二次創作小説(紙ほか)

Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.101 )
日時: 2013/08/10 03:04
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)

 デュエルを終えたこのみはデッキケースを仕舞うと、はらりと舞い落ちて来るものに気付く。
「あれ? これって……」
 それは《妖精のイザナイ オーロラ》のカード。さっきまで実体化していたクリーチャーが、カードの姿に戻ったのだろう。
「あ、このクリーチャーって、コスト6以下ならどんなスノーフェアリーでも出せるんだ。あたしのデッキに合うかなぁ……貰っちゃえ」
 などと言いながら《オーロラ》を懐に収め、ふと視線を動かす。その先には、このみと同じようにデッキを仕舞う零佑の姿があった。
「ふぅ、流石に危なかったぜ。《マクスウェルZ》が来れば逆転できると思ってはいたが、まさかシールドに埋まってたとは……お? そっちも終わったのか」
「あ、はい! ばっちりだよ!」
 二本指を突き立ててVサインを送るこのみ。零佑も親指を突き上げ、サインで返した。
 と、その時!
「このみ!」
 教室の扉が凄まじい勢いで開け放たれ、三人の人間が雪崩れ込むように入ってくる。
「ゆーくん? どしたの、一緒に補習を受けてくれる気になったの……って、クロさんと、先生も? あ、あれ? なんでっ?」
 夕陽と共に入ってきたクロや黒村の存在に目をぱちくりさせながら、疑問符を多数浮かべているこのみ。それをよそに、黒村は零佑に負けて倒れているミウへと近付く。
「やはり、筆頭は『白虹転変シーレーン』か……意識はない、ダイレクトアタックの衝撃で意識が飛んだか。以前に負けた経験があるから、対策して挑んだのだと思っていたが、襲撃され逆に撃退するとは、こちらの手間が省けた」
「あ、あれ? 黒村先生がキョドってない? なんかすっげーイケメンボイスだよっ?」
「事情は後でゆっくり説明する。って言っても、お前の頭じゃ大して理解できないだろうけど。それと、こっちも無関係な人が巻き込まれたか……」
「? なんだ?」
「いえ……」
 なんにせよ、今日だけで二人も一般生徒が“ゲーム”に巻き込まれることとなってしまった。それ自体は良いことではない。“ゲーム”そのものは非常に危険だ、下手をすれば私生活にまで支障をきたす。最悪、命の危険にさらされることもあるらしい。ゆえに、出来る限り一般人は巻き込んではならないのだ。
 だがしかし、同時に少しだけ、心強くも思ってしまった。
 クロは夕陽の反対を押し切って戦ったし、零佑も自ら進んで【神聖帝国師団】の刺客を打破した。それを戦力としてみれば、非常に強力だ。
(本当は、こんなこと考えるのはダメなんだろうけど……)
 また新しく、仲間が増えたような感覚。無関係な人を巻き込んだと同時に沸き上がるその感情に、夕陽は戸惑ってしまった。



「で、つまりシーレーンはやられちゃったってこと?」
「そういうことになるな。ま、正直な話そこまで期待してたわけでもない。【ミス・ラボラトリ】の研究員だか観察者だかに捕縛されても、大した痛手じゃねぇ」
「そーなの?」
「そうだな。第六小隊つったらここ最近、ミスばっかだしな。隊長の方は俺的にわりと好みだが——」
「あー! そーいうのはだめなんだよっ! うーわーきーもーのー!」
「そう言うな、当然お前が一番だ。それに、いくら好みでも失敗した奴には罰を与えなきゃならん。今んとこはギリギリ大丈夫な感じだが、もうあと一回でもミスったら……」
「しょけい?」
「場合によってはそういうこともあるかもな。ま、しばらくあいつらについては置いておくとして、問題は《アポロン》だ」
「しょゆーしゃが、かわったんだっけ? だれだっけ?」
「『昇天太陽サンセット』っつー名で知られてるガキだ」
「つよいの?」
「それなりに腕は立つ。偶然とはいえあの『炎上孤軍アーミーズ』を退け『崇拝教団レリジン』の率いるカルトの解体にも一役買っているらしい。まあだが、まだ俺たちの足元にも及ばんだろ」
「ふーん。だったらそんなやつ、ほっとけばいーんじゃない?」
「そういうわけにもいかねーのさ。所有者が変わったつっても、本当にその権利が委譲されているのか、俺としては疑問なんだ。だから今回『白虹転変シーレーン』をけしかけた。名目上は《プロセルピナ》の奪還で、実際に取り戻してほしかったんだが、真の目的はその後。今の《プロセルピナ》の所有者を倒した後に『昇天太陽サンセット』のところに向かわせ、《アポロン》の真実を探るつもりだったが、まー失敗したな」
「だめじゃん」
「だから言ったろ、そんなに期待してなかったって。奴は《プロセルピナ》を奪い返すために、前回負けた経験を生かして対策したって言ってたが、どうせ他の連中が割り込んで対策が裏目に出たんだろ。だから次からは、もっとゆっくりやる」
「ゆっくり? どーいうこと?」
「そのまんまの意味だ。じっくり時間をかけて、『昇天太陽サンセット』を解剖してやる。そのために今、俺達は“こうしてるんだろ”?」
「あー、うん。そうだったね。そーいうことだったんだね」
「そうだ。地上の生物が、生命を芽吹かせるものが二体揃った時、新たな命が生まれる。動物なら雄と雌、人間なら男と女、そして、こいつらなら」
「かみと、めがみ」
「ああ。さて、そろそろ誕生だ。新たな命を創り出せ、神話の神々。神と神、二体を重ねて神々、命の種を植え、発芽させるのは、俺達の神話だ——」