れられた方が何倍も辛いのに----------------。


 ***

 事件は彼女の事を考えて、闇に葬られた。彼女は未だに目を覚まさない。ヒナタも頭に巻いた包帯を自分で笑っていた。
 ただ悲劇は、彼女が目を開けた途端、今までの事を全部を忘れてしまっていることだろう。
 彼女が出発する日まで、後3日だ。
 現在、ヒナタとレンはとある喫茶店に居た。日当たりの良い場所で、中高生から大人まで、色んな人が来る。レンは紅茶、ヒナタもコーラを啜りながら、話をしていた。

「……お前も大変だったな、レン」
「スミスも消滅してしまった。だが、今の僕には《ボルメテウス》……いや、《サファイア》がいる。というか、喫茶店に来てまで炭酸を飲むな」
「うっ、うっ、すーみーすー」
「泣くなドラポン」

 カードに入って泣いているドラポンをヒナタはたしなめたが、気持ちは痛いほど分かる。
 仲間を失った悲しみは、アウトレイジでも人間でもとても大きい。

「だが、だからこそだ。《サファイア》を貴様に託す」
「えっ!?」
「今の僕にはそれは必要ない。それに---------シオの仇討ちはシオから貰ったカードでやりたい」
「ん? 何のカードを貰ったんだ?」
「これだ」

 レンはカードを差し出した。《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》のカードだった。

「あ? そーいやお前、アレか。闇文明に転向するとか言ってたな」
「ああ」
「シオに影響でも受けたか」
「そんなところだな」
「シオに惚れたか」
「ああ、そうだな……馬鹿! 違うぞ!」
「あ、そう。まあ、残念なことに、もうアイツは俺らの事を覚えていないんだろ?」
「悔しいな」

 すると、見知った人物が割り込んできた。

「めっずらしいわね。アンタらがカードショップ以外の場所にいるのって」

 コトハだ。彼女の物珍しそうな顔に、ヒナタが食って掛かる。

「失礼だな。俺らだって、デュエマばっかしてるわけじゃないんだぜ? 宿題もこの間、全部終わらせたからな」
「中学生が完徹とか良く無いわよ。それよか、武闘先輩がアタシ達を呼んでたけど」
「は?」

 ***

「突然呼び出して悪かったな」
「ほんと、今度何かおごってくださいよ」
「お前後で覚悟しとけ」

 ギラッ、といつものジト目で睨まれるヒナタ。このとき、彼は蛙が蛇に睨まれる気分を味わったような気になった。
 
「ここに3枚のカードがある」
「あー、ポケモン的なノリですか」
「お前、ほんっと後で血祭るからな!! ……さて、まずだがな、ヨミはヒナタ、お前を狙ってくるぞ」
「いっ!?」

 俺なの? と自分に指を指すヒナタ。コトハとレンは、大よそ察したようだった。
 
「話が飛びすぎですよ! ヨミがやっぱり復活したんですか!」
「その可能性が高い。教団の残党がやはり活動しているのが証拠だ。そして、次に現れるときは真っ先にお前を狙う、ということだ」
「何で俺!?」

 こんなのあんまりだよ、と叫ぶヒナタ。大体、何故ヤツが今になって復活したのやら、そこからであろう。

「そりゃそうだ、ヨミは以前、貴様に倒されているからな、ヒナタ」
「そして、向こうも力をつけて貴様を襲いに来るつもりだ。最初は月夜野シオの記憶を上書きし、オラクルに仕立て上げて貴様を襲わせた。結果は怪我を負わせた程度に終わったがな」
「程度って、これ結構痛かったんですよ!? 1針縫ったんですから」
「男が1針で文句言わない」
「そして、だ。この3つのカードの中で、好きなやつを手に取ってくれ」

 目の前には、火文明と自然文明、そして闇文明と思われるカード。

「嫌ですよ、これ絶対何かヤバいやつでしょ」
「うるさい早くしろ」

 フジに急かされたのもあり、3人はカードの目の前に立った。

「何だこれ、ただのスペックの低いバニラカードじゃないですか」
「まあ、良いだろう。フジ先輩のことだ、何かあるんだ」
「ヤな予感しかしないわ」
 
 直感というべきか、ヒナタは何か惹かれるものがあったので、火文明のカード、レンは闇文明のカード、コトハは自然文明のカードを手に取った。
 その瞬間、ドーム状に奇妙な歪んだ空間がカードを中心にして広がった。

「って、えええええ!?」
「いってらー、お前ら」

「何ですかこれえええ------------」という声とともに、ヒナタの意識はとんだ。