二次創作小説(紙ほか)

コラボ短編:last smile (11) ( No.332 )
日時: 2014/05/17 23:35
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

「シオ、シオなのか!?」
「……誰ですか、思い出せないです」
「ッ……」

 やはり、記憶を失うのは本当だったのか。これはシオの未来での姿。そのシオが自分を覚えていないのは、やはりオラクルの記憶操作の反動か、あるいは-----------------

「彼女はある理由で記憶を失っているの。それも、鎧龍にいたころの1年間をね。脳に傷があるんだけど、それが少し特殊なのよ」
「クリーチャー、か」
「ええ。私知ってるわ。もう1人の私は多分知らないだろうけど、亡霊として度々カードから出入りできる私は知ってる。あなた、汐を倒したわね」
「は、ははっ、まあそうだろうな」

 ギリッと噛み締めた。彼女の未来だとするならば、やはり全部忘れてしまったのだろうか。
 レンは、呟くように言った。

「自分がやったのに、言うのもなんだが……人間の記憶力というのは、意外と曖昧だ」
「……何の話よ」

 アルテミスは怪訝な顔で返した。

「だから、ひょんなことで突然蘇ることだってある。僕は賭けるぞ。彼女が全部思い出す、という可能性に!」
「じゃあ勝ってみなさい! 彼女の幻像に! 忠告しておくけど、確かにこれは彼女の幻像であって、彼女ではない。だけど、性格、戦略、全て同じよ。勿論、記憶もね」

 アルテミスの忠告と同時に、シールドが展開された。デュエルが始まったのだ。

 ***

「僕のターン、《コッコ・ドッコ》召喚! こいつは、自分のコマンド・ドラゴンの召喚コストを2下げる代わりに、コマンド・ドラゴンが出た瞬間、死ぬ罪人(ファンキー・ナイトメア)だ」
「知ってるです」
「まあな。だが、一応説明したまでだ」

 闇のコマンド・ドラゴン。それが彼のコンセプトだった。

「じゃあ、私のターンです。《電脳封魔マスクヴァル》召喚です」

 最初に彼女が鎧龍に入ってきたときと似たようなデッキだった。だが、彼女の勝利パターンを知っているレンは、彼女の切札、《ドルバロム》では自分を倒せないということを理解している。

「僕のターン、《復讐のバイス・カイザーZ》を召喚、ターンを終了する」

 同時におろおろとバトルゾーンを走り回っていた《コッコ・ドッコ》の布の身体が膨れ上がって、破裂した。
 ---------彼女のデッキは、デーモン・コマンド。ならば、出される前に決めるのみだ。

「私のターン。《邪眼銃士ダーク・ルシファー》召喚です」
「む? 《ダーク・ルシファー》? 《ブラック・ルシファー》じゃないのか」

邪眼銃士ダーク・ルシファー P 闇文明 (6)
クリーチャー:ダークロード/ナイト 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札の上から3枚を墓地に置く。
W・ブレイカー
このクリーチャーが破壊された時、好きな数の進化ダークロードを自分の墓地から手札に戻してもよい。

 レンが知っている彼女ならば、デーモン・コマンドである《暗黒導師ブラック・ルシファー》を召喚してきたはずだ。だが、違う。ダークロードをサポートする《ダーク・ルシファー》を出してきたということは----------

「デッキの構成を変えているな」

 彼女は自分の知っているシオとは違う。未来の姿なのだ。

「ならば、面白いではないか! 知っているデッキばかりでは面白くなどないからな。行くぞ、僕のターン。《絶望の悪魔龍 フューチャレス》召喚!」

絶望の悪魔龍 フューチャレス P 闇文明 (6)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 6000+
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の闇のカードを好きな数、捨ててもよい。こうして捨てたカード1枚につき、相手の手札を1枚見ないで選び、捨てさせる。
W・ブレイカー
自分の手札が1枚もなければ、このクリーチャーのパワーは+6000され、「T・ブレイカー」を得る。


 効果によって、レンは全てのカードを捨てた。だが、レンのデッキは闇単。捨てられたカード4枚から、手が伸びてシオ-------否、汐の手札を4枚、つまり全部を墓地へ叩き落とす。
 さらに、捨てられた中には《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》に《グールジェネレイド》。完全に準備を完成させた。


「バイスでW・ブレイクだ!」
「S・トリガー、《プライマル・スクリーム》。効果で《貴星虫ヤタイズナ》を回収。私のターン、《貴星虫ヤタイズナ》召喚、ターンエンドです」

貴星虫ヤタイズナ UC 闇文明 (6)
クリーチャー:パラサイトワーム/ダークロード/オリジン 5000
自分のターンのはじめに、進化クリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。

 ターンの始めに進化クリーチャーを墓地から出す《ヤタイズナ》。
 見れば、汐の墓地には《黒蟲奉行》が。墓地進化クリーチャーのため、簡単に場数を増やせるのだろう。

「ほーう、魂胆は分かっているぞ。だが、そんなクリーチャー、見逃すとでも思っていたのか! 僕のターン、《フューチャレス》を進化、《悪魔龍王デストロンリー》に!」

 刹那、全てのクリーチャーが吹っ飛ばされた。さらに、悪魔龍王はめきめきと力が沸いてくるようだった。

悪魔龍王 デストロンリー P 闇文明 (8)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 9000+
進化ー自分の闇のコマンド1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、他のクリーチャーをすべて破壊する。
W・ブレイカー
バトルゾーンに自分の他のクリーチャーが1体もない場合、このクリーチャーのパワーは+5000され、「T・ブレイカー」を得る。 

「……《ダーク・ルシファー》の効果で----------を回収」

 だが、完全に自分のプレイングに酔ってしまっているレンは、完全に汐の効果の説明を聞いていない。

「そう。《リュウセイ》を回収。そして《グール》を復活! 《デストロンリー》は誰もクリーチャーがいない場合、T・ブレイカーとなる。さらに、パワーも14000と巨大化する! 行け、T・ブレイク!」

 止めとまではいけなくとも、このターンでシールドを削りきることはできた。しかし、レンは失念していた。シールドを削ることに意識を回しすぎてトリガーの可能性に失念していたのだった。
 そしてもう1つ。
 それは思い込みだった。
 《デストロンリー》が割ったシールドは2枚。たったの2枚だ。見れば、場に《グール》を出していたことに気付く。アホだアホ。
 最後に、彼女の墓地の確認、だった。大量のカードが落ちているのが分かる。

「S・トリガー、発動です。《インフェルノ・サイン》で《暗黒皇女アン・ドゥ・トロワ》を復活。効果で《怨念怪人ギャスカ》、《一撃奪取 ブラッドレイン》、《マクスヴァル》を復活。《ギャスカ》の効果で全ての手札を墓地へ------といっても、今更捨てる手札など無いですが。さらに《デス・ゲート》で《グール》を破壊し、《ファンク》をリアニメイト」
「え?」
「私のターン。《マクスヴァル》、《ファンク》、《アン・ドゥ・トロワ》を進化元に-----------」

 揃う。全ては限りなく闇に近い新月と限りなく闇とは程遠い満月、2つの月の元に。そして、2つの月が重なる。

「蘇りし月影の力、禁断の魔術と共に闇夜の空を射抜け。神々よ、調和せよ。進化MV——《月影神話 ミッドナイト・アルテミス》」

 現れたのは、『神話カード』としての《アルテミス》だった。

月影神話 ミッドナイト・アルテミス 闇文明 (6)
進化クリーチャー:メソロギィ/ダークロード/ドラゴン・ゾンビ 15000
進化MV—自分のダークロード一体と闇のクリーチャー二体を重ねた上に置く。
コンセンテス・ディー(このクリーチャーの下にある、このクリーチャーと同じ文明のすべてのクリーチャーのコストの合計を数える。その後、その数字以下の次のCD能力を得る)
CD6:自分のターンの初めに、山札をシャッフルしてもよい。その後、山札の上から三枚を持ち主の墓地に置く。
CD9:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、闇の呪文を一枚、自分の手札からコストを支払わずに唱えてもよい。
CD12:このクリーチャーが攻撃する時、自分の墓地にある呪文を、コストの合計が12以下になるように好きな枚数選び、コストを支払わずに唱えてもよい。その後、選んだ呪文を好きな順序で山札の一番下に置く。
T・ブレイカー

 現れたのは、流麗で穢れのない、真っ白な長い髪を持つ女性型のクリーチャー。民族的な一枚布の衣服を身に纏い、その布は裾へと向かうにつれ、グラデーションの如く黒く染まっている。
 武器は片手に携えた弓。あらゆる光を打ち抜く、闇を表すかのような弓矢。ボウガンやアーチェーリーのようなものではなく、原始人が狩猟にでも使っていそうな、和弓に近い形をしている。

「う、美しい……何て美しいんだ……じゃなくて、これは少々まずい気がするのだが」
「手札はないので仕方ないですが、《アルテミス》で攻撃。進化元のコストは14のため、《アルテミス》の効果発動。CD12でコスト12以下になるように墓地の呪文を唱えるですよ。《インフェルノ・サイン》に《デーモン・ハンド》を唱えて、《ヤタイズナ》を復活させるです。そして《デストロンリー》を破壊。」
「ぐっ!」
「T・ブレイクです」

 容赦の無い連射が、レンのシールドを打ち抜いていく。

「まだだ!! こっちもS・トリガー、《ヤミノサザン》召喚!」
「ターンエンドです」
「僕のターン、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》召喚! コイツの効果で、僕の闇のクリーチャーは全てスレイヤーに! 《ヤミノサザン》で特攻し、《アルテミス》を破壊!」

 しかし、もう他に成す術が無い。

「私のターンです。墓地進化、《黒蟲奉行》。W・ブレイクです」

 分かる。分かっていた。今の自分の実力では、彼女には遠く及ばないことなど。


「------------《怨念怪人ギャスカ》でダイレクトアタックです」