二次創作小説(紙ほか)

コラボ短編:last smile (12) ( No.335 )
日時: 2014/08/25 19:43
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)

 ***

 アポロンは腕組みしながら、尻ごむヒナタの前に立っていた。

「あー、ダメだダメだ! お前は確かに強い! だけど、俺を使うには、まだ弱すぎる!」
「おいおい、褒め殺しかよ」
「無法者の荒ぶる心に勝つには、それだけの精神力が必要だ!」
「まさか、もう一回」
「やるんだよ!!」

 アポロンは、再び幻像を創り出す。火山の真ん中で、再びデュエルが始まった。

「上等だ、何回でも勝てるまでやってやらぁ!!」
「ああ、だが今のお前では絶対にアイツには勝てない」
「ッ……」
「そこでだ」

 突然、スケッチブックをどこからか取り出すアポロン。

「修行1、溶岩滝打ちの業。修行2、情け無用クリーチャー組み手100連戦、修行3、溶岩スイム3キロ、さあどれがいい?」
「すみません、なるべく死なない奴でお願いします。つーか、1と3に至っては、もう人間じゃムリだろ」
「じゃあ、修行2から行くぞ」

 出てきたのは、《翔龍提督ザークピッチ》など、ファイアー・バードの軍団だった。

「あー、まあ良いや、デュエマなら勝てる自信がある!」
「いや、肉弾戦で」
「ムリだろ!!」


 ***

「うあー、強い……。まさか、胸でもデュエルでも負けるなんて」
「うーん、まだまだかな? じゃあさ、コトちーもう一回!」
「え? まさか、まだやるの? てか、コトちーって勝手に仇名つけてるし」
「うーん、でもちょっとそれじゃありきたりだから、この子達と戦って! しゅぎょーしゅぎょー!」

 突如、のどかな花畑の中から、奇妙な咆哮。次の瞬間、まさしくそれの主が大量に現れた。
 それは、蜘蛛のような姿をした古代龍だった。それも、何体も、だ。

「《節食類怪集目 アラクネザウラ》ちゃん♪ 大人しくて、良い子なんだよ? だよ?」
「こんな修行、絶対嫌ァァァァァァ!!」

 ***

 レンは、大の字に倒れ、天井を見つめていた。
 アルテミスが彼の顔を覗き込む。

「あーあ、情けない。この程度?」
「まだまだ……」
「ん?」
「まだまだだぁ!!」

 立ち上がり、キッとアルテミスに視線を向けるレン。

「そう? ならばやってみなさいよ」
「良いぞ……シオの仇を討つためだ、何度でもやってやる」
「そうね。それじゃ、まずは彼らと遊んでいたら?」
「む」

 直後。幾つかの影が全て実態と化す。悪魔だ。彼女の召喚したデーモン・コマンドが全て実像と化したのだ。
 元々、ダークロードはデーモン・コマンドを召喚する存在。故に彼女だからこそ出来るのだろう。

「彼らを倒してみなさい」
「やってやる」

 だが、既にレンの瞳には決意が篭っている。

 ***

 武闘ビルにて。既に、時計は朝の7時を回っていた。

「どんだけやってんだ、あいつら」
「ホントっちゃ!」
「遅いなぁ、コトハ」
「おめーらは、ずっとラブラブしてたろうが」

 フジは、何時まで経ってもカードの中から帰ってこないヒナタ達を待ちながら寝てしまった。そして、今に至る。ドラポンたちは、さも関係ないかのようだったが。
 ふと、電話が掛かってきた。

「ああ、もしもし武闘です」
『大変だ、フジ! 東京タワーの天辺にヨミが出てきやがった!!』

 声の主はテツヤだった。話によれば、朝の速報をテレビで見たらしかった。

「な、何!?」

 思わず、驚きの声を上げるフジ。このまま東京で無差別殺戮でもされたら手の打ち用が無い。
 ここから、港区までは数キロ離れている。すぐに駆けつけるのはムリだ。

『それだけじゃねえ、海戸へ高速接近してやがる!』
「分かった。暗殺はそっちに委託する。対せんせー用銃で撃ち落せ」
『ざっけんなぁ!! 暗殺教室じゃねえんだよ! お前やヒナタ達がやらずに誰がやる! つーか、別にマッハで飛んでるとは言ってない!』
「お前が殺れ」
『お前の友達やめて良い?』

 ドライな声が返ってきた。まあ、彼の性格を考えればそうだろう。

「まあ、良い。どうにかしろ、以上」
『雑だな! おい、待て、切るな』

 カチャ、ツーツーツー……。


「よし、おめーら。行くぞ」

 フジは立ち上がってドラポンとオーロラに言った。

「行くって」
「決まってんだろ、ヨミをぶっ飛ばしに行くんだよ」

 ***

「クハハ、まずは手始めにだ!! 現れよ、新たなる神! 《堕天左神カウントダウン》! 《羅刹右神オズフェスト》! 我が世の春が来たああああ!」

 シャンツァイのテンションは、最高にハイに達しているのか。完全に両手を広げ、高笑いしていた。

「ふぉふぉふぉ、シャンツァイ殿、油断は禁物ですぞ。何処に敵が居るのか分かりませぬ。ここはじぃがもう少し様子を見ますぞ」

 《信託の守護者 胡椒》がたしなめる様に言った。
 海戸町中央都市街にヨミは鎮座していた。通行人が逃げ出す中、ヨミは残虐な笑みを浮かべる。

「愚かな人間どもよ……貴様らに裁きを下す。貴様らに示されるは、絶望の道なり!! はあああああああ……!!」

 バチバチ、と強い音が鳴る。次の瞬間、眩い閃光と共にビルが砕け、ガラスが飛び散り、そして辺りは焦土と化した。

「ふはは、弱いな脆弱な人間共。さあ、アウトレイジを出せ。全て滅ぼし、無に帰してくれるがな!」
「お遊びはそこまでだ、ヨミ」

 ヨミはもたれていた頭を上げた。そして、標的を視覚でしっかりと捉える。
 フジだ。ようやく、ここまでやってきたのか肩で息をしていた。

「ほーう、人間と……アウトレイジと……裏切者か」
「ヨミ様! もう、こんなことはやめてください!!」

 オーロラの悲痛の叫びは、ヨミの冷め切った声に遮られた。

「今更何を言うか。死ねい」

 ビュン、とヨミの手から、眩い閃光が放たれたかと思えば、そこにはもうオーロラは立っていなかった。
 服の部分部分はこげており、ボロボロだ。そして、頭からは血を流していた。

「オーロラッ!」

 慌ててドラポンが駆け寄った。

「ごめん、ドラポン……もうあたし、戦えそうに無い」
「おお、そうかぁ? オーロラよ。大人しくヨミ様の言うことを聞いて置けばよかったのだ。ヨミ様に見初められたのにも拘らず、貴様はそれを蹴ったのだからな。ヨミ様はお怒りだ。愚か者め、はっはっは」
「くっ、外道が……!!」

 笑うシャンツァイ。昔の上司--------インガから見たイザナイ----------に向けた侮辱だった。
 フジは今の間に何も出来なかった自分を恨んだ。

「くっ、敵は3人……《シャンツァイ》に《胡椒》、そして《ヨミ》か……はっきり言って対処できるか分からんな」

 と、その時だった。引っさげてきた”神話無法”のカードが光りだす。
 直後、再び空間が開いてヒナタ、レン、コトハの姿が現れた。

「ひゅー、やっと終わったぜ……あれ? フジ先輩の部屋じゃなくね、ここ」
「ああ。街の中か? だが一体何が」
「ボロボロ……って、オーロラ!? 大丈夫!?」
「待ちわびたぞ……暁ヒナタ」

 ヨミの冷たくも良く響く声がして、3人は振り返った。

「さて、殺されに来たのか、暁ヒナタ」
「なーるほどな。これやったのは、おめーらってことか。覚悟は出来てんだろうな!」

 すると、シャンツァイが進み出る。

「黒鳥レンか。くく、貴様は月夜野シオの友人だったな。哀しいか? 友人が倒れて」
「許さんぞ、貴様。死ぬ覚悟はできたか」
「ふぉっふぉっふぉ、さて私は譲さんと戦うのですかな?」
「譲さん舐めてたら、痛い目に遭うわよ? それに、オーロラの仇も討たなきゃね」

 退治する3人と3体。今ここに、最後の戦いが幕を開ける。同時に、空間が開き、火蓋は切って降ろされた。