二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.1 )
- 日時: 2013/06/30 15:32
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
- プロフ: http://dm.takaratomy.co.jp/card/search/
デュエル・マスターズ。
それは、この世界で最も栄えているトレーディング・カードゲームだ。
四十枚のカードで構成されたデッキを持ち寄り、二人で戦う。相手を攻撃するための味方、クリーチャー。相手の行動を妨害したり自分の行動をサポートする、呪文。クリーチャーに装備することで強化する、クロスギア。要塞として場にとどまることでフィールドに影響を及ぼす、城。これらのカードを駆使し、先に相手の五枚のシールドを破壊してダイレクトアタックを決めたプレイヤーが勝利する。
それが、デュエル・マスターズ、略してデュエマ。
世界的にかなり浸透しているデュエマ。そしてここにも、クリーチャーを召喚し、戦う少年少女の姿があった——
「あたしのターン! 3マナで《青銅の鎧》を召喚! 効果でデッキの一番上から一枚目をマナゾーンに置いて、さらに2マナ! 《無頼勇騎タイガ》!」
小柄な体躯に幼い顔立ち、明るい髪を低い位置で二つに括っている少女は、続け様に手札からクリーチャーを召喚していく。
場に出ている《無頼勇騎ゴンタ》にもう一体の《青銅の鎧》と合わせ、これで少女のクリーチャーは四体となった。
「相変わらず速いな……」
次々と召喚されるクリーチャーに、少女の向かいにいる少年は苦笑いを浮かべる。こちらの場は、シールドが一枚減っており、ドラゴンのコストを下げる《コッコ・ギルピア》《コッコ・ルピア》《ルピア・ラピア》と、ファイアー・バードが目白押しだ。
「さーて、一気に攻めるよー! まずは《ゴンタ》でシールドをブレイク!」
少女は《無頼勇騎ゴンタ》のカードを指で押さえ、横向きにしてタップする。それを見た少年もは、シールドゾーンにあるカードを一枚、自分にだけ見えるようにめくる。
そして、微笑んだ。
「来た来た、いいところに来た。最初に《ゴンタ》で殴ったのは失敗だったな。火文明のデッキに、このカードが入ってることを忘れたか?」
と言って、少年は今しがためくったカードを表にした。呪文のカードだ。
「S・トリガー! 《スーパー炎獄スクラッパー》!」
S・トリガーとは、デュエマの面白さの理由の一つでもある、逆転要素だ。
シールドを五枚割られ、ダイレクトアタックを決められたら勝利するデュエマ。そのシールドは、破壊されたらプレイヤーの手札に行くのだが、その時そのカードがS・トリガーつきのカードだったなら、マナコストを支払わずにプレイできるのだ。
そして少年が発動したS・トリガー呪文《スーパー炎獄スクラッパー》の効果は、相手のクリーチャーのパワー合計が5000以下になるように選び、破壊する。つまり、
「うぁ、《青銅の鎧》と《タイガ》が……」
《青銅の鎧》のパワーは1000、《無頼勇騎タイガ》のパワーは2000、《青銅の鎧》が二体いたとしても、合計パワーは4000なので、まとめて《スーパー炎獄スクラッパー》で除去される。
「ちぇ、しょうがないや。ターンエンド」
「よし、なんとか凌げた……僕のターン」
唇を尖らせて不満そうに溜息を吐く少女と、被害がシールド一枚で済み安堵する少年。今度は少年のターンだ。
少年はデッキからカードを一枚引き、思案する。
(とりあえず軽量獣は一掃できたけど、《ゴンタ》が厄介だな……)
特殊な能力こそないが、《無頼勇騎ゴンタ》のパワーは4000。サポートに回ることの多いファイアー・バードで、とても太刀打ちできない。
しかし、
「ここでこいつを引けたのはラッキーだったな。召喚、《フレイムバーン・ドラゴン》!」
フレイムバーン・ドラゴン 火文明 (6)
クリーチャー:アーマード・ドラゴン 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のパワー4000以下のクリーチャーを1体、破壊してもよい。
「うそっ?」
少女の顔が少しだけ引きつる。
《フレイムバーン・ドラゴン》は、召喚と同時に相手のパワー4000以下のクリーチャーを破壊する。そして《無頼勇騎ゴンタ》のパワーはちょうど4000。《フレイムバーン・ドラゴン》の射程範囲内だ。
少女はがっかりしたように《無頼勇騎ゴンタ》を墓地に置く。だが、まだ少年のターンは終わっていない。
「マナも余ってるし、ついでに《スピア・ルピア》を召喚。どうせ殴り返せるようなクリーチャーもいないし、ここは総攻撃しとくか。《コッコ・ギルピア》《コッコ・ルピア》《ルピア・ラピア》の三体でシールドをブレイク!」
少年は名前を呼んだクリーチャーを一体ずつタップし、少女もそのたびにシールドをめくり、手札に加えていく。S・トリガーない……が、
「S・バック発動! 手札から《無頼勇騎ゴンタ》を捨てて……《天真妖精オチャッピィ》召喚!」
天真妖精オチャッピィ 自然文明 (3)
クリーチャー:スノーフェアリー 1000
S・バック—自然(自然のカードを自分のシールドゾーンから手札に加える時、そのカードを捨ててもよい。そうした場合、コストを支払わずにこのクリーチャーを召喚する)
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、カードを1枚、自分の墓地からマナゾーンに置いてもよい。
「ここでS・バックかよ……」
少年が呻く。
S・バックもまた、S・トリガーほどではないがデュエマで重要な逆転要素の一つだ。
「《オチャッピィ》の効果で墓地の《タイガ》をマナに置くよ。さ、どーする?」
「……ターン終了」
ターンが交代し、また少女の顔に明るい笑みが戻ってくる。同じように少年にも、意気消沈したような表情が帰ってきた。
とはいえ、この状況は少年が優勢だ。確かにマナの数を比べれば、《青銅の鎧》や《天真妖精オチャッピィ》でブーストした少女の方が圧倒的に多いが、場のクリーチャーは少年が五体に対し、少女はゼロ。シールドもたったの二枚だ。次に総攻撃を喰らえば、まず間違いなく敗北する。
が、しかし、
「さーて、ここであたしの切り札登場! 《天真妖精オチャッピィ》進化! 《機神勇者スーパー・ダッシュ・バスター》!」
機神勇者スーパー・ダッシュ・バスター 火/自然文明 (6)
進化クリーチャー:ヒューマノイド/ビーストフォーク/ハンター 8000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
進化—自分の火または自然のクリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手の、コスト5以下のクリーチャーを2体選び、持ち主のマナゾーンに置く。
W・ブレイカー
声高らかに叫び、少女は《天真妖精オチャッピィ》の上に《機神勇者スーパー・ダッシュ・バスター》を重ねる。
指定されたカードの上に、さらにカードを重ねて行う進化。このようにして進化したカードは、通常のカードよりも強力な効力を発揮する。
「《スーパー・ダッシュ・バスター》の効果で《スピア・ルピア》と《ルピア・ラピア》をマナゾーンに! さらに残ったマナで《無頼勇騎タイガ》を召喚! 《スーパー・ダッシュ・バスター》で《コッコ・ルピア》を、《タイガ》で《コッコ・ギルピア》を攻撃!」
「うっ!」
一気にクリーチャーを展開され、少年のクリーチャーが殲滅される。残ったのは《フレイムバーン・ドラゴン》のみ。
「ターンエンドだよ」
少女のターンが終了し、少年のターンに回る。
(やばいぞ、このターンでなんとかしないと……)
幸い、少年のマナは《スーパー・ダッシュ・バスター》の効果で無駄に蓄えられた。ここでキーカードを引ければ、逆転に繋がるかもしれない。
(僕の手札にはもう一枚《スピア・ルピア》がいる。ここであれを引ければ……)
願うように、祈るように、少年はデッキの一番上にあるカードを指先で掴み、持ち上げる。目を瞑ってそのカードを顔の前まで持っていき、開眼した。
「来た! 《スピア・ルピア》を召喚!」
少年は元々あった手札から、勢いよく《スピア・ルピア》を召喚する。だが、これだけでは少女に対抗することなどできない。
だからもう一枚、先ほど引いて来たカードを使う。
「《スピア・ルピア》進化! 《火之鳥ガルダン》!」
火之鳥ガルダン 火文明 (4)
進化クリーチャー:ファイアー・バード 4000+
進化—自分のファイアー・バード1体の上に置く。
パワーアタッカー+4000
W・ブレイカー
「《ガルダン》……てことは」
少女は少年の思惑を察したようだ。
繰り返すが、デュエル・マスターズの基本的な勝利条件は、相手のシールドを全て割り、プレイヤーに直接攻撃すること。つまり相手にどんな大型クリーチャーが存在していようと、直接攻撃されてしまえば終わりなのだ。
少女のシールドは二枚。対して少年の場には、クリーチャーが二体。一見すればあと一歩で届かないように見えるが、《火之鳥ガルダン》はW・ブレイカーを持つ。
つまり、一度に相手のシールドを二枚、ブレイクすることできるのだ。
「《ガルダン》でシールドをW・ブレイク!」
《火之鳥ガルダン》はタップされ、少女の残る二枚のシールドを全て破壊した。後は《フレイムバーン・ドラゴン》でダイレクトアタックを決めれば、少年の勝ちだ——が、
「S・トリガー発動、《ナチュラル・トラップ》!」
ブレイクされた少女の最後のシールドが、場に公開された。一度は少年のピンチを救った者と同じ、S・トリガーだ。
しかし、効果はまるで違う。
「《フレイムバーン・ドラゴン》をマナゾーンへ!」
《ナチュラル・トラップ》は自然文明を代表する除去系S・トリガー呪文。効果は、相手のクリーチャーを一体、問答無用でマナゾーンへ送ること。
つまりその一枚で、少女にとどめを刺すはずだった《フレイムバーン・ドラゴン》はマナへ行き、少年はこれ以上の攻撃ができなくなってしまった。
「さ、あたしのターンだよ」
少女は嬉々としてデッキからカードを引き、マナをチャージし、そのマナをタップする。
「3マナ《誕生の祈》。そんで6マナ、《誕生の祈》進化!」
少女は場に出た《誕生の祈》の上に、さらなるカードを重ねる。
「《大勇者「ふたつ牙」》!」
大勇者「ふたつ牙」 自然文明 (6)
進化クリーチャー:ビーストフォーク 8000
進化—自分のビーストフォーク1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、 自分の山札の上から2枚を、自分のマナゾーンに置く。
W・ブレイカー
「おいおい、嘘だろ……!」
冷や汗をかく少年。これで少女の場にはクリーチャーが三体、しかもうち二体がW・ブレイカーという状態に。
「さっきと同じ失敗をしちゃいけないし、まずは《タイガ》でブレイク!」
《無頼勇騎タイガ》が少年のシールドを割る。
「続けて《大勇者「ふたつ牙」》でW・ブレイク!」
さらに《大勇者「ふたつ牙」》がシールドを二枚破壊する。S・トリガーはあったが、さっきと同じ《スーパー炎獄スクラッパー》だ。これでは《スーパー・ダッシュ・バスター》を倒せない。
最後の攻撃を防ぐ術が、ない。それは、つまり——少年の敗北を意味していた。
少女は明るい笑顔で、手元のカードをタップする。
「《機神勇者スーパー・ダッシュ・バスター》で、とどめだぁー!」