二次創作小説(紙ほか)
- コラボ短編:last smile (8) ( No.329 )
- 日時: 2014/05/17 20:54
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
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目を開ければ、そこは燃え上がる火山だった。熱い。非常に熱いし暑い。
目の前には、いきなりシールド、山札が展開されていた。デュエマをしろ、ということだが、目の前に立っているのは全身が炎に包まれた人型だった。
「だ、誰だお前!?」
「俺の名は、《太陽神話 サンライズ・アポロン》だ。今はもう、亡霊だがな。今からお前には、俺の試練に打ち勝ってもらう」
「亡霊? 試練?」
「そうだ。無法者と融合した俺を手にしたいなら、今から俺が作る人間----------この世界で本来俺が出会うはずだった人間と戦ってもらう。ここ、太陽山脈サンライト・マウンテンでな」
「あー、成る程ね。全く分からん」
「別の世界の俺は、今は誰かの手に渡っている。だが、既にクリーチャーとして死んだ身の俺は無法者に取り込まれ、今はこの姿になっている」
炎-----アポロンはそういった。
「さあ、戦え人間! 魂を燃やしつくし、目の前の試練に打ち勝って見せよ!!」
炎は形を作り、1人の少年の姿をかたちどった。背の高い少年だ。
「お前の相手は、こいつ----------空城夕陽だ」
「誰だよ?」
「未来で俺が出会うはずだった人間と言っただろ。もっとも、デッキと姿形だけで、意識を持っているわけではない。だが、行動パターンなどは本人に似せたつもりだ」
「まーいいぜ、デュエマなら負けねえ!」
意気込んで、ヒナタは踏み込んだ。しかし、ドラポンがいないことに気付く。仕方なく、別のデッキを取り出した。
***
「何ここ。森林?」
なんというか、居て気持ちの良い森だった。すると、一匹のクリーチャーが寄ってくる。
「かーわいい! 《緑神龍ドラピ》ね! うふふ、くすぐったいってば」
小さな龍がコトハに頬を摺り寄せてきた。とても可愛らしい。見れば、他にも巨大なアース・ドラゴンがいびきを立てて寝ていたり、スノーフェアリーが戯れていたりなど、のどかな場所だった。
すると、聞き慣れない声が聞こえた。
「あ、いたいた!」
少女だ。龍と戯れる少女が居た。へへっ、と子供っぽい笑みを浮かべて、じっとコトハを見据える。だが、心なしかその姿がおぼろげに見えるは何故だろうか。
まるで、実態が無いみたいだ。
「アンタ、誰?」
「私、ルピナ。この子はプロセっていうの。2人合わせて《萌芽神話フォレスト・プロセルピナ》。ここはね、ルピナがカードの中に作った幻想の故郷。ここで、ルピナに勝てたら、仲間になってあげるよ」
「あ、そういう感じなんだ」
「んじゃ、いっくよー」
すぐさま、シールドが展開される。
「ま、デュエマでクリーチャーに負けたことは……おえ、あんま思い出したくないかも」
ふと、オーロラがいないことに気付いた。ならば、と新しいデッキで挑むことにする。
「ニュー・カチュアシュートの威力、その目でしかと見なさい!」
「戦うのは私じゃないよー、この子」
この子、とはプロセとかいうドラゴンのことではない。宿木が絡み合い、人の姿をなした。正確に言えば、少女の姿か。小柄で、明るい髪の色をした少女だ。だが……。
「何よあの子……パッと見で分かるくらい、私より小さいのに、私より胸が大きいなんて……しかも、私より可愛い!?」
思春期の女子の悲しい性かな、自分より随分と小柄なくせに大きな胸のほうに興味が向かってしまったのだった。
「この子はねー、もしもルピナが生きてたら、この世界で出会ってた、”このみ”っていうとっても強い子なんだよー」
「誰が相手かなんて関係ない。良いわ。受けてあげる、試練ってヤツ!」
***
レンは館の中に居た。見てみれば、本棚に沢山の本が置いてある。
「えーっと、何だこれ。『兄に好かれる100の方法』、『兄を落とす小悪魔な女の子になれる1000の方法』、『お兄ちゃん娘に送る10000の好かれる方法』……って何だこれはぁー! しかも何だここは? 紅魔館か?
違うよな。間違ってもこれはデュエマ関係だよな? そうだよな!」
「アンタ、何やってんの。人の本棚を勝手に漁らないでくれる?」
ビクッ、と肩を震わせると、振り向く。そこには、驚くほどに美しい妖精のような女が居た。女が裸に纏う衣は、白から黒へのグラデーションのようなデザインで、右手には弓を構えていた。
「あ、えーと? パチ○リー・ノー○ッジさんじゃないよな」
「違うから。人違いだから。全然似て無いから」
即座に上げられた名前を否定する。
「あ、そーなのかー。で、貴様は何者だ? ここはどこだ? というか僕は誰だ? あ、黒鳥レンだった。というか、この本のチョイスは一体なん」
と言い掛けた途端、弓矢--------ではなく、手っ取り早いボウガンを向けられた。弓矢を持ってるんだから、それを使えば良いのに。
「言わないで、射殺すわよ。にしても、アンタ、ドライゼに似てるわねー、凛々しい顔の癖に軟派っぽいの」
「銃に似てるって言われても、全く嬉しくないな。それに、僕は余り女には興味が無いんだ」
「違うわ。私の部下の名前。----------ま、人のことは言えないけど、死んじゃったわ」
「死んだ? 貴様もか?」
怪訝な顔で聞くレン。
「ええ、そうよ。でも、今のあなたの力になってあげられる。ここは月魔館。この私、《月影神話ミッドナイト・アルテミス》の根城よ」
「紅魔館とそんなに変わらないではないか」
「違うから。あんたそのネタ使ったら、次は本気の弓矢で殺すわよ? さて、ね。私があんたと適性なのは、もう分かってるはずよ。そうじゃなければ、今頃悪夢にうなされている頃でしょう」
「怖いな」
「でも、あたしとの適性があってるだけじゃダメ。それ以上に強くなければならない。私の試練に見事打ち勝って見なさい。未来で私が出会うはずだった人間に勝ってみること、それだけよ」
次の瞬間、黒い闇の渦が人を形作った。だが、それはどんどん見覚えのある形へと姿を変えていく。
「な、貴様は-----------」
「あら。知り合い? まあ、会話なんて出来ないわよ。単に再現したに過ぎないから。で、彼女が--------------」
影が完全に人と成った。
「”御船”汐(シオ)よ」
***
かくして-----------ヒナタ達は、神話のクリーチャーの試練に挑むこととなった。
だが、彼らは知る。
今までのように、簡単には行かないということを。
神話の、そして神話の使い手の強大さを思い知ることになる。