二次創作小説(紙ほか)
- エクストラターン24:最後の戦い ( No.336 )
- 日時: 2014/05/21 00:34
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
直後、《ジャッキー》と《ブルース》のカードが2枚とも、ヒナタの手に吸い込まれるかのように入っていった。
「よっしゃあああ!!」
思わず、ガッツポーズを決めた-------------空中で。
見れば、足がヘリの地面に着いていないのがしっかりと分かった。
つまり次に考えられる可能性としては唯一つ。
お、ち、る。
「ぎっ、ぎゃああああ!!」
『ヒナタアアア!?』
全員は、ふと見た。気付かないうちに、前へ前へと進んでいたのか、空間が閉じた瞬間、既に足は地面に着いていなかったのである。
先の見えない渦の中へ、ヒナタは落ちていくのだった。
「またこのパターンか、畜生めェェェ!!」
***
「……きろ」
「あ?」
声が聞こえる。これが天の声であるなら、祝! 番外編完結! なのだが、主人公として絶対に譲れないことが在る。
それは何か。
------------ほーお、それで次回からは誰がこの暁ヒナタの代わりをつとめるんだ? まさか、お前じゃあるまいな!!
目を瞑った状態からの不意打ち。
ガスッ、と、目の前の”誰か”に鉄拳を喰らわせた。入った。確かに顔面にクリーンヒットしたはずだ。
「ほーお、それでお前は俺の機嫌を損ねたらどうやってこっから帰るつもりだ? まさか、徒歩じゃあるめぇな!!」
「ガブフッ!!」
「大丈夫か? ヒナタ」
食らわされた。今度は自分がパンチを。ドラポンが覗き込んでくる。
「えーっと? ドラポンにシント先輩?」
「起きるのが遅いっちゃ!」
「ああ、そうだな。テメェ、つーかよくもやったな」
目の前には、ボロボロになった無頼シントの姿があった。服は所々破れており、顔はすすだらけだったが、元気に振舞っているかのように思えた。ただ、顔面にキスマークならぬパンチマークがしっかりと押されていたが。
背後には巨大な鎧龍が鎮座していた。NEXだ。
「シント先輩も来てたんすか!」
「ああ、そうだ。どうやら此処が黒幕のアジトらしいぜ。何せ、ここら一帯が全部決闘空間-----------いや、決闘空間そのものってことだな。この世界でクリーチャーとデュエマするときは、絶対皆此処に来るってことだ」
「じゃあ、俺は今までも此処にきたことがあるってことすか」
「ああ。だが、俺らはその一部に入り込んだことがあるに過ぎない。ったく、ここまでNEXに乗って来たのは良いが、途中で仇討ちに来たクリーチャーに撃ち落されてこのザマだ」
「大変でしたね」
「ん? その様子だとジャッキー&ブルースをセットで手に入れたみたいだな」
「はい」
「ならよ、こいつをお前に一応渡しておく!」
カードが放られたので、ヒナタはキャッチした。
「俺は此処に来たがいいが、この辺りのクリーチャーぶっ倒したが、NEXがもう戦えそうに無いんだ。俺も後で絶対に行く! だから、頼む。奴を止めてくれ!」
「アンタ……俺を誰だと思ってるんスか?」
ヒナタはシントに向かって笑いかける。そして、拳を突き出して言った。
「俺は学院最強、行く行くは世界一のデュエリストになる暁ヒナタですから!」
---------へっ、我ながら生意気な後輩を持っちまったな。
シントも負けない笑みで拳を優しく交わした。
じゃあ、行きます、と戦場へ掛けて行くヒナタ。そんな彼にシントは呼びかける。
「ヒナタ! デュエマにおいて、一番大事なことを教えておいてやる! 絶対、諦めるな! それだけだ!」
「シント先輩……」
「諦めなけりゃ、絶対誰かが助けてくれる! 諦めなけりゃ、勝利の女神様が絶対付いててくれる! デュエマは最後まで何があるか、分かんないもんだぜ!」
一番当たり前のことだが、それだけでも大事なことだった。
「分かりました!」
「行くっちゃ、ヒナタ!」
「おう!」
駆け出す2人の姿を見て、シントはため息をついた。
そして、周りを見渡す。
「おい、好い加減出てきても良いんじゃねえか?」
「ゲゲゲ……」
「キヒャハハハ、待ちわびたぞ人間」
クリーチャーだ。結界が割れて、次々にシントの方へ雪崩れて来る。
「NEXの結界も限界だ。良いぜ、まとめて相手してやるよ雑魚共。後輩の邪魔はさせねえぜ!!」
シールドが展開され、戦いが始まった----------------。
***
「あーら、お客さんね」
振り向きざまにベルフェモールは人間---------暁ヒナタ-----------を垣間見た。
人間ではない。人間らしいそれはしているが、気配で違うと分かる。
「オラクルっちゃ?」
ドラポンがしゃしゃり出てくる。
「そうよ。全知全能の最強種族、オラクル」
彼女は嘲笑うように言った。まるで、人間やアウトレイジとはベクトルが全く違うと暗に言っているかのようだった。
「その中でも頂点に立つのがあたし。《箱庭のイザナイ ベルフェモール》よ」
「へっ、抜かしやがれ! たかだかイザナイごときが、竜神王操って、俺達の仲間傷つけて--------------覚悟は出来てんだろうな!」
「悪人……とでもいいたいわけ?」
彼女の気配は今までのどのイザナイとも違う。よりおぞましく、底知れない。
彼女は大きく手を広げると誇らしく、少し哀しげに言った。だが、目には狂気が含まれている。
危うい感じの狂気だ。全てを飲み込んでしまいそうな。
「あははは!! べるが何をしたって言うの? べるはずっとヨミ様の隣に居た!! いつだって、あの方の傍に居た!! なのに、なのにっ!! 捨てられたのよ!! 『許せ』の一言で! べるの力が強すぎたから? ふざけないでよ!! べるが力を求めたのは、あの方のために死にたかったから!! なのに、あの方はべるを全否定した!」
ぐっ、と拳を握り締め、彼女は哀しい笑みを浮かべる。
「バラモンとデトロイトだってそう。一生身をささげると誓った主に裏切られる気持ちをあなたは理解できる? できないわよね!! 私達が闇の中で苦しんでいる中、あんたらが光の中でほくそ笑んでいるのを見て、決意したのよ!! 討つ。べる達はこの世界を! そして作り変える! 今度はべる達が頂点に立てる世界を!!」
彼女は憎んでいる。思い通りにならない全てを。
「知ったこっちゃねえよ、馬鹿野郎」
だからこそヒナタはそれを正面から斬り伏せた。
「お前は信じる奴を間違ったんだ。お前の信じていた奴は、所詮、その程度だったってだけだ!!」
「な、何を!?」
「そいつのために死ねるだぁ!? んじゃあ、ヨミはお前のために死ねたのか!! そいつのために死にたいなら、まずはそいつが自分のために死ねる奴か、見極めりゃ良かっただけの話だ!!」
そうだ。彼女の言い分は一方的な逆ギレにすぎない。見誤ったのだ。彼女は。
「俺は誰かのために敢えて死ぬつもりは無いし、これからも多分ねえと思う!! それが俺達の絆って信じてるから!! 俺が生きることが、仲間の一番の幸せだって、信じてるから!!」
「そうっちゃ! もし、誰かが転んだなら引っ張り上げられる!! おんしらはそうやって、何度も修羅場を乗り越えて来たんっちゃ!」
『何にも信じられない未来なんか、絶対に嫌なこった!!』
隣には相棒が居る。背中には仲間たちがいる。それで十分じゃないか。最後の戦いに相応しいではないか。
これ以上の問答は無用だ。互いにデッキを掲げた。
『シールド展開!!』