二次創作小説(紙ほか)
- Re: デュエル・マスターズ Mythology ( No.110 )
- 日時: 2013/09/15 13:17
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: PNtUB9fS)
『炎上孤軍』こと火野亜美対『深謀探偵』こと和登栗須のデュエル。
シールドの枚数では亜実が四枚、栗須が二枚と、亜実が優勢だ。だが栗須の場には《エメラル》と、《偽りの羅刹 ミスディレクション》がいる。亜実も《アクア・スーパーエメラル》と《腐敗電脳ディス・メルニア》で牽制しているが、それもいつまで持つか分からない。
そして、栗須のターン。
「《シンカイドーベル》召喚。これで僕の召喚するコマンドのコストは1軽減される。さらに《ライフプラン・チャージャー》を発動」
山札の上から五枚を確認し、うち一枚をつかみ取る栗須。その表情は少しだけ緩んでいた。
「これだ。《偽りの羅刹 アガサ・エルキュール》を手札に加え、ターンエンド」
「ちっ。こっちがクリーチャーを出すか呪文を唱えるかすると、シールドから光のデーモン・コマンドを出すか呪文を唱えられるあいつか。出されると面倒だな」
栗須のマナはそれなりに溜まっており、《シンカイドーベル》もいる。次のターンには普通に召喚することも可能だろう。もし出されれば、相手のシールドが残り二枚とはいえ召喚や呪文の詠唱を躊躇ってしまう。
「なら、出される前に叩き落とす! 呪文《ゴースト・タッチ》! お前の手札を一枚墓地へ!」
どこからともなく現れた亡霊が栗須の手札のうち一枚に触れる。するとそのカード——《アガサ・エルキュール》は、はらりと墓地に落ちていった。
「さらに《インフェルノ・サイン》も発動! 墓地から《爆裂マーズ・ギル・ヒドラ》を復活させる!」
爆裂マーズ・ギル・ヒドラ 火文明 (6)
クリーチャー:フレイム・コマンド/エイリアン 6000
スペース・チャージ:闇
SC—クリーチャーを1体、自分の墓地から手札に戻す。
W・ブレイカー
「これで闇のカードをマナチャージするたび、墓地からクリーチャーを回収できる。《ディス・メルニア》でシールドブレイク!」
ブロックされない《ディス・メルニア》は、《シンカイドーベル》をすり抜けて栗須のシールドを粉砕する。これで残り一枚だ。
「ふん、単調な動きだな。僕のターン《アクア・スーパーエメラル》を召喚。シールドと手札を入れ替え《シンカイドーベル》も召喚だ。《エメラル》で《ディス・メルニア》を攻撃!」
ここで栗須は、《エメラル》に攻撃を指示する。亜実の場にも《アクア・スーパーエメラル》がいるので、ブロックされて破壊されるのが関の山だが、
(《ミスディレクション》による攻撃を確実に通すためか? シールを増やされるのも厄介だ、《ディス・メルニア》を犠牲にすれば、《スーパーエメラル》で《ミスディレクション》の攻撃を防げる。それにこっちの場には《マーズ・ギル・ヒドラ》がいるから、クリーチャーの回収は容易。ブロックしないでおくか)
結局、亜実は《エメラル》の攻撃を通し、《ディス・メルニア》と相打ちさせた。
「なら、《ミスディレクション》でシールドブレイクだ!」
「《スーパーエメラル》でブロック!」
栗須のシールドは残り一枚、一気に押し切りたい亜実からすればシールドを回復されなくない。
「あたしのターン。まずは手札の《地獄門デス・ゲート》をマナに置き、スペース・チャージ発動。《ディス・メルニア》を回収」
《マーズ・ギル・ヒドラ》のスペース・チャージで、闇のカードをマナに置けば墓地のクリーチャーを手札に加えられる。これで序盤に相手を道連れにしたスレイヤーを回収するのが目的だ。
「さらに呪文《リバース・チャージャー》を発動。二体目の《ディス・メルニア》を手札に加え、チャージャー効果で発動後このカードをマナへ。さらにスペース・チャージが発動し《ディス・ドライブ》を回収だ」
さらに、
「《ボーン・おどりチャージャー》で山札の上から二枚を墓地に送り、チャージャー効果でスペース・チャージを発動。二体目の《ディス・ドライブ》を回収し、《ディス・メルニア》を召喚!」
一気に手札を増やし、攻めの姿勢を顕著に表す亜実。
「《マーズ・ギル・ヒドラ》で最後のシールドをブレイクだ!」
「《アクア・スーパーエメラル》でブロック!」
栗須の場にはまだ《シンカイドーベル》が二体おり、守りは固い。しかしスレイヤーを多用する亜実が相手では、時間の問題だろう。
栗須のターンがやって来る。この時は防戦一方となっている栗須だが、彼はどこか不敵な笑みを浮かべ、焦りを見せない。
「数多くのスレイヤー、チャージャー呪文、そして《マーズ・ギル・ヒドラ》」
唐突に、栗須は今までの亜実のカードを並べ立てる。
「他にも細々とした要素はあるが、大まかにはこの三つ。この三種のカード、特に《マーズ・ギル・ヒドラ》が、貴様のデッキの中核と推理しよう」
「ふん、またお得意の推理か……だったらなんだ」
「《マーズ・ギル・ヒドラ》は確かに強力なクリーチャーだ。マナチャージだけで墓地のクリーチャーを回収でき、チャージャー呪文と組み合わせればその効力は跳ね上がる」
事実、亜実は《リバース・チャージャー》で二体ものクリーチャーを回収し、《ボーン・おどりチャージャー》で擬似的な山札からのサーチを行っていた。
「だがそれらの大元となっているのは墓地だ。墓地にカードがなければ、大して怖くもない」
「いつまでも御託を並べるな。なにが言いたい?」
痺れを切らしたように亜実が言うが、それに対し栗須は肩を竦める。
「やれやれ、少しは推理したらどうだ。とはいえ答え合わせに時間をかけるのも億劫だ、実際に見た方が早いだろう」
と言って、栗須は手札から一枚のカードを抜き取った。
「出でよ《サイバー・N・ワールド》!」
サイバー・N・ワールド 水文明 (6)
クリーチャー:サイバー・コマンド 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、各プレイヤーは自身の手札と墓地のカードをすべて山札に加えてシャッフルする。その後、それぞれ、5枚カードを引く。
W・ブレイカー
「なっ……!?」
手札と墓地をリセットする、《サイバー・N・ワールド》。単純な手札補充をするにしても、相手も手札が五枚になるため、ハンドアドバンテージを広げることはできない。しかし亜実のように墓地を利用する相手にならば、その能力は実際以上の効力を発揮する。
「効果で互いに墓地と手札をすべてデッキに加えシャッフル、五枚ドロー……そして、《魂と記憶の盾》を発動、《ディス・メルニア》をシールドへ!」
魂と記憶の盾(エターナル・ガード) 光/水文明 (3)
呪文
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
バトルゾーンにある、進化ではないクリーチャーを1体選び、裏向きにして、新しいシールドとして持ち主のシールドゾーンに加える。
「くっ……!」
「まだだ、《ミスディレクション》で《マーズ・ギル・ヒドラ》を攻撃!」
次々と消されていく亜実のクリーチャー。墓地も手札もリセットされ、形勢が逆転してしまう。
「まずい、とにかく《ミスディレクション》をなんとかしなければ……あたしのターン、《電磁翔天ピピッピ》と二体の《襲撃者ディス・ドライブ》を召喚! 《ディス・ドライブ》で《ミスディレクション》を攻撃!」
二体の《ディス・ドライブ》が《ミスディレクション》に特攻をかける。しかし、その攻撃は通らない。
「《シンカイドーベル》でブロックだ!」
二体の《ディス・ドライブ》の攻撃は、二体の《シンカイドーベル》が防ぐ。互いに同名クリーチャー二体が墓地へと落ちる。
「……それで終わりか?」
《ディス・ドライブ》の特攻も通じず、亜実のクリーチャーは《ピピッピ》のみ。シールドの枚数で言えば亜実が五枚、栗須が一枚と、亜実が勝っているのだが、もうペースは完全に栗須のものになってしまっている。
しかもこの時、栗須は亜実を絶望に叩き落とすことのできる切り札を引き当てた。
「……! ここで来たか」
手札を確認したのち、マナに視線を落とす栗須。《腐敗無頼トリプルマウス》や《ライフプラン・チャージャー》を使用していた栗須のマナは、このターンで10マナになる。
「確か《アクア・スーパーエメラル》でシールドを入れ替えていたからな、S・トリガーを仕込んだ可能性もある。ここは出し惜しまずに行くべきか」
ぶつぶつと呟く栗須。傍からはただ熟考しているようにしか見えないが、亜実は彼が今正に出さんとするカードに対し、大方見当がついていた。
(まずい、ここで“あいつ”を出されると——)
しかし相手は、亜実の事情を考慮してはくれない。栗須はもちうるマナをすべて使い切り、今しがた引いたカードを手にする。
刹那、怪しげな霧が立ち込めた。白い靄のような霧と、黒い煙のような霧。
「光臨せよ! 未知なる侵攻者よ! 我が命に従い、偽りの力を持って、真実を導きださん!」
霧は少しずつ収縮し、一つの形を形成する。しかしその形は、どこか不安定なまま。
不可解で不明瞭、未知なる存在が今、ここに現れる。
「召喚——《偽りの名 シャーロック》!」