二次創作小説(紙ほか)

ターン18:逆転 ( No.60 )
日時: 2013/06/24 23:16
名前: タク ◆XaammrlXPk (ID: 39RfU1Y2)

 《ブリティッシュ》の効果で、手札に2枚の差を付けられるレン。しかし、対抗策がない訳ではなかった。

「僕のターン!!戦慄の宿命に従い、偽りの鎧に身を包め!!王龍よ、光臨せよ!!《宿命のディスティニー・リュウセイ》召喚!!」

宿命のディスティニー・リュウセイ 秘 無色 (7)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン/ハンター 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分の山札を見る。その中から無色のカードを1枚選び、相手に見せてから、自分の手札に加えてもよい。その後、山札をシャッフルする。
W・ブレイカー

「効果で、《真実の名 修羅丸》を手札に!!まだ、デュエマは終わっていない!!《スミス》でシールドブレイク!!ターンエンド!!」
「それはとんだ間違いですね。次ターンの私のコンボで終わりです。」

 シオはそう言った。きっぱりと。

「私のターン。呪文、《戦慄のプレリュード》を唱えます。効果で5マナになった、このクリーチャーを召喚です!!天頂の声を聴く。この世界を浄化し、無に帰し、そしてあなたを呼ぶ——冥臨です。《「謎」の頂 Z-ファイル 》」

「謎」の頂 Z(ゼータ)−ファイル SR 無色 (10)
クリーチャー:アンノウン/ゼニス 13000
このクリーチャーを召喚してバトルゾーンに出した時、自分の他のクリーチャーをすべて破壊してもよい。そうした場合、デーモン・コマンドをすべて、自分の墓地からバトルゾーンに出す。
T・ブレイカー
エターナル・Ω

「さらに効果で、私の全てのクリーチャーを破壊し、墓地からこのクリーチャーを召喚するです。《虚空の翼 ダークモルダー》召喚です。そして進化。地獄の声を聴く。命の根源を絶ち、生者を闇へ導き、そしてあなたを呼ぶ——君臨です《悪魔神ドルバロム》」

「--------------------!!」

 教室中が、その1体のクリーチャーに注目された。《ドルバロム》が現れた瞬間、レンのバトルゾーンとマナゾーンのカードが吹っ飛ぶ。
悪魔神ドルバロム SR 闇文明 (10)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド 13000
進化−自分のデーモン・コマンド1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、闇以外のクリーチャーをすべて破壊する。その後、各プレイヤーは闇以外のカードをすべて、自身のマナゾーンから持ち主の墓地に置く。
T・ブレイカー

「このクリーチャーの効果は、闇文明以外のクリーチャーとマナを全て破壊することです。」
「マナゾーンのカードも0・・・・・・!!」
「さらに、墓地から進化元を召喚しつつ、墓地からこれらに進化。魔界の声を聴く。世界を漆黒に染め、魂を滅し、そしてあなたを呼ぶ——降臨です《悪魔神バロム》さらに《無情プリンス デスシックス》を墓地から召喚し、《バロム・エンペラー》に進化です。」

 淡々と喋るシオ。しかし、これで悪魔神が3体とも揃ってしまったわけである。

悪魔神バロム SR 闇文明 (8)
進化クリーチャー:デーモン・コマンド 12000
進化−自分のデーモン・コマンド1体の上に置く。
W・ブレイカー
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、闇以外のクリーチャーをすべて破壊する。

「この光景は・・・・・・悪夢か!?いや、言うなれば覚めない悪夢・・・・・・!!」

 ヒナタが声を上げる。

「それでは、破壊の時間(カーニバル)と行くです。《ドルバロム》でシールドをT・ブレイクです!!」
「ッ!!」

 シールドが飛び散り、手札に。しかし、このデッキにS・トリガーなどほとんど投入されていない。

「偏った編成じゃあ、このデッキに勝つことは難しかったようですね。《バロム・エンペラー》でW・ブレイクです!!」
「まずい・・・・・・!!」

 皮肉なモンだな。ゼロ文明デッキだけに、最後はマナもバトルゾーンも0枚で終わりか-------------レンの脳裏に、そんな言葉が浮かぶ。しかし、同時に《ボルメテウス・ゼロ・ドラゴン》が倒されたときの場面も蘇ってきた。

「嫌だ・・・・・・!もう、負けたくない!!」
「叫いても無駄です!!《バロム》!!トドメを刺すです!!」
「S・トリガー発動!!奇跡は存在する!!束縛を奇跡の力で解放せよ!!《逆転王女プリン》召喚!!」

逆転王女プリンセスプリン UC 無色 (5)
クリーチャー:ハンター/エイリアン 2000
S・トリガー
ガチンコ・ジャッジでこのクリーチャーを見せた時、またはこのクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにあるクリーチャーを1体選び、タップまたはアンタップする。

 周りからは歓声が上がる。

「な、そんな!!」
「効果で、《バロム》をタップだ!!僕のターン!!これが美しき、美学の勝利!!《逆転王女プリン》でトドメだ!!」
「うぅ・・・・・・私の負けです・・・・・・。」
「奇跡とは存在する。時にデュエル・マスターズは、運任せのゲームと呼ばれる事もあるが、僕はそうとは思わない。何故なら、奇跡とは最後まで諦めなかった者にのみ、訪れるのではないだろうか。」

 レンはデッキを片付ける。

「僕もS・トリガーが来なければ負けていた。君の強さには驚かされるばかりだ。」
「レン先輩。次は絶対に私が勝つです。」
「望むところだ。」

 そう言って、2人とも笑みをこぼした。



 放課後、帰りながら2人は談笑していた。

「しっかしよぉ、あそこでホントに大逆転しちまうんだからさ。」
「仕方があるまい。僕だって、意図的にS・トリガーを出せる訳じゃあない。」
「もしかして、イカサマしてS・トリガーを仕込ん」
「だ訳ないだろう!!」

 レンの鉄拳が、ヒナタの顎に炸裂した。

「いたっ!!お前、ホントに昨日まで入院していた体か!!」
「僕の名誉を守るためなら、この体、惜しくなど無い!」
「お前、自分の名誉と体、どっちが大切なんだ!!」
「名誉と美学に決まっているだろう!!」
「決まってねーよ!!そもそもてめーの美学って何だ!!」
「美学は美学だ!!」
「お前、意味分かって使っているのか!!」

 ヒナタとレンが、取っ組み合いになりそうになった途端だった。

「あのー・・・・・・先輩方・・・・・・。」
「「うおぉい!!ビックリしたぁ!!」」

 急に後ろから話しかけられ、驚いて声がハモるヒナタとレン。

「何だ、シオか。何のようだ?」
「いや、喧嘩してるから、とりあえず止めに入ろうかな・・・・・・て。」
「いや、すまない。全てこのバカが悪い。」
「いや、全てこの潔癖が悪い。」

 ヒナタとレンの眉間から、火花が散る。が、切り替えたようにヒナタがシオに話しかける。

「ところでさ、シオって何でわざわざ引っ越してまでここに?」
「ああ、それですか・・・・・・実は私、一人暮らしなんです。」
「えぇ!?どういう事だよ!!親が居ないとか?」

 ヒナタが素っ頓狂な声を上げる。

「いえ、親は居ます。ただ、今は離れて暮らしてるだけなんです。」
「あ、あーそーなんだ・・・・・・って何で!?あ、いや別に答えを無理強いしてる訳じゃないんだぜ。」
「ああそうだ。こんな野蛮人の質問になど、答えたら美学が分からないヤツ病に感染するぞ。」
「ああ?!どーゆー意味だコラ。」
「そのままの意味だ。」

 とりあえず、喧嘩のシーンは割愛する。

「しっかしよォ、また何でそんなことに?」
「昔は色々あったのですよ。ただ、地元にいるのが居心地悪くって・・・・・・。」



 シオは地元で、トップクラスの実力を誇るデュエリストだった。悪魔神の大量展開コンボは、連ドラならぬ連デモと呼ばれるタイプで、特に《ドルバロム》などの進化が決まったときは、反則級とも言えるコンボを生み出した。
 が、強すぎたのである。強すぎる故、だんだん誰からも相手されなくなり、孤立してしまった。そして、居心地の悪くなった彼女は、その天才的かつ理知的なデュエルセンスを生かし、デュエリスト養成学校である、鎧龍決闘学院に入学することにした。
 が、両親はそれを許すはずがなかった。やはり、デュエマを今も競技ではなく、遊びとしか見ていない人はいる。結果、家出同然状態で無理矢理入学し、今に至る。



「そっか、大変だったな。」
「でも、大丈夫です。私は、この道で生きていくって決めましたから。絶対に挫けません!」
「がんばれよ、シオ。」

 ヒナタが、シオの肩に手を置く。

「はいッ!!」

 無表情だが、感情は豊かな方なのだろう。彼女は、最後にヒナタと連に挨拶をして、帰って行った。

「んじゃ、オレらも行くか!帰りに病院によって行こうぜ。」
「ああ、リョウとコトハも明後日くらいには、退院するらしいからな。」

 互いに、ニッと笑い合う。夕焼けが美しい日だった。